2011年10月11日火曜日

The Bandana Splits covers Benji Hughes


最近めっきりリアル店舗では洋楽CDを買わなくなってきている。
昨今の円高により、洋楽CDは海外のサイトや
日本のamazonなどで買う方が安くつくことがまずいちばん。

モノによってはタワーレコードが圧倒的に早く入荷することが
あったり、日本盤が本国盤より先行することもあるので、
そういうときは逡巡したりもするけど。

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僕は音楽パッケージを買うとき、なるべくそのアーティストが
活動をする国でプレスされたものを買うようにしている。
なぜかというと、普通テスト・プレスのチェックやジャケットの色校などは
本国のものでしかチェックしないから。

マスタリング以降の工程(プレス、ジャケット印刷)は、
本国でのチェックを済ませたらあとはリリースするそれぞれの
国の裁量にまかせる、ということがほとんどなのです。
(アーティストやマネージメントによっては、各国盤をチェック
する場合もあります)

アナログ盤の時代ほどではないにせよ、プレスするマシンに
よって音は当然変わるし、ジャケットの色味なども結構違う。

だから、なるべくそのアーティストが本来意図したものを、
と考えると、そのアーティストが活動する国の盤を買うのが
正解なんじゃないか、と。

これはまあ、はなはだ一方的で自己満足な考え方なので、
他人にそれを強要するつもりはさらさらありません。

洋楽の日本盤の丁寧な仕事ぶりや、ライナーノーツの重要さなどを
否定するつもりも全くありませんし、僕自身もこれまで日本盤解説には
非常にお世話になってきています。
そして、考えに考えて日本盤を選択することもあります。

それもこれも、音楽がファイルとして管理されていくと
全く別の話になっていくんでしょうけどね。
そこまで行くと別の次元なんで、またの機会にです。

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閑話休題。

お店で洋楽CDをあまり買わなくなっていますが、お店が
プッシュしていなければチェック出来ないものもたくさんあります。

先月タワーレコード新宿店で購入した、The Bandana Splits
アルバムがまさにそう。

ジャケットからして、The PipettesとかThe Schoolみたいな
オールディーズ風味のポップスをやっているのかな?と
期待して購入したのだが、ちょっと違った。

彼女たちがお手本にしているのは、いわゆる "オールディーズ" の
時代より前のジャズ・コーラス、The Andrews Sistersとか
The Chordettesあたり。

っていうことは、昨年みんなの心を奪ったThe Living Sisters
あたりも当然意識してるんでしょうね。それと、Verveから
数年前にデビューしたThe Puppini Sistersとか。

でも、そこはブルックリンのグループだけあって、そこまで
本格的に当時の感じを再現しているわけではない。
プロデュースはApollo SunshineのSam Cohen。
レーベルはDawn Landesで知られる(?)Boy Scout Recordings
このあたりの外枠から見ても、非常に現代的でRAWな作りなのだ。
ノスタルジックというよりは、素朴。

大半の曲が彼女たちのオリジナルで占められているのだが、
カヴァーが2曲収録されている。
1曲は1963年のヒット曲、The Caravelles
「You Don't Have To Be A Baby To Cry」のほぼストレートなカヴァー。

で、もう1曲。
僕をびっくりさせたのは、
Benji Hughesの「All You Gotta Do Is Fall In Love」のカヴァー!

なに一人で盛り上がってんの?、
と疑問符が浮かんでいることでしょう。
全然有名な曲じゃないです(多分)。Benjiさん自身も知る人ぞ知る
アメリカのシンガー・ソングライターです(おそらく)。
ただ、このBenjiさんのオリジナル(このアルバムに収録)は、
"2008年竹内の心のヒット・チャートベスト10" に入るくらいに
大好きな曲でして、いやほんと心底びっくりしたんですよ。

ジャズ・コーラスともオールディーズとも無縁なこの曲を、
なぜ彼女たちはカヴァーしたのでしょう?
特に大きなヒットを示したわけでもないこの曲を。
メンバーやプロデューサーがこの曲大好きだったとか、
そんな理由なのか? いや、それが何よりなんですけどね。

そして彼女たちのこのカヴァーの出来が、
しみじみととってもいいんですよう!

