2013年4月19日金曜日

wilsonic works 31



今週4月17日に発売された、SAKANