2014年12月2日火曜日

wilsonic works 44


好きだ好きだと云い続けていると、何かが起きたりするものだなあ、と、
感慨も一入な今日この頃。
なんと、明日12月3日に発売されるビーチ・ボーイズの紙ジャケ復刻
6作品の中の2作品の、ライナーノーツを書かせてもらった。

僕の人生の目標のひとつに、

“ビーチ・ボーイズの作品のどこかに、自分の名前がクレジットされる”

というものがあったのだけど、遂に達成してしまった。

リリース全体の内容はこちらを参照ください。
ビーチ・ボーイズの名盤6タイトルが、紙ジャケットでプラチナSHM、
SHM−CD、SACDという3フォーマットでリリースされる。
つまり、全部で18種類のディスクが出る、というわけです。
僕はこの中の『オール・サマー・ロング』『スマイリー・スマイル』
の解説を担当した。

これまで、邦楽作品のライナーを手がけたことはいくつかあるが、洋楽は初めて。
しかも相手は世界でいちばん好きなアーティスト。
まさかこんな機会に恵まれるとは思ってもいなかった。
オファーがあったときは天にも昇る思いだったが、引き受けた
直後から地獄の日々が始まった。

考えれば考えるほど、文章が書けなくなっていくのだ。
そして、ビーチ・ボーイズのことを好きだ好きだと云いながら、
俺は全然ビーチ・ボーイズのことを知らなかったのだ、
ということに気づかされ、唖然とした。
これまで僕は浴びるようにビーチ・ボーイズの音楽に触れてきたが、
ホントにただボケーっ浴びているだけだったのだ。
他人にその素晴らしさを説明出来るだけの知識も見識も無い。
俺は30年間何をしてきたんだ、とマジ凹みました。

しかし、引き受けたからには自分にしか書けないものを、
と心を切り替えて今更ながらに猛勉強。
家にある膨大なビーチ・ボーイズに関する書籍、映像、音源を
(リーガル、イリーガル共に)改めてチェックし、曖昧な記憶を
訂正するなど、インプットに次ぐインプットに2週間。
その後1週間かけて2本の原稿を書き上げた。

この間、仕事に必要なこと以外、ビーチ・ボーイズ以外の音源を
一切聴かなかった。聴く暇が無かった。
一日中家に籠って何冊もの本を広げて音楽を聴き続けていた。
一度提出した後、3回も書き直したりして、ご迷惑をおかけした。

結果、今の自分に書けることは全て書き切れたと思う。
何より嬉しいのは、ビーチ・ボーイズへの理解がまた一歩進んだこと。
今まで「解説を書く」という姿勢で向き合ってこなかった音楽を、
違う角度から見つめることにより、見えていなかった側面が
浮かび上がってくるのだ。
30年以上聴き続けてきた音楽が、更に新鮮に聴ける歓び!
こういう機会を与えてくれたYさんには感謝しかない。

なお、今回僕が担当した2枚以外のライナーを書かれたのは、
漫画家でThe Pen Friend Clubという素敵なバンドのリーダー
である平川雄一さんと、小説家(BB5の「素敵じゃないか」
を主題歌とした映画『陽だまりの彼女』の原作者)の越谷オサムさん。
僕を含め3人とも音楽評論家ではない、というのが面白い。

お二人の文章、タッチは違えどそれぞれ行間からビーチ・ボーイズ
大好きオーラが出まくっていて、こちらも興奮してくる。
僕の文章がどう読まれるのか想像もできないけど、
これを読んで少しでもビーチ・ボーイズのことをより好きに
なってくれたなら、これ以上の喜びはない。

そして、これを読んでいる方で、まだビーチ・ボーイズを
体験したことがない、あまり知らない、というあなたに。

まあ、何から聴いてもいいんだけど、僕のオススメ。
まずは『オール・サマー・ロング』を聴いてみて。
ここで少しずつですが全曲試聴出来ます。

このアルバムには初期ビーチ・ボーイズのエッセンスが全て詰まっている。
これが気に入ったら、その前後の作品を聴いて、どちらの時代に
進むか決めるといい。
間違っても最初に『スマイリー・スマイル』はやめておきましょう。
自分でライナー書いておきながらナンですが、これは上級者用アイテムです。

というわけで、50年生きてきて初めての洋楽のライナーノーツを書いて、
ウカレている男の自慢話ブログでした。



2014年11月5日水曜日

wilsonic works 43


READ ALOUDの3rdミニアルバム『アカンサス』が11月5日に発売された。

今回はプロデュースが亀田誠治&バンド、僕は共同プロデューサー及び
ディレクターとして関わった。

よく、プロデューサーとディレクターってどう違うんですか?
という質問を受ける。

日本の音楽界では、プロデューサーは主にサウンド面のプロデュースを
指すことが多く、基本的にアレンジもプロデューサーが行うことが多い。
プロデューサー=音楽家、プレイヤーであるのが普通。

ディレクターは、通常レコード会社、レーベルの社員とか契約社員。
(元)ミュージシャンの場合もあるが、ノンミュージシャンの
人も結構いる。役割はいろいろだが、予算、スケジュールの管理などの
事務的な面と、楽曲のクオリティ・コントロールとか、ジャケット等
ヴィジュアル周りまで関わることが多い(『アカンサス』では
僕はヴィジュアルには関わっていません)。

映画界におけるプロデューサー(制作者)が音楽業界のディレクターで、
映画界のディレクター(監督)が音楽界ではプロデューサーと呼ばれている、
と考えると近いかもしれない。

僕の場合は、アーティストによって関わり方が違うので、
その都度肩書きを使い分けている。
今回のREAD ALOUDのミニアルバムでは、ディレクター的役割が
メインで、予算とスケジュール管理、楽曲の粗選びなどをやった。
アルバム全体の構想段階から関わって、詞やメロディ、
コードや構成などの詰めにも関与したため、共同プロデュースの
クレジットも入れてもらった。

実際のスタジオ作業は基本的に亀田さんとメンバーに全面的にお任せして、
僕はただただ“いい曲”が“もっといい曲”になっていくのを眺めていた。

エンジニアは僕が全幅の信頼を寄せる牧野英司さん。
マスタリングはバーニー・グランドマン前田康司さん。

前作から約1年半。これまでの蓄積と、全国を回るツアーで得た
感触とを上手く消化し、丁寧に時間をかけて作った楽曲たち
(今回はクワタユウキだけではなく、メンバー全員が詞曲作りに
関わっている)。
亀田誠治という新たなパートナーによって引き出された
READ ALOUDのプレイの魅力とクワタのヴォーカル力。
『アカンサス』は、今の充実したREAD ALOUDの姿が
余すことなく詰まっている傑作だ。

初監督映画『FORMA』も話題となった映像作家、坂本あゆみさんが
監督した「君の声を思い出す」のMVはこちら

12月7日には渋谷クラブクアトロでのワンマン・ライヴも決定している。
彼らの音、映像、生演奏にぜひとも触れてほしい。

p.s.