男のしわがれた声で女の子に語りかけるオリジナルはもちろん
最高なんだけど、スウィートな女声3パートで囁きかけられるとまた・・・。
ぶっきらぼうに聴こえた歌詞が、こうも甘く響くとはねー。

この曲をカヴァーした、という事実だけで、僕は彼女たちのことを
多分ずっと忘れないし、それだけの理由で何回も聴きこんだりする。

重要なんですよ、カヴァーって。

っていう話はまたいずれ。

それにしても、レコード屋のバイヤーのプッシュで、
予備知識なくでも買ってしまう、という行動が減ってきたのは、
確実にHMV渋谷店の閉店が理由の筆頭に挙げられる。
あそこと新宿SOUTH店では結構買わされたもんなー。
残念だなー。






2011年9月6日火曜日

Backache, Music, Novel and Movie


腰痛と音楽、文学、映画についてのお話。

昨日、四番のリリース・パーティで下北沢440に行ったら、
井乃頭蓄音団のヴォーカル、松尾よういちろう氏がいて、
僕に近づいてひと言、「腰、やっちゃいました」。

僕自身、高校時代からの腰痛持ちで、基本的に
重いものは持たない、くしゃみするときには何かにつかまる、
など腰に負担をかけないように毎日を生きているのだが、
ぎっくり腰含め、腰痛はホントにつらい。

で、昨日の松尾くんも相当痛そうにしていたのだが、
それでも終演後一生懸命お客さんにチラシを配る姿に、
自分の音楽を一人でも多くの人に知ってもらいたい、
というミュージシャンとして当たり前の真摯な思いを
見るわけです。

ところで、井乃頭蓄音団というか松尾くんのレパートリーに、
「腰痛」という曲がある。

あるとき、松尾くんに向かって「あの曲は世界に通用するね」
と云ったことがあるくらいグローバライズされた曲なんだが、
彼らの全国流通アルバム『素直な自分』には収録されておらず、
ソロ・ライヴで時々披露されるくらいなので、あまり知られて
いないかもしれない。
収録されているのだが、今でも売っているのだろうか?

えーと、その曲「腰痛」は、人間いかに腰痛になると言葉が出ない
くらいに痛いか、ということを簡略な歌詞で表現した名曲です。

そして腰痛と云えば、西村賢太『苦役列車』に収録された
「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」だ。これも腰痛がいかにつらいか
をつぶさに描写した素晴らしくダメダメな短編。
この本、一回読んで松尾くんに貸した後、ジョニーさんに貸したまま
なので詳細覚えていないけど。

そんでもって昨日、平野勝之監督の映画『監督失格』を観ていたら、
ここでも腰痛が重要な小道具?として出てきた。
そのシーンを挿入する「必要」があった。そして腰痛は「必然」。

ふむ。

音楽、小説、映画と表現は違えど、そこには何か共通したもの、
意味があるような気がして。

それは、腰痛を患ったことのある人にはよーくわかると思うけど、
"どうにもならない情けなさ" だと思う。
体の中心である腰が痛いと、笑っちゃうくらい何にも
出来なくなってしまうのだ。

痛い、動けない、無理に動くと非常に滑稽な姿になる。

普段、五体満足で何不自由なく生活をしている者ほど、
腰痛になったときにそのギャップが大きくのしかかる。

深刻な腰痛をお持ちの方には失礼な表現かもしれないが、
腰痛にはどこかファニーな香りがある。
見た目間抜けだから。
「大丈夫ですか?」って手を貸す人もなんか笑みを含んでいたりする。
たとえば、歯痛のシリアスさに比べてみるとよくわかる(のか?)。

そして、腰痛を押してでも何かしなければいけないときの、
滑稽を通り越した涙交じりの切実さ、とか。

あともう少し考察すると、腰を患うことによる、性的劣等感という
か無力感、なんてところにも到達するんだが、
そんな面白いテーマ、これ以上深くは触れません(笑)。

西村賢太の小説は「現代の私小説」と称されることが多いが、
私小説といえば病気と貧乏が2大テーマじゃないか?

井乃頭蓄音団の音楽、平野勝之の映画、西村賢太の小説、
これらは私小説的手法を利用したエンタテインメント、という
意味で共通項あるのかもしれん。

そこに横たわる「腰痛」。

いろいろ考えてみたけど、やっぱ腰痛以外の病気や
症状では、ちょっとニュアンスが違ってしまうのだな。
腰痛じゃなきゃいけない。

そういえば世界に目を向けると、最近DVD化された
映画『ソウルキッチン』も腰痛が重要な要素として扱われている。
すごく面白い映画だけど、こちらには私小説的な匂いはない。

というかその私小説的な匂いって、日本独自というか、
もしかしたらイメージとしての「昭和」的なるもののこと
指すのかもしれない。

そうそう、井乃頭蓄音団には「昭和」という曲もあって(以下、
長くなるのでここで強制終了)。



それにしても、今まで書いたことのないタイプのブログだな。
これはこれであり、なんだろうか・・・?

次はいつか、同じく持病の痛風について書きたいと思います(うそです)。











2011年9月5日月曜日

wilsonic works 13 & 14


もう9月。

今週水曜日、9月7日はHOW MERRY MARRY(以下HMM)の
初のシングル「僕にできること」の発売日です。
前作に続き、竹内が共同プロデュース&ディレクションしています。
(前作のミニアルバム『バイ マイ タウン』に関するブログはこちら

表題曲「僕にできること」は、テレビ東京系で放映中の
人気アニメ『夏目友人帳 参』のオープニング・テーマとして
7月からOAされていますが、おかげさまで既に結構な
ご好評をいただいているようで、ありがたい限り。

今回のシングルは新曲3曲+表題曲のインストの計4トラック収録。
表題曲のプロデュースは「バイ マイ タウン」に引き続き松岡モトキ
2 & 3曲目のプロデュースは、前回のミニアルバム
では「ノーザンライツ」でお世話になり、最近はBuono!の
「夏ダカラ!」のアレンジで話題騒然のw、石崎光

もうね、表題曲だカップリングだと区別してません。
メンバーもスタッフも全曲全力で制作に当たっているので、
その濃度たるやすごいことになっております!

その濃度をちゃんと商品として成り立たせるべく(笑)、
今回も素晴らしいマスタリングを施していただいたのは、
ソニーの阿部充泰さん。
いつもありがとうございます。

そしてですね、竹内的に今回のトピックというかなんというか、
表題曲の「僕にできること」の作詞を、HMMのヴォーカル、
工藤圭一と共同で行っている点です。

これまでもメーカー・ディレクター時代を含め、
作詞のアドヴァイザリーとか添削とかは行ってきましたが、
共同で作詞、というのは今回が初めてになります。
本当の意味でいろいろと勉強させていただきました。

音楽プロデュース、曲順考案者、ライナー執筆
などに加えて、作詞も今後竹内の守備範囲にしたいと思います
ので、関係各位の皆様、認識の程よろしくお願いします(笑)。

ということで、4人組バンドHOW MERRY MARRYの1stシングル、
「僕にできること」、今週9月7日発売です。
明日(日付変わって今日だ)6日が店頭入荷日。
よろしくお願いします。


p.s.

今回のエントリ、タイトルにworksの13 & 14とありますが、
上記「僕にできること」が14になります。

13は、3月に地震があって発売日が移動したりで紹介
しそびれていたスピッツのミュージック・ヴィデオ集、

ただ単にこれまでの作品をコンパイルしただけじゃない、
新作2曲も含めて映像、音まわりもできる限りのことを試みた
2011年仕様となっています。

スピッツの映像集であり、日本の素晴らしい映像クリエイター
の作品集としても楽しめます。
音楽ヴィデオに興味のある方はぜひともご覧ください。


2011年7月31日日曜日

Richard Hawley!