バンド名のREAD ALOUDは、音読、声に出して言う、というような
意味合いだけど、彼らはそれを地で行くというか、何に対しても
真剣に、本気で議論する。遠慮せず、主張する。
メンバー同士でも、他者に対しても。
そして、言ったことには責任を持つ。

事なかれ主義、空気を読む、摩擦を起こさない、なんて若者が
多いこの時代に、彼らのガチンコぶりは新鮮だ。
いつまでもそのREAD ALOUD精神でいてもらいたいし、
僕もなるべくそうありたいと、彼らを見ていて思った次第。




2014年10月7日火曜日

wilsonic works 42


久しぶりに、armchair directiveという肩書きを使った。
明日10月8日発売のココロオークションのアルバム、『ヘッドフォンミュージック』
これに収録された「ハルカ」と「夏の幻」に、上記クレジットで参加した。
armchair directiveとは、離れた場所からメール等の指示だけで
プロデュースやディレクションを行うこと。
前回これを使ったカルマセーキのアルバムに関してはこちらのエントリを。

ココロオークションは、2011年頃から活動をしている、関西をベースのバンド。
以前から親交のある「見放題」のスタッフが関わっていることもあり、
名前は知っていたのだが、実際にライヴを観たのは去年の見放題が初めてだったのかな。
そのときの印象が思っていたより硬派で、なんかとても良くて、
ライヴ後にスタッフやメンバーにその感想を伝えた記憶がある。

その後、今年に入ってリリースされたアルバム『七色のダイス』
を購入して聴いて、そのメロディのクオリティに改めて驚いた。
そしてメロディをしっかり活かす言葉の乗せ方にも舌を巻いた。
そして何よりもそれを歌うヴォーカル粟子くんのずるい声。
僕はすっかりココロオークションのファンになってしまった。

“タワレコメン”にも選出されたのも頷ける『七色のダイス』
に続く新しい作品作りに協力してほしいという連絡があったのは、
5月に入ってすぐだったと思う。
もちろん二つ返事でぜひとも、と引き受けた。
彼らは大阪在住で、レコーディングも大阪で行うことに
なっていたので、armchair directive方式を採用。
上記2曲に関して粟子くんとメールで何往復かして、形にしていった。

一緒に作業する人との相性や性格にももよるんだろうけど、
僕はこのarmchair directiveという方法、結構気に入っている。
というのも、僕は物事をじっくり考えないと駄目なんです。
打てば響くように当意即妙な面白いアイディアとか出ません。
実際に会って話をしていても、長考に入ることがしばしば。

メールでデモを受け取って、何回も何回も聴き込んだり、
自分でも歌ってみたり、ギターで弾いてみたり、歌詞だけを
じーっと眺めたりして、いろんな可能性を探ってみる。
道筋が見えてきたところで、それを言語化してメールにして返す。
このようにじっくりと考えるやり方が、自分には向いているのだ。

そうそう、8月にリリースしたウルトラタワーのアルバム曲たちも、
曲作りにおいては上記のようなやりとりで進めて行った。
彼らは京都、滋賀在住なので。

ということで改めてこれをお読みの業界関係者やミュージシャンの方へ。
wilsonic竹内は、どちらにお住まいの方とも一緒に音楽を作ることが可能です。
どんなやり方をするのか、お知りになりたい方は、
お気軽に wilsonic@me.com までご連絡ください。

最後は営業になってしまったけど、ココロオークションの
『ヘッドフォンミュージック』、僕が関わった曲以外も
当然良い曲ぞろいなのでおすすめです。
リード曲「ヘッドフォントリガー」のMVはこちら
ヴィデオの中に登場するメイド姿の女の子、なんか見覚えがあるぞ(笑)。

2014年9月24日水曜日

wilsonic works 41


1989年2月、ポリドール(現ユニバーサル ミュージック)に
アルバイトとして入社。
これが僕の音楽制作人生の始まり。
もう25年も音楽制作に携わっていることになる。

入社したその年、ポリドールからソロ・デビューしたのが、
P-MODELの中心人物であった平沢進
僕の最初のスタジオ体験は、平沢さんの1stソロ・アルバム『時空の水』だった。
1枚目はアシスタント・ディレクターとして。
2枚目以降はディレクターとして、足掛け7年、平沢さんとの仕事は続いた。

“平沢進 ソロ・デビュー25周年 Project Archetype” と銘打たれた
プロジェクトのリリース第1弾、全4タイトルが9月24日にリリースされた。
詳細はユニバーサル ミュージックの公式ページを参照ください。

このプロジェクトに、僕はファッシネイション
高橋かしこさんと共に、監修という形で関わった。

平沢さんが1989年から1995年の間にポリドールに残した
作品群をリマスターし、SHM-CDとしてリイシューしよう、
というのが “平沢進 ソロ・デビュー25周年 Project Archetype” 。

今年の春、ユニバーサル ミュージックの、かつての僕の先輩から
この構想をお伺いし、光栄なお話と思い、ご協力を確約する。
オリジナルのディレクターだからといって、こういったリマスターや
リイシューにお声掛けいただくのは、非常にレアなケース。
本当に嬉しかった。

早速前述の高橋かしこさんをブレーンにお迎えすべくご相談をし、
ユニバーサルのスタッフと構想を固めていった。
結果、以下のような考え方にまとまった。

①基本的にはオリジナル盤はストレート・リイシュー
 未発表テイクなどのボーナス・トラックは収録しない
②新規のベスト(コンピレイション)盤を組む
③マスタリング監修を鎮西正憲さんにお願いする
④ライナーノーツを新たに書き下ろす
⑤ライナーの他に各オリジナル盤にはサウンド解説を入れる
 執筆者はサウンド&レコーディングマガジン國崎晋さん


今回のリマスタリングは非常に意味がある。
19年前〜25年前の作品なので、当時と今ではマスタリングの
意味合い、考え方、システムが全く違っているのだ。

マスタリング監修をお願いした鎮西さんは、1990年から現在まで、
永きにわたり平沢サウンドを支えるレコーディング・エンジニア。
今回リイシューするほぼ全作品を、自身で2012年にリマスタリングした
経験値(2012年のボックス・セット『HALDYN DOME』)もある。
実際のマスタリングはユニバーサルの吉野謙次さんが担当。
このふたりが丁寧に、オリジナルの音を尊重しつつ、より今の世の中に
フィットする音に挑んだ今回のリマスタリング。

結果、とても耳馴染み良く、且つ平沢さんの音楽が持つ特徴を
引き立てた音となった。オリジナル盤を持っている人にこそ、
リマスターの音を確認してもらいたいと思う。

また、オリジナル・アルバムに封入されたライナー・ノーツも
興味深い。1stは高橋かしこさん、2ndは同アルバムのプロデューサー
でもある有島明朗さん、3rdは中野でテクノ専門ショップ「メカノ」
を経営する中野泰博さん。それぞれの視点、それぞれの体験に
よって描かれる平沢初期ソロのお話。
國崎晋さんによる録音機材、録音方法等の文章がこれまた面白い。
機材に疎い人でも楽しめる内容になっているのでご心配なく。

そしてジャケット・デザイン。
オリジナル・アルバムは帯やバック・インレイのデザインを統一し、
その他は元のデザインを生かした。

コンピレイション『Archetype|1989-1995 Polydor Years of Hirasawa』は、
新規デザインで、なんと32ページフルカラーのブックレットという贅沢仕様。
当時のアーティスト写真やそのアウトテイクなど(既発表だがレアなもの)が
多数使用されている。
アート・ディレクション&デザインは、monogramme中井敏文さん。