Richard Hawleyのとある曲にすっかりヤラレている、というお話。

きっかけは映画『Exit Throuth The Gift Shop』という映画の予告編。
流れていた音楽がやけに気になった。

なのでその映画を先週観に行った。
映画自体も相当面白かったんだけど、オープニングとエンディング
に使われているキラキラした音楽にすっかりヤラレてしまったのだった。

それが、Richard Hawleyの「Tonight The Streets Are Ours」。

この曲は新曲ではない。
2007年の8月にシングルとしてリリースされ、当時全英チャート40位。
その後5枚目のアルバム『Lady's Bridge』にも収録された。
ちなみにこのアルバムは、現在までの彼のソロ・キャリアの中で最高の、
UKチャート6位を記録している。

「彼のソロ・キャリア」と書いたけど、リチャード・ホウリー(日本では
彼の名前は "リチャード・ハーリー" と書かれている場合が多いけど、
綴りからしたら "ホウリー" なんじゃないかなー、と確信も無く)は、
ソロとして活動する前に、ギタリストとしてLongpigsというバンドで
2枚のアルバムをリリースしており、バンド解散後、Jarvis Cocker
率いるPulpに参加している。
21世紀に入ってからソロとしての活動を始め、これまでに
6枚のソロ・アルバムをリリースしてきた。

ざっくりと彼の略歴を書いてきたけど、僕自身はこれまで
彼のことをあまり詳しく知らなかった。
Longpigsは1stアルバムを持っていたけど、
彼がそのメンバーだったことを認識していなかったし、
ソロ・アルバムは2009年の『Truelove's Gutter』
持っているだけだった。

というような体たらくだったので、慌てて件のアルバム
『Lady's Bridge』をポチって、届いたのが先週末。
それ以来、一日最低5回は聴いているのです、
「Tonight The Streets Are Ours」だけを。

なんかもう、イントロが始まった途端に身体が
トロケてしまうような感覚。
やったことないけど、多分ドラッグによる多幸感って、
こんな感じなんじゃないか、とすら思えるくらい、
この曲に酔っている。

まず。
明らかにこの曲はPhil Spectorを意識している。
煌びやかなストリングス、女声によるバッキング・ヴォーカル。
ブックレットにある楽器クレジットを見ると、
エレクトリック&アコースティックの12弦ギター、
6弦、バリトン・ギター、タンバリンにカスタネット(!)。
いやーもう、僕の大好物なサウンドです。
メロディも、あざと過ぎずに切なくて最高!
歌はお世辞にも美声とは言い難いんだけど、
そこにまたリアリティがある。
彼の英国での人気が今までイマイチ理解できなかったんだけど、
少しわかったような気がした(いや気のせいだと思うよ)。


そして歌詞。
映画『Exit Through The Gift Shop』の監督でもある
ストリート・アーティスト、Banksyがこの曲をテーマ・ソングに
ピックアップしたのは、その歌詞によるのだろう。
タイトルの直訳→「今夜、ストリートは俺たちのものさ」。

僕にはこれが「今夜君は僕のもの」という、大滝詠一「幸せな結末」
歌詞と一直線につながってしまった。
甚だ恣意的な連関ですみません。
そしてそれがBarbara Lewisの「Baby I'm Yours」(Van McCoy作曲)
に直結して、アトランティックのR&Bとスペクターと大滝さんとリチャードが、
ないまぜになって僕の中で暴れ回っている、という構図なんですよ。

乱暴だけど自分の中でそういう流れが出来てしまったんだからしょうがない。
そして僕の中でそんなことを思わせてくれる楽しい音楽は、昨今UKからしか
生まれていないことにも気付いたりするんだな、これが。