このアルバムでは高橋かしこさんにポリドール期〜現在までの
平沢ソロに関する概論を書いていただき、これが滅法わかりやすい。
そして不肖竹内も、個人的な思い出など交えながら、
全27曲の聴きどころを紹介する文章を書いております。


リマスタリングしたり、解説を書いたり、久しぶりに
鎮西さんと一緒に作業したりするに連れ、いろいろなことを思い出した。
いろんなことに気づいた。

当時平沢さんがどんなに革新的なことをやっていたのか、
僕は全くわかっていなかったんだなー、と恥じてみたり。

初期はスタジオにいろんな人が陣中見舞いに来ていたなー。
みんなでワイワイとコーラスやったりしたなー。

ああ、平沢さんの歌は、鼻濁音が綺麗だなー、とか。

平沢さんは僕のこと「たけちゃん」と呼んでくれた。
しかも「けちゃん」の方が高くなる独特のイントネーション。
そういう呼び方するの、平沢さんだけだった。

僕の全く知らない固有名詞や概念を、平沢さんからいっぱい教わった。
知らなくても生きて行けるけど、知っていたほうが絶対面白いことばかりを。

先日、高橋かしこさんが主催するトーク・イヴェント、
「ニュー・ウェイヴとはなんだったのか」の番外編
出演した際に、上記のようなことをいろいろお話した。

その日、トーク・イヴェントが終わって、サンレコ國崎さんと
雑談したときに二人で共通した結論が出た。

“平沢進の音楽と出会う人生で良かった!”

このブログをお読みで、まだ平沢進の音楽と出会っていない方。
新規コンピ『Archetype』全曲、少しずつだけどここで試聴できます。
この機会に是非とも出会ってみてほしい。

あなたの音楽ライフに、確実に新しいトビラが開くはず。

2014年8月6日水曜日

wilsonic works 40


wilsonicのお仕事、記念すべき40作目は、滋賀出身、京都を拠点に
活動する若きバンド、ウルトラタワーのデビュー・ミニアルバム。
タイトルは『太陽と月の塔』
全6曲、プロデュースに全面的に関わった。

まだ22、23歳という若さながら、バンド歴は7年目を数える。
メンバーのうち3人が中学校のときに結成した前身バンドに、
他校でひとつ歳上のドラマーを迎え入れて、ウルトラタワーが始まった。

マネージメント・サイドから、彼らのことを聞いたのは昨年夏。
いくつかの曲を聴かせてもらって、そのメロディのキャッチーさに唸った。

その後いくつかのミーティングを経て、正式にプロデュースすることになり、
昨年12月から本格的にデビュー盤のための準備を始めた。

ウルトラタワーの曲作りはちょっと面白い役割分担になっている。
基本、作曲がヴォーカルの大濱、作詞がギターの寺内、という枠組み。
逆パターンは結構あるけど、歌う人が作詞をしないというのは珍しい。
しかも寺内の書く詞は、ストーリーやイマジネーションに溢れた
今どきあまり類を見ないファンタジックな作風で、非常に個性的なものだ。

まずメロディを大濱が作り、それに対して寺内が詞をつけていく
(以前は詞が先のことが多かったようだ)。
ひとりだけで作詞作曲を完結させない形は、うまくいくと
とんでもない化学変化が起こる可能性がある。
逆に、お互いが全く違うことを考えていると、
見るも悲惨な結果を招くことになる。

今回、新曲を作るに当たって僕がいちばん丁寧に扱ったのは、
この部分。曲作りのリレーション、その交通整理だ。

作曲者、ヴォーカリストは作詞をする人の考えや物語を読み取り、
作詞者は作曲者のメロディの意図を考慮し、ヴォーカリストの
歌いやすさを考える。
こういう思慮深さも大切だし、違和感があるときは伝え、
主張すべきことははっきりと云う、というような姿勢も非常に重要。

これ、自分で全部書いて歌う人は、知らず知らずのうちに
(もしくは自覚的に)やっていたり、お互いの立場を少しずつ
譲り合ったりしてるんだけど、分業になるとそれぞれ自分で
精一杯でだったり遠慮したりで、うまく伝わらない場合が多い。

70年代の歌謡曲などを聴くとその素晴らしき分業制がよくわかる。
「このシンガー」のために、
「作詞家」がこのテーマで詞を書き、
「作曲家」がその言葉にこういうメロディを付け、
「編曲家」がこういう楽器を使ってこんなイメージにした、
ということが。

忘れがちだけど、シンガー・ソングライターだって基本は同じ。
上記のような分業制を踏まえておかないと、
自分に甘いジャッジしかできなくなる。

この文字数だと元々のメロディを変化させないとうまく乗らない。
じゃあ変えちゃえって簡単に変えてしまい、元々持っていた
良いメロディを崩してしまったり。
その言葉をこのメロディに乗せたらイントネーションが
おかしくなるけどまあいいや、とか。
この音符の長さでその言葉だと歌いにくいけど、ガマンすればいいよね、とか。

このような妥協は曲の純度を下げてしまうだけだ。

歌詞とメロディの関係には、いろんなルールがある。
別に絶対に守らなければいけないわけじゃないけど、
ルールは知らないより知っていたほうがいい。
知った上でわざと破ったり踏み外したりするのは「個性」。

ウルトラタワーがせっかく作詞作曲を分業しているので、これを
更なる強みにするため、上記のようなことをあーだこーだと
レクチャーしながら曲作りをサポートした。
2ヶ月くらいかけていろんなことを共有して出来上がったのが
「RUBY SPARKS」と「星降る街」。
他の4曲は自主制作のCDに収録したことがあったり、
何らかの形で曲として出来ていたものを新たに録り直したものだ。

関わっている僕が云うのもなんだけど、本当によく練り上げられた
曲が揃っているミニアルバムだと思う。
タイトなリズムと2本のギターのアンサンブルが基本。
そこに大濱のちょっとハスキーで印象的なヴォーカル。
彼のハイトーン・ヴォイスはウルトラタワー最大の武器だ。
ピアノやストリングスを入れた壮大な作品もあり、
ロック・ファンだけではなく幅広い層に指示され得る音楽が鳴っている。

オフィシャルで全曲少しずつ聴けるのでよろしければぜひ。
あと、映画『ハイキック・エンジェルズ』等で活躍中の
宮原華音さんをフィーチュアした「RUBY SPARKS」のMVはこちら。
僕のことも少しふれているバンド初のインタヴュー記事はこちら。


以下はちょっと違う角度から。

実は初めてマネージメント・サイドから彼らのことを紹介されたとき、
僕は彼らの曲を聴くのは初めてだと思っていた。
しかし違っていたのだ。
家に帰って調べると、僕は彼らが2010年にリリースした
1stシングル「Little Globe」を持っていた。
いったい何処でいつ購入したのかさっぱり覚えていない。
しかし、改めて聴くと、曲だけはしっかり覚えていた。
非常に強い曲だったので印象に残っていたのだ。

今回のウルトラタワーとの出会い(再会)と、その後の進行具合は、
そんな偶然とか必然とかがない交ぜになった、いろんな「縁」があった。

まず、マネージメントは僕がクノシンジくんでご一緒した方が関わっている。
レコード会社の制作責任者は、かつてポリドールでスピッツのデビューの
ときに販促マンとして関わってくれた同僚。
上記2名、ともに僕と同い歳の50歳。

エンジニアは僕のたっての希望でmixmixの佐藤雅彦さん。
彼とは99RadioServiceのシングルでご一緒して以来。
いろいろお骨折りいただいたが、結果的に全員が満足する
音に仕上げてもらった。感謝してもし切れない。

2曲のストリングス・アレンジには信頼の竹内印、棚谷祐一さん。
スピッツ、セロファン、ゲントウキ、クノシンジ、おとぎ話、
LOST IN TIMEと、竹内の数々のお仕事に関わってもらった
棚谷さんに久々にご登場願い、素晴らしい弦のスコアを書いていただいた。
そして超久々に生ピアノも。
現場ではいろいろトラブルありご心配おかけしましたが、仕上がり最高!

avexのディレクター氏が今回のアートワーク周りのスタッフとして
ピックアップしたのが、阿萬企画の阿萬智博さん。
1996年頃からグルーヴァーズのジャケットでお世話になり、一時期
相当ガッツリ仕事をさせてもらった仲。
この人選にはホントにビックリした。

何かが起きるときは、このように誰が仕組んだわけでもなく、
後から考えればあーなるほどねー、なんていう「必然」が
あちこちに転がっているものなのだ、と思った次第。

ということで、ウルトラタワー、デビューおめでとう。
これからいろんな面白いこと、起こしていこう。





2014年7月11日金曜日

wilsonic works 39


今月5日からLIVE会場限定販売という形でリリースされた、
PERIDOTSのアコースティック・セルフ・カヴァー・アルバム、
『TIMEPIECE』にディレクターとして関わった。
PERIDOTSとのお仕事は今回が初。

PERIDOTSのことはデビュー前から知っていた。

確か2004年のことだと思う。
Teenage Symphonyという名のレーベルをオーガナイズしていた僕は、
既にデビューしているゲントウキbonobosに続く新人を探すため、
日夜都内やその他の街でライヴを観ていた(今と変わらんじゃないか)。

その日も当時bonobosのディレクターをやっていた
土橋くんと一緒に、渋谷のライヴハウスに行った。
CRJ-Tokyoのイヴェントだった。
そこに、PERIDOTSは出ていた。

僕も土橋も、見終わった後ちょっと興奮して、
何このバンド(当時はバンド的な見え方をしていた)ちょっと
ヤバくないか的にふたりで盛り上がっていた。
すぐにバンドとコンタクトを取ろう、と旧知のCRJスタッフに
「彼らって今、どういう状況なの?」と訊いたら、
なんと昨日だかその日だか、とあるマネージメントと
契約を結んだばかり、だと!
ほぼメーカーも決まっている、とのことだった。

時、既に遅し。

2006年、PERIDOTSはメジャー・デビューした。
名曲「労働」を含むミニ・アルバム『PERIDOTS』
当時はそんな経緯もあり、なんか悔しくて買わなかった(子供かっ!)

同年PERIDOTSは、スピッツが毎年大阪で開催しているイヴェント、
"ロックロックこんにちは!" に出演した。
その素晴らしいステージに感動した僕は、打上げで初めて
PERIDOTSことタカハシコウキくんと言葉を交わす。

2007年、PERIDOTSはユニバーサルに移籍。
リリースしたミニ・アルバム『EVERY LOVE SONG』
収録された「秘密」という曲の、もうなんと形容していいのか
わかんなくらいの名曲っぷりに改めて惚れ直す。

2008年、マネージメント、メーカー共に契約を終了した、
というニュースを聞き、僕は知人を介してタカハシくんと
会って話をした。
僕に出来ることがあれば何でも協力したい、と申し出た。

当時僕はまだメーカー・ディレクターだったから、
やれることは限られていたのだけど、
素晴らしい才能を放ったらかしておくわけには
いかない、との思いだけだった。

しかし僕が何かする必要もなくほどなくしてメーカーも決まり、
2010年、デビュー5年目にして初のフル・アルバム
『MY MIND WANDERS』をリリース。
2012年には『Follow The Stars』、2013年に『concourse』と、
それまでの寡作振りとは打って変わった充実したリリースが続く。

そして、去年発表の3rd『concourse』の出来が本当に素晴らしくて。
このエントリにも書いたんだけど、力の抜け具合と曲のクオリティの
高さの共存がとにかくもう奇跡的だった。
リリース後にキリスト品川教会で行われたライヴに行き、
タカハシくんにそんな感想をうざいくらい伝えた。
それが2013年8月のこと。

秋になり、PERIDOTSのディレクターの方から連絡が入り、
制作を手伝ってもらえないか、とのありがたきオファー。
もちろん僕は二つ返事で快諾。曲作りの準備に入った。

残念ながら、このとき進み始めたプロジェクトは完成を
見ぬまま中途で終わってしまった。
が、年が明けて今年の春、今回の『TIMEPIECE』の企画が
立ち上がり、改めて参加要請をいただいたのだった。

曲選びからアレンジの方向性とか、一応ミーティングや
メールのやりとりはしたけど、基本的にこれまで
3枚のアルバムを作ってきた鉄壁のチームPERIDOTSの
やることに間違いがあるわけない。

プロデュースはPymiersher Light(久保田光太郎 & 河野圭)とタカハシコウキ。
アレンジは久保田さんと河野さんがそれぞれ4曲ずつ。
エンジニアはstudio formの渡辺敏広さん。
この人たちの超人的な作業に舌を巻くばかりの日々。
ただただ、スタジオで「すげー」とか、「最高!」
とか感想を云ってるだけだった。

実際、ものすごい集中力と愛情がその現場にはあった。
実力のある人たちが刺激し合って互いの潜在能力を引き出す。
毎日、全部が火事場の馬鹿力、みたいな感じ。

というような経緯で僕がPERIDOTSの現場に初めて関わった、
アコースティック・セルフ・カヴァー・アルバム『TIMEPIECE』。
収録曲目などの情報はこちら
8曲目の「時間旅行」は新曲。
そしてこの新曲の出来がとてもいいのよ。
ぜひとも多くの人に聴いてほしい。

近々では、明日7月11日(金)の北沢タウンホールのライヴで販売します。

8月から9月にかけて、北海道から九州まで、全国10ヶ所を
タカハシくんひとりでツアーをする "ECHOES & WALLS 2014 -ALONE-"
ここでも販売します。
お近くの会場に是非足をお運びください。
タカハシくんのライヴで生のPERIDOTSを体験してみてほしい。

今回のこのアルバム、とりあえずまずは "LIVE会場限定販売"
なんだけど、狭い界隈だけで終わらせてしまうのはもったいなさ過ぎる。
なんか、この音楽とPERIDOTSがいろんなところに
拡散して行くことを考えたいなー、と思っています。

あと、PERIDOTSのことよくわかんない、と云う方は、
まずはこちらのYouTubeのオフィシャルサイトをご覧ください。
MVから弾き語りまで、いろんなPERIDOTSがいます。

繊細さと力強さを併せ持つマジカルな歌声、宝物のような音楽。
それが、PERIDOTS。




2014年3月9日日曜日

wilsonic works 38


今週3月5日に、新人シンガー・ソングライター岡本愛梨
ミニ・アルバム『敏感なアンテナ』と配信シングル「アタシ劇場」が発売された。
僕はこの両方に共同プロデューサー&ディレクターとして関わっている。

wilsonic竹内は女性アーティストとの仕事が少ない。
フリーランスになってからは高杉さと美さんのアルバムの
中の1曲をプロデュースしたのと、東京カランコロン
女性ヴォーカル、せんせいと仕事したことがあるだけ。