前にTwitterでもつぶやいたCodein Velvet ClubのHollywoodとか、
一連のMIKAの作品群とか、80年代からずっとすごいIan Broudieとか。
で、20年くらい前にIan BroudieがプロデュースしたThe Icicle Works
の「Traveling Chest」っていう曲がもう、一気に繋がっちゃうの。
アイシクル・ワークス、最近リマスター盤が出ていてちょっとやっぱ
買っちゃうよねー、とか。

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約2ヶ月ぶりにブログを書いているため、全くリズムがつかめていない上に、
書きたいことが絞り切れていないのが見え見えのこのグダグダっぷり。
ホントすみません。
後半の口述筆記的な展開は僕自身の思考回路をリアルタイムで
書き起こしているようでちょっと面白いかも(わたしだけ?)
でも、映画『Exit Throuth The Gift Shop』が公開されている間に
このネタをアップしなきゃなー、という勝手な義務感から
なんとか形にしてみました。

いろんなハイパーリンク埋め込んでおきながら、
肝心のリチャード・ホウリーの当該曲への直接のリンクは張っていません。
そしてそのこと自体が僕からのメッセージです。

2011年の今、それがメッセージとして伝わるか、
甚だ心もとないんですけどね。












2011年6月6日月曜日

A book which I was Impressed by deeply


10年以上前に出版された本なんだけど、
最近その存在を知り、読んでみたら
めちゃくちゃ目から鱗落ちまくったんで紹介します。


昨年他界した作家、劇作家の井上ひさしが、
1996年に岩手県一関で開催した「作文教室」
のドキュメンタリー。

これ、全ての「表現」に携わる人は絶対に読んで損はない!

もうね、考えてみれば当たり前のことを、
改めて平易な言葉で噛み砕いて説明してくれているだけ、
といえばその通りなんだけど、以下、アトランダムに
見出しをいくつかピックアップするので、
ちょっと読んでみてほしい。

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いちばん大事なことは、自分にしか書けないことを、
誰にでもわかる文章で書くということ。

題名をつけるということで三分の一以上は書いた、
ということになります。

書いたから終わったわけではない。読み手の胸に
届いたときに、自分の書いた文章は目的を達成し、
そこで文章は終わるわけです。

日本語の音素の特徴は、数が少ないだけでなく、
唇を使うものが非常に少ないんです。

観察する。要約する。報告する。そういう文章を
うんと書かせる。わたしたちもそういう教育受けて
いたら・・・。

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どうですか? 相当気になるでしょう?
この本は「作文」ということにフォーカスしてはいるけど、
「表現」に向かうときの心構え、
「言葉」を扱うときの基本的考え方、
などが懇切丁寧に説明されているので、
読みようによってはいろんな分野の創作活動に
敷衍できるようになっている。

井上ひさしという知の巨人にして日本語遣いの名手が、
その経験と学習で得た知識&ノウハウを、惜しみなく
伝達しているんだから面白くないはずがない!

僕は14歳くらいからの約5年間、井上ひさしの小説、
戯曲、エッセイなど、当時手に入る文章全てを読んだ。
そして、彼の作品から日本語の奥深さ、音韻の楽しさ難しさ
などを、特に「勉強している」つもりもなく、自然に
自分の中に取り込んできたようだ。

音楽に関わるようになり、ディレクターやらプロデューサー
と呼ばれるような仕事をするようになって、
自分の「井上ひさし体験」が実はとても役立っていることに
あるとき気づいた。

小説やエッセイを書いているだけの、
いわゆる「名文家」はいっぱいいるが、
井上ひさしは戯曲、つまり舞台における「セリフ」
としての日本語も追求した。
そこが今の僕の仕事に役立っている点、なのだ。

つまり、口語としての日本語。
口から発せられた瞬間にすぐに意味を捕まえてもらえなきゃ、
芝居は成り立たない。

歌詞カードに首っ引きじゃなきゃわからない音楽ではなく、
街中で流れてきてちょっと耳を傾けたらグイグイ入ってくるコトバ。

実はこのようなことを、昨年井上氏の訃報に接したときに
ツイッターでもちらっとつぶやいたりしたんだけど、
今年に入ってこの本に出会ってさらに確信したのでした。
すごいや、井上ひさし。