少ない理由は、単にオファーがないからなんだけど、
まあ世間的には男性ヴォーカルのバンドものが得意分野だと
思われているだろうし、実際そうなのかもしれない。

僕を古くから知る人には周知の話なのだが、実は15年くらい
前まで、僕は女性シンガーが基本的に苦手だった。リスナーとして。
好きなのは日本では斉藤美和子、海外ではフランス・ギャルと
クローディーヌ・ロンジェくらい(一貫性が無いなー)。

仕事としてもメーカー・ディレクター時代はほとんど
女性アーティストとは仕事をしていない。
1996年〜97年にかけてrosyという女性5人組ロック・バンドを
担当したのは相当レアな体験ですね。
Litaという男女ユニット(女性ヴォーカル&男性ギター)
とも、2000年前後に2枚のアルバムを作った。
亀田誠治さんとの出会いはスピッツではなく、
このLitaでのお仕事だった。

ユニバーサル ミュージックを辞めて、レーベルを始めたあたりから、
男女関係なく聴けるようになったし、今となってはもしかしたら
女性ヴォーカルのほうが好きかもしれない。

というわけでwilsonic竹内は決して女性ヴォーカルものが
苦手とかそういうことはございませんので、
今後遠慮なくオファーしていただければと思います(営業)。

で。

岡本愛梨は、以前はMAGIC PARTYという男女ユニットで
シンガーAIRIとして活動していた。
2012年6月のMAGIC PARTY解散後、自ら詞曲を書き始める。
主にピアノ弾き語りで録られた数十曲のデモを聴いたのは、
今から1年半も前の2012年9月だったかと記憶する。

独特の "気になる" 曲のタイトルの付け方、ハスキーで特徴的な声、
そしてどこかノスタルジックなメロディに引っかかった。

初めての彼女とのミーティングのときに、自作のCD-Rを持参した。
題して『どこかノスタルジックな匂いのする最近の女性シンガー』。
このコンピ、すごくいいんですよ。
だって、俺が大好きな曲ばかり入っているんですから。
全部洋楽。
でも、詳細は忘れちゃったんだよなー。
その後iTunesがクラッシュしてしまい、プレイリストが
全部無くなってしまったから。

愛梨さんはこのCDの中のいくつかを気に入ってくれたみたいで、
収録アーティストのオリジナル・アルバムを買ったりしたそう。
そして次のミーティングでは今度は、彼女が好きな、
今後の自分の作品作りの参考にしたい曲を集めたCD-Rを
持って来てくれた。
僕はここで初めてCaro Emeraldというアーティストを知った。
これには感謝ですね。

いろいろなアーティストと仕事をしてきているけど、
新しく関わる人からは新たな情報や価値観を教えてもらえるので、
そりゃもう刺激的なんです。
年齢が離れていれば尚更。
ちなみに彼女と僕は二周り、24歳の年齢差がある。
SAKANAMONのメンバーもそのくらい。

まだ発表出来ないけど、たった今レコーディングを
進めているバンドは、21歳と22歳の4人組。
こうなるともう息子娘と変わらんですよ。
価値観とかものの考え方でギャップも多いし、
なんでこんなこと知ってるの?とびっくりしたり、
逆にこんなことも知らないの?と愕然としたりもする。

閑話休題。

2012年の秋からミーティングを重ね、沢山の曲を作り、
いくつかのプリプロを経て、2013年の夏に1曲のレコーディングを行う。
それが3月5日に配信限定リリースとなったシングル曲「アタシ劇場」。

アレンジ、サウンド・プロデュースはex東京事変にしてthe HIATUSの
メンバーであるピアニスト、伊澤一葉

当初ピアノをメインにしたデモが出来ていてそれを伊澤さんに
聴いてもらい、アレンジを練っていただいたのだが、
伊澤さんから出て来たアイディアはピアノではなく
ギターがメイン、しかもまさかのフラメンコ!

全く予想していなかっただけに最初は戸惑ったが、
最終的には曲が持つ世界観を見事に引き出す結果に。
伊澤一葉恐るべし。

ちなみにレコーディング・パーソネルは以下の通り。

岡本愛梨 vocals
Saigenji guitars
伊澤一葉 acoustic piano
山田裕之 upright bass
波多江健 drums
井上うに recording & mixing

曲中の重要なアクセントとなるパルマ(フラメンコ特有の手拍子)は、
ドラム波多江さんご指導のもと、上記の全員で悪戦苦闘しながら録った。

このレコーディングの手応えをきっかけに、
岡本愛梨のソングライティングは確実に進化した。
当初は「アタシ劇場」とそれまで書き溜めていた数曲で
ミニアルバムを作る予定でいたのだが、このレコーディング
以降に作る楽曲がどんどん良くなってきたので、予定変更。

2013年の秋から書かれた曲の中から選んだ5曲、
それが今回『敏感なアンテナ』に収められた曲たち。

それぞれの曲はメロディやアレンジの方向性は結構バラバラ。
それをひとつに集約させるのが岡本愛梨による等身大の歌詞と、
全5曲のサウンド・プロデュースとミキシングを行った関根卓史の存在。

関根さんは、音楽ユニットgolfのメンバーであり、
映像制作ユニットSLEEPERS FILMのメンバー。
彼とはタニザワトモフミのアルバム『何重人格』のときに
タニザワくんから紹介されて初めて会ったのだが、
そのときの仕事のクレヴァーぶりに感心した。
また、その後知り合ったり仲良くなったりする人の中に
関根さんと親しい人が結構多くて、不思議な縁も感じていた。

彼はプレイヤーでありアレンジャーでもあり、エンジニアでもある。

彼がアルバム全体に関わることにより、一見取っ散らかった
セレクションにも思える今回の5曲を1本芯の通ったものに
してくれるのではないか、との思いからのオファーだった。
あと、生楽器と打ち込みの絶妙なバランス。
これも今回のキモ、かな。

柔軟で冷静で、いろんなことに興味を持ち、面白がる。

これが僕の関根卓史評。
結構タイトなスケジュールだったはずなのに、
いつも飄々とした風情で楽しそうに現場をこなす。
しかも愛梨さんのいろんなリクエスト(時に抽象的な)や
僕の無茶振りにもしっかり応えてくれるプロフェッショナル振り!
非常に頼もしい限りで、一緒に仕事していてとても安心。
ありがとうございました!

マスタリングは関根さんの紹介でサイデラマスタリングの森崎さん
サイデラが神宮前に引っ越してから初めての訪問だし、
森崎さんとは初めまして、だったが、いやはや面白かった。
「ハスキー・ヴォイスはマスタリングの醍醐味」
という発言は目から鱗だったなー。面白いなー。

以上のような経緯で、僕が関わるようになってから約1年半。
ようやく岡本愛梨というシンガー・ソングライターが
その第一歩を踏み出した、ミニ・アルバム『敏感なアンテナ』と
配信シングル「アタシ劇場」。

『敏感なアンテナ』はこのSoundCloudでご試聴できます。
「アタシ劇場」こちらのiTunes Storeで聴けます。

新しい才能、楽しんでいただけたら幸いです。

2014年3月1日土曜日

my favorite domestic albums and EPs 2013


前回のブログの続きで、2013年お気に入り音楽の邦楽編28枚。
自分が少しでも関わった作品は除外した。
洋楽編同様、聴いた順で記述した。
見出しに埋め込んだリンクは、何かしら試聴出来るサイトなので、
気になる向きはぜひチェックのほどを。

おとぎ話 "THE WORLD"

迷いが無いときの彼らの無敵感はどのバンドにも勝る。
2013年、彼らはまたひとつ大きくなった。これからがますます楽しみ。

スカート "ひみつ"

現代日本ポップス屈指のメロディ・メイカー澤部渡。
何回もライヴ観てたけど、2013年から飛躍的に音源もライヴも
良くなったのではないか?