読み逃していた彼の本、ちゃんと読もうっと。
そして、時間があるときに昔むさぼり読んだ本を、
今の視点で再読してみよう。


では最後にこの本の中にあるネタでお別れです。

「黒い目のきれいな女の子」

なんの変哲もないフツーの文章ですが、
これで約18通りの違う意味の解釈が出来るそうです。
わかります?
日本語って面白いなー。





2011年6月5日日曜日

I Was Born To ...


最近聴いて気に入った曲のタイトルに共通した表現があったので、
それについて少し。

そしてもう1曲は、The Elected「Born To Love You」。

両方とも僕が愛してやまない激甘なメロディが炸裂する
ドリーミー・ポップなわけですが、激甘なのも理解できる
このタイトル。

彼女を愛するために僕は生まれてきたんだ。
君を愛するためにこの世に生を受けたんだよ。

うひゃー(赤面)。

このタイプのタイトルで日本で最も有名なのは、
これまで複数のCMに起用されている、
Freddie Mercuryの「I Was Born To Love You」だろう。
フレディのあの圧倒的な声で歌われる、
「あんたを愛するために生まれてきたのよ!」は、性差を
超越した響きがあるわけです今となっては。

あと、こういう恋愛シチュエイションだけじゃなくて、
欧米のヒット曲には「○○するために生まれてきた」
というタイトルが非常に多い。

超有名曲でいえば、
Born To Run / Bruce Springsteen
Born To Be Wild / Steppenwolf
Born To Boogie / T. Rex
あたり。

その他、Johnny Cashの曲で、The Everly Brothersもカヴァーしてる
「Born To Lose」、The Byrdsの「Born To Rock And Roll」とか、
The Ronettesの「Born To Be Together」、Dave Edmundsや
DionがカヴァーしたThe Chordettesの「Born To Be With You」とか、
ホントにきりがない。

こういう言い回しの背景には、宗教的な側面もあるのだろう。
人は、ある使命を持って生まれてくるのだ、という概念。
あまり宗教に明るくないのでこれ以上書きませんが、
そういう運命論的な考え方の相違なのか、このような
表現は日本の曲のタイトルではなかなか見当たらない。
僕の知っている中で最もこれらに近い日本語の曲は、
カーネーションの「恋するためにぼくは生まれてきたんだ」
かな。
そして、このタイトルに目的語がないことが、非常に
日本的なのではないか、なんてことを思ったり。

あと、単純に英語で「Born To ○○」って云うのと、
日本語で「○○をするために僕は生まれてきた」
では、文字数が圧倒的に多くなっちゃって、
タイトルとしてキャッチーじゃないんだよなきっと。

「ワイルドで行こう」って、素晴らしい邦題だな。
「明日なき暴走」もね。

えーっと、あまりにブログを放置しすぎて文章の書き方を
忘れていますが、少なくとも僕はBorn To Writeという
タイプの人間ではないのだな、ということがわかりました。

ところで、冒頭に紹介したIvan & Alyoshaと、
The Electedに関してなんの詳しい紹介もしておりませんが、
共に本当に素晴らしい音楽なので、このエントリの頭にある
ハイパーリンクからチェックしてみてください。

Ivan & Alyoshaは、ロシア人みたいな名前ですが、アメリカ
はシアトルのバンド。現在は4人で活動しているようです。
Fleet Foxes(新作良かったなー)なんかにも通じるフォーキー
なハーモニー・ポップを聴かせる人たちです。

The Electedは、現在活動休止中であるRilo Kiley
Blake Sennettによる別ユニット。
ちょっとトロピカルな匂いのする、ユルくて甘いドリーミーな
フォークロックを奏でています。
大傑作である前作以来5年ぶり待望の2nd『Bury Me In My Rings』
リリースしたばかり。

というわけで、今日からは少し心を入れ替えて、もう少しマメに
ブログを更新しようと思います。
書きとめておきたいたいことはいっぱいあるんですけどねー。





2011年3月2日水曜日

wilsonic works 12: Vinyl


アナログ盤について少し。

僕はアナログ・レコードのコレクターではない。
ちゃんと数えたことはないけど、おそらく7インチで1,500枚程度、
12インチも1,000枚程度あるかないか、じゃないかな?