うみのて "IN RAINBOW TOKYO"

このアルバムに入っている「SAYONARA BABY BLUE」は、
曲として個人的に2013年邦楽ベストかも。
WWWでのワンマンも忘れがたい。

ROTH BART BARON "化け物山と合唱団"

リリースは2012年だけど入手が今年に入ってから。
2011年に初めて彼らのライヴを観たときもビックリしたが、
昨年久々に観たライヴで超絶曲が良くなっていて更に驚愕。
あわてて最新アルバムを購入。
現代アメリカン・インディと日本語の見事な融合。
奇跡のようなバンド。今年大暴れするはず。

キリンジ "Ten"

毎回唸らされる作品を産み続けて10枚目。
新生キリンジにも期待します。

THEラブ人間 "SONGS"

キャラクターやライヴ・パフォーマンス、詞の内容で
語られることの多い彼らだけど、実は曲がとても良いのです。
2ndが、1stに負けない粒ぞろいのアルバムってのは
そうそう作れないのに、彼らは見事クリアした。

本棚のモヨコ "夢の続きをもう一度"

これまでの作品で僕が思っていたいくつかの課題を、
彼らは一歩一歩クリアしている。頼もしい限り。

フジファブリック "Voyager"

これには脱帽した。
とにかく細部までしっかりと気を配って丁寧に、
そして誠実に作られた作品。
全部いい。全ての若手バンドはこれを一回聴いといたほうがいい。

tofubeats "lost decade"

最新作よりこちら。
ヒラメキのある音楽とは、こういう音楽。

SASAKLA "Spring Has Come"

前2作から飛躍的にクオリティが向上した。
殊にヴォーカルの質感、表現力に唸る。
とてつもないメンツで行われるライヴも含めてこれも現代の奇跡。

夕暮レトロニカ "夜が明ける"

作曲家として、ギタリストとして、非常にユニークな個性
を持ちながら、人懐こい音楽を奏でる。
久々の作品も安心印。もっといっぱいリリースしてよ。

吉澤嘉代子 "魔女図鑑"

新しい才能の登場にワクワクした。
「泣き虫ジュゴン」を聴くと、僕のほうが泣き虫になってしまう。

印象派 "Nietzsche"

音楽はもちろんのこと、バンド名、タイトルなど最高。
ここからどこへ向かうんだろう?という得体の知れない
感じがたまらない。

Negicco "アイドルばかり聴かないで"

2012年に少しBiSにハマりかけたくらいで(ワッキーにひと目惚れ)、
基本的にアイドルには踏み込んでいない僕だが、この曲は良かった。
細かいアレンジのくすぐりもいいし、「ざんねーん」ってめちゃキャッチー!

andymori "宇宙の果てはこの目の前に"

どんどん骨太のバンドになっていく。
風格すら感じる作風なのに、いつもザワザワする。

わたなべよしくに "でもでもでも"

2013年のライヴで出会ったいちばんの衝撃は彼ら。
ナード系アコースティック・ヒップホップ・フォークとでも云えばいいのか。
ここに収録されている「19」っていう曲の圧倒的な
郷愁感というか泣きじゃくり感はいったいなんなのだ。

三回転とひとひねり "回覧盤"

軽やかでちょっとドライで。メロディがすっと入ってくる。

peridots "concourse"

3枚目のアルバムで、最高傑作だと思う。
とにかく全体的に全く無理のないアルバムで、しかも曲がみんないい。
今の日本で、肩に力を入れずに良い曲を作るのは何かと難しいんだが、
タカハシコウキ遂にやりました。

Contrary Parade "アイネクライネリヒトムジーク"

バンドからソロ・ユニットになった彼女の、これが1stフルアルバム。
メロディへのフェティシズムが半端ない。
サウンドもいろんなゲスト・ミュージシャンを迎えてヴァラエティ豊か。

おおたえみり "ルネッサンス"

実は残念ながらこのミニアルバム、彼女のライヴの
凄まじさの1/10くらいしか伝えられていない。
というかあの才能をCDに閉じ込めるのは不可能なのか?

橋本拓也 "Free Energy Study"

この人のこと全く知らないしライヴも観ていないんだけど、
放っておいてはいけないんじゃないか、と思っている。
端正なメロディと淡々としたヴォーカル。好きだこういうの。

あらかじめ決められた恋人たちへ "ドキュメント"

ライヴでの「持って行かれる」感じもすごいけど、
CDはCDですげー良い。

The Cheserasera "Drape"

タワレコ限定の100円シングル。
表題曲はライヴでさらに輝きを増す。
今年に入って出たミニアルバムも傑作。
2014年期待のブライテスト・ホープなんじゃないの?

長澤知之 "黄金の在処"

デビュー前から彼の異能振りを知っていたけど、
このアルバムは最高傑作じゃないすかね?

オワリカラ "踊るロールシャッハ"

シングル曲ってのはこういうもんだ、という見本のような曲。

曽我部恵一 "超越的漫画"

毎回彼の熱量には驚かされるけど、今回は格別。

HAPPY "Lucy EP"

彼らを巡って業界が騒然としていた2013年後半。
僕も純粋に彼らの音楽やライヴが好きで、ファンになった。
このEPには大好きな曲が2曲入っている。
最初に買った盤は、CDの盤面にスプレーがかかってしまっていて、
ターンテーブルに載せても音が出なかった。
次のライヴでメンバーに文句云ったら、ごめんなさいと新しいのをくれた。

僕のレテパシーズ "ぴりぴりのファースト"

ライヴでの古宮くんはいつも不機嫌そうに見えるけど、
実はシャイなだけなんだと思う。
自分がシャイなことに腹が立つ、くらいの。

2014年2月11日火曜日

my favorite albums and EPs 2013


ここ数年、とにかく記憶力が落ちてきているので、
片っ端からメモをするようにしている。
レコーディング日誌、読んだ本、観た映画、聴いた音楽。
ひと言でもいいから、何かしらメモしている。

年が明けてから、去年の音楽メモノートを読み返してみて、
気に入っていたのに忘れていたものとかやっぱりあって。
で、聴き返してみるとやっぱり良くて、なんてことを繰り返していた。

という作業の果てに、去年聴いた音楽の中で、驚いたもの、
ヤバいと思ったもの、大好きなもの、などのリストが出来た。

以下、2013年に聴いた新譜(一部2013年以前のアルバムも含む)で、
僕のお気に入り盤を、アーティスト名とタイトルだけ列挙。
アルバム・タイトル部分には、リーガルに試聴出来るサイトへの
リンクを埋め込んでおいたので、気になる向きはクリックを。
リンク切れとか間違いがあったらごめんなさい。
そういう場合は各自調べてください(無責任)。