働いてお金が少し自由に遣えるようになってから少ししたら
世の中はCDの時代になっていた。
それ以降は基本的にCDで買えるものはCDを選んでいた。
ちなみに今、CDはなんだかんだで20,000枚くらいあると思う。

コレクターではないから、オリジナルにこだわりもしない。
オーディオ・マニアでもないんで、状態も気にしないし
「やっぱアナログに勝るものはないねー」とも思わない。
そんな人間ですが、愛着はそれなりにあって。

個人的には7インチ(17cm)盤が好きで、未だに
UKインディとかの7インチは新譜として購入したりする。
存在自体も可愛いんだけど、シングルのA面の、
「この1曲にヒットを賭ける」という心意気が大好き。

お金のない80年代前半は中古レコード屋で
50円とか100円くらいの7インチ盤を漁っていた。
安いこともあって、当時の僕は日本の男性アイドルの
シングル盤をいっぱい買った。
女性アイドルは安くても300円くらいしたから。
同じ金額で男性アイドルは3倍以上買えた。
それらの作品で作詞作曲家やアレンジャー、レコード会社の傾向
なんかをいろいろインプットしていたんだな。

僕がレコード会社にもぐり込んだ1989年、もはやロック、ポップス系の
音楽はほぼCDに移行しており、アナログのプレスを止めていた。
前述のように僕も滅多にアナログ盤を買わなくなっていた。
アシスタントとしてついていたパール兄弟の『TOYVOX』が、
多分パール兄弟にとって最後のアナログになるだろう、
とのことでカッティングに同行させてもらったのは懐かしい思い出。

その翌年、僕はプロモーション・オンリーの
7インチを作(らせてもら)った。
モノは、遠藤賢司「エンケンのミッチー音頭」。

これ、市販されたのはCDシングル(短冊仕様)だけだったんだけど、
勝手に盛り上がってプロモ・オンリーのアナログを作ってしまった。
ジャケットもオリジナル・アートワークだし、カップリングには
オリジナル・シンガー、青山ミチのヴァージョンを収録するという
スペシャルなブツ。
こんなこと、新米ディレクターにほぼ勝手にやらせてくれていた、
そんな自由な時代のお話(遠い目)。

でまあ、隙あらばアナログを出したいなー、なんてことを
常に思って虎視眈眈と機を窺っていたところに、
スピッツのヒットが訪れるわけです。
スピッツも当然世代としてアナログ育ち、スタッフも
同年代かそれ以上、ということでスピッツ作品を
アナログでリリースする機運が盛り上がった。

まず手始めに7インチで"SPITZ GOLDEN HIT SERIES”
と銘打って、「ロビンソン c/w 涙がキラリ☆」を1995年に
リリース。往年の「コンパクト盤」みたいな雰囲気を
出したかったんですが、伝わったかどうか・・・。

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ちなみに、いろいろ混同が多いので改めて説明して
おきますね、アナログ盤の呼び方について。

まず、「LP」というのは「Long Play」の略で「アルバム」とほぼ同義。
なので「LP」自体はアナログを指す用語ではない。
CDのアルバムだって、LP。
「LPを、CDとVinylとMP3で販売する」という云い方が成り立つわけです。

また、「EP」というのはExtended Playの略。何に対して
エクステンドしているかというと、「シングル盤」に対して。
よく、シングル盤とEPを同じものとしている記述がありますが、
それは本来間違いです。