超有名盤からマニアックなものまで分け隔てなく119枚。
ちなみに順番は基本聴いた順番。
なので最初のほうは2012年リリースものが多い。

2013年wilsonic竹内お気に入り音楽:洋楽編

Various Artists "Girls Soundtrack Volume 1"
Minta & The Brook Trout "Olympia"
Christopher Owens "Lysandre"
Stereo Venus "Close to the Sun"
The Vow "For a Dreamer"
Henry Clay People "Twenty-Five for the Rest of Our Lives"
Jules Shear & Pal Shazar "Shear / Shazar"
Race Horses "Furniture"
Everything Everything "Arc"
Villagers "{Awayland}"
Frontier Ruckus "Eternity of Dimming"
Adam Green & Binki Shapiro "Adam Green & Binki Shapiro"
My Bloody Valentine "MBV"
Spinto Band "Cool Cocoon"
Biffy Clyro "Opposite"
Aaron Neville "My True Story"
Pure Love "Anthems"
Laneway "Turn Your Love Up"
Skyways Are Highways "Let Them Run Wild"
Rosie Thomas "If Songs Could Be Held"
Ra Ra Riot "Beta Love"
Stephen Lawrenson "Obscuriosity"
A Fragile Tomorrow "Be Nice Be Careful"
Goran Bregovic "Champagne For Gypsies"
The Lighthouse and the Whaler "This is an Adventure"
Hey Ocean! "Is"
Young Dreams "Between Places"
Ed Harcourt "Back Into the Woods"
Laura Mvula "Sing to the Moon"
David Bowie "The Next Day"
Liam Hayes "A Glimpse Inside the Mind of Charles Swan lll"
Kacey Musgraves "Same Trailer Different Park"
Josh Rouse "The Happiness Waltz"
The Strokes "Comedown Machine"
The Men "New Moon"
The Virgins "Strike Gently"
Screaming Maldini "Screaming Maldini"
Snowblind Traveler "Lost on the North Hills"
The Milk Carton Kids "The Ash & Clay"
Bob Evans "Familiar Stranger"
The Grapes of Wrath "High Road"
OMD "English Electric"
Wavves "Afraid of Heights"
Dawes "Stories Don't End"
Various Artists "The Music Is You: A Tribute to John Denver"
Bill Ryder-Jones "A Bad Wind Blows in My Heart"
Allison Weiss "Say What You Mean"
Phoenix "Bankrupt!"
Hem "Departure & Farewell"
Annuals "Time Stamp"
Young Statues "Age isn't Ours"
Readymade Breakup "Classic Single"
Mikal Cronin "MCII"
Phosphorescent "Muchacho"
The Last Bison "Inheritance"
Telekinesis "Dormarion"
The Boy Least Likely To "The Great Perhaps"
Souvenir Stand "Days"
The Leisure Society "Alone Aboard The Ark"
Van Dyke Parks "Songs Cycled"
Vampire Weekend "Modern Vampire of the City"
Cold War Kids "Dear Miss Lonely Hearts"
Daft Punk "Random Access Memories"
The Pastels "Slow Summits"
Attic Lights "Super Deluxe"
Various Artists "Drink a Toast to Innocence: A Tribute to Lite Rock"
Future Bible Heroes "Partygoing"
Lily & Madeleine "The Weight of the Globe"
Surfer Blood "Pythons"
Kodaline "In a Perfect World"
Bastille "Bad Blood"
Imagine Dragons "Night Visions"
And So I Watch You From Afar "All Hail Bright Futures"
Jim Guthrie "Takes Time"
Mowgli's "Waiting For the Dawn"
Lorna "Heart of Wire"
Zaz "Recto Verso"
Bombadil "Metrics of Affection"
The Love Language "Ruby Red"
Jay Z "Magna Carta Holy Grail"
Alex Bleeker & The Francis "How Far Away"
yOya "Go North"
Andrew Belle "Black Bear"
Carly Ritter "Carly Ritter"
Dent May "Warm Blanket"
Okkervil River "Silver Gymnasium"
Franz Ferdinand "Right Thoughts, Right Words, Right Action"
Babyshambles "Sequel to the Prequel"
The 1975 "The 1975"
The Stepkids "Troubadour"
Kakkmaddafakka "Six Months is a Long Time"
Someone Still Loves You Boris Yeltsin "Fly by Wire"
The Nines "The Nines"
The Strypes "Snapshot"
Sebadoh "Defend Yourself"
Chvrches "The Bones of What You Believe"
Said The Whale "Hawaii"
Prefab Sprout "Crimson/Red"
Grouplove "Spreading Rumours"
San Fermin "Sonsick"
Laura Veirs "Warp & Weft"
The Fratellis "We Need Medicine"
Cults "Static"
Lily & Madeleine "Lily & Madeleine"
Omar Souleyman "Wenu Wenu"
James Blunt "Moon Landing"
Avett Brothers "Magpie &The Dandelion"
Lucius "Wildewoman"
Agony Aunts "Big Cinnamon"
Atlas Genius "When It Was Now"
Autumn Defense "Fifth"
American Authors "American Authors EP"
One Direction "Midnight Memories"
EMINEM "The Marshall Mathers LP2"
And The Professors "Our Postmortem"
The Chevin "Borderline"
The Royal Concept "Goldrushed"
Nova & The Experience "Make Believe Games"
Matt Duncan "Soft Times"

ということでここまでチェックいただいた方はお疲れさまでした。

近々邦楽編(そっちはもっと数が少ない)もやります。


2014年2月10日月曜日

wilsonic 2013 annual report


2014年ももう2月半ばになろうとしていますが、
まだ昨年の総括をしていなかったので取り急ぎ覚え書き。

まず、本業に関して。

その壱:2013年にリリースされた、竹内が関わった作品
(括弧内は役割&肩書き)

02月 東京カランコロン album『We are 東京カランコロン』(producer)
03月 99RadioService single「STAR」(producer, 共作詞)
04月 LOST IN TIME album『(      ) トラスト オーバー サーティ』(2曲co-producer)
04月 SAKANAMON single 「シグナルマン」(producer)
05月 スピッツ single 「さらさら / 僕はきっと旅に出る」(director)
06月 ザ・プーチンズ album『ぷりぷり』(producer)
06月 READ ALOUD mini album 『無花果』(co-producer)
08月 SAKANAMON single 「花色の美少女」(producer)
09月 スピッツ album 『小さな生き物』(director)
12月 スピッツ live dvd 『放浪隼純情双六 Live 2000-2003』[reissue](director)

前半にリリースが密集していて、後半はスカスカですな。

2012年の12月から2013年6月まで、断続的に続いていた
スピッツ『小さな生き物』のレコーディングが終わると、
その後のスケジュールが全く入っていなくて呆然とした。

独立してから一度も営業活動をしてこなかったのだが、
これはまずい、と自分の資料を作り、
久々の人、改めましての人、初めましての人、に会った。
7月から9月にかけて。

それが実際の仕事に繋がるかどうかは置いておいて、
人と会って話すのは楽しいなあ、と素直に思った。
音楽制作の現場だけの狭い世界だけで生きていても
広がりがないということを(当たり前なんだけど)
改めて感じた年だった。

あと、2012年は年間6アーティストと関わったが、2013年は7アーティスト。
最高記録かもしれない。


その弐:2013年に購入した音楽

洋楽:909アイテム
邦楽:191アイテム

2012年、洋楽の購入がまた1000を超えたので、
2013年前半は購入を控えていた。
その結果、なんとか3桁で収まった。
邦楽は2012年とほぼ同じくらいの数。
これに加えて50枚くらいのサンプル盤を聴いた。

所持しているCDやシングルやLPの総数が
数えられなくなってもう10年くらい経つ。
恐らく3万枚には届いていないと思うのだが、
そろそろ断捨離しても良いのではないか、
と考えるようになった。
が、処分したら負けだ、というようなよくわからない
意地のようなものもあり、この1年ずっと迷っている。

とりあえず2014年中に、書籍、雑誌関連の断捨離は決行する。


その参:2013年行ったライヴ、イヴェント数とアーティスト数

ライヴ・イヴェント:221
アーティスト数(のべ):669

これは2012年とそんなに変わらない数字。
さすがに3時間以上立ちっ放しのイヴェントとか
キツくなっては来ているが、新しい面白い才能に
出会える喜びを考えると、苦にはならない、かな。

それよりもライヴハウスでのタバコが大嫌い。
禁煙して5年。もはや立派な嫌煙派となった。
ライヴのフロアは全面禁煙にすべきでしょ。

その肆:2013年に観た映画(映画館で観たもの)

2013年に映画館で観た映画の総本数は、199本
昨年より大幅に増えた。
今年の夏以降結構暇になったというのが大きな理由だな。
なお、199本の他に、HuluやDVDで観た映画は50本程度。

以下、2013年竹内的良かった映画20選(鑑賞順)。

『ジャンゴ 繋がれざる者』
『愛・アムール』
『クラウド・アトラス』
『偽りなき者』
『シュガーマン 奇跡に愛された男』
『ホーリー・モーターズ』
『恋の渦』
『横道世之介』
『きっと、うまくいく』
『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ / 宿命』
『地獄でなぜ悪い』
『ウィ・アー・ザ・ベスト!』
『父の秘密』
『ジ・エクストリーム・スキヤキ』
『ザ・コール』
『おじいちゃんの里帰り』
『セッションズ』
『鑑定人と顔のない依頼人』
『サブマリン』
『消えたシモン・ヴェルネール』

邦画では『恋の渦』と『横道世之介』が特に突出。
洋画では『きっと、うまくいく』が一等賞。

番外として、
『天国の門』(デジタル修復完全版)
3時間以上スクリーンに釘付けにされた。
怨念のようなものさえ感じ、圧倒された。

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以上、2013年の年間リポート。
2014年も既に凄く面白い音楽や映画に出会えている。
ちなみに、2012年の年間リポートはこちら

昨年12月に満50歳となり、以前Twitterで
"50になったらメタル聴く" と宣言したんで、
少しは聴いてみようかと思うのだけど、
なんかまだ食指が動かない。




2014年2月4日火曜日

wilsonic works 37


2月5日は、SAKANAMONの2ndフルアルバム『INSUROCK』の発売日。
2012年12月発売のファースト『na』に引き続きプロデュース参加した。

今回僕が参加したのは、収録された全12曲のうち、8曲。
竹内の単独プロデュースもあるし、メンバーとの共同プロデュースもある。
「TOWER」という曲は、基本的にメンバーがセルフ・プロデュース
で進めていたものに、ヴォーカル・ディレクションだけ僕がやった、
という珍しい関わり方。
でも嬉しかったなー。
僕、歌のディレクション、セレクト、大好きなんですよ。
歌録りだけ呼ばれるの大歓迎っす。

その「TOWER」も含め、『INSUROCK』にはSAKANAMONの
セルフ・プロデュース曲が5曲収録されている。
それらの曲がまた、ことごとく面白い。
僕の手が入っていないからこその、メンバーの持つオリジナリティが
しっかりと活かされているアレンジ、サウンド。
彼らの独自の構成力、リズム解釈が遺憾なく発揮されている。
「エレクトリカルマーチ」とか「爆弾魔のアクション 〜願い〜」とか、
初めて聴いたとき、ほとほと感心してしまった。

自分がプロデュースで関わったアーティストがセルフ・プロデュース
するのって、少し寂しくもあるけど、僕と一緒に作業した経験が
彼らの血となり肉となって、逞しい音楽家になってくれているのなら、
それはそれでこんなに嬉しいことはない。

もう2年以上前のこと。
SAKANAMONと僕が最初期に仕事した「カタハマリズム」という曲がある。
これは、僕がこの曲の "はみ出している" 部分や、"音楽理論的に怪しいところ"
を整理した結果、SAKANAMONの曲としては結構普通の構成になり、
いわゆる "型にはまった" タイプの曲になったことがタイトル由来のひとつ。

それが彼らのオリジナリティを損なう結果になっていたら
プロデュースとしては本末転倒なのだが、
僕自身はこのときの仕事に非常に意義を感じているし、
この曲が元々持っていた魅力を更に引き出せたと自負している。

そして僕はこのとき、なぜこの曲を "型にはめた" のか?

型破りな天才でも努力型の秀才でも、その魅力を伝えるには、
基本的な常識や定石を知っているべき、というのが持論で。

せっかく素晴らしい素質を持っているのにうまく伝わらないのは、
伝えるための方法を知らないからなのではないか?
僕のプロデュースは、そこの確認からスタートする。

曲のモチーフ、詞と曲のマッチング、言葉の載せ方のいろは。
音韻とアクセント、メロディの上下とイントネーション、
効果的な構成、時間の流れに沿うアレンジと演奏などなど。

まずはこれら音楽をつくるときの "常識的なあり方" を
知った上で、それを崩したり捻ったり、わざと逆を行ったり、
という行為が "オリジナリティ" なのだと思っている。

SAKANAMONのヴォーカルにして作詞作曲を手がける
ネイチャーこと藤森元生のデモテープは、いつも新鮮なアイディアに
満ちあふれていて、その時点で圧倒的なオリジナリティを放っている。
彼はいつも "他とは違う何か" を求めて作品作りをしているから。
ただ、時としてその意気込みが先行し過ぎ、せっかくの
ユニークなアイディアが、伝わりにくい形になる場合があった。

そこで「カタハマリズム」のとき、僕が考える "より伝わる形" を
メンバーと共有してみた、というわけだ。
ここでの経験や、「花色の美少女」でのタイアップ曲を作る体験などが、
その後の彼らのオリジナリティの純度アップに貢献したであろうことは
想像に難くない。

それらを経ての、今回のセルフ・プロデュース楽曲の充実度。
確実にステップアップし、自信を持ったバンドの姿がここにある。

僕はこれからのSAKANAMONの活躍が本当に楽しみでしょうがないのです。

それにしても「ミイとユウ」とか、どうやったらあんな曲を
思いつくんだろう、と。
録り終わってみて、その構造的斬新さに改めて驚いたほど。
あ、デュエットの平賀さち枝さんも最高にキュートです。

このブログを読んで、少しでも気になった方は、
是非とも一度聴いてみてください、『INSUROCK』。
収録曲「TOWER」のMVはこちら

本日2月4日はフラゲ日。
僕もこれからタワーレコード渋谷店で買う予定。
行ってきます。