アナログ時代の定義は、以下の通り。

シングル盤→片面1曲入り
EP→片面複数曲入り

17cmか30cmかはこの言葉だけでは区別はないけど、
60年代のUKではEPは45回転片面2曲入り系4曲、
というのが結構あった。

これに対して「コンパクト盤」というのが60~70年代の日本に
ありまして、これはヒット曲4曲を片面2曲ずつ収めた
17cm33回転のディスク。

ま、CD時代となってシングルもEPも実質上同じになって
しまったんで今となっては関係ないことですが。

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閑話休題。

前述のスピッツGOLDEN HIT SERIESは、
95年から3年連続で計3枚リリース。

その3年目の97年には遂にオリジナル・アルバムの
アナログ化をスタートさせる。

1997年1月1日から7ヶ月連続でゾロ目の日に発売。
最新アルバム『インディゴ地平線』から遡ってのリリース。
各アルバムのイメージに合うカラー・ヴァイナル仕様、
毎回書き下ろしの漫画 or イラスト封入。CDとは違う曲順。
全7枚購入するとミニ・アルバム『オーロラになれなかった人のために』
の10インチ盤(非売品)がもらえる、というもの。

なんか、当時結構忙しかったのに俺、頑張ってんなー(笑)。

当時、カラー・レコードだっていうことでカッティング・エンジニア
世界の小鐡さんは残念がっていた。
そう、黒盤に比べて、カラーやピクチャー・レコードは音が悪い。
また、ほとんどのアルバムが片面20分以上の収録になっていた
ので、内周の曲が損をしていたのも今思うと残念。

その後もオリジナル・アルバムを出す毎にいろいろ改善しつつ
ここまで進めてきたんですが、この3月にようやくリリースとなる
13thアルバム『とげまる』のヴァイナルは、決定版かもしれない。

実は、これまでのスピッツのアナログ盤は、いろんな事情も
あってCDマスターと同じ音源を使用してきた。
つまり、Stephen Marcussenがマスタリングした音を、
小鐡さんがカッティングという手法。
それを今回、Stephenの音ではなく、高山徹さんがTDした
マスターから直で小鐡さんがカッティングする、という
工程にしてみた。

96kHz 24bitのデータからのカッティング、しかも
JVCマスタリングセンターが小安から中央林間に移転し、
遂に小鐡ルームにマスタリング・システムと
カッティング・マシンが同居、という素晴らしい環境!
加えて2枚組16曲、1面4曲で平均16分という、
カッティング的には理想的なサイズ!!

まだテスト・プレスは上がってきていないけど、
正直今回の音は今までより相当良いと思います。
乞うご期待。

また、アートワークはCDとは別テイクの写真を使用したり、
いつも通りCENTRAL67は遊び心加えてくれています。

恒例の封入マンガは、僕も大好きな大橋裕之さん。
音楽と漫画が好きなら、彼の『音楽と漫画』はぜひ一度
体験して損は無いと思われます。

といったわけで、以下、
スピッツ、13thアルバム『とげまる』の2枚組アナログ盤の
入手方法等のお知らせです。

昨日から予約受付始まっています。
このUNIVERSAL MUSIC STORE及び、
3月27日からスタートする
SPITZ JAMBOREE TOUR "とげまる2011"、
SPITZ JAMBOREE TOUR 2011"とげまリーナ"の
会場でしか入手することができません。
一般店頭での発売はいたしません。

ユニバーサルのサイトでの発売(発送開始)は3月30日ですが、
基本アナログは限定プレスで、よほどのことがない限り再プレスは
しませんので、確実に入手したい方は早めのご予約をお勧めします。

p.s.
最近、アナログのプレイヤーが壊れたので、新しいのを
購入したんだけど、ちょっと便利かなと思って、
直でUSBメモリに録音できる機種にしたんですよ。
でも、なんか結構煩雑だし、データへの変換方法は
デフォルトの1種類しかないし、かなりがっかりしています。
近々、フツーのプレイヤーを購入するような予感・・・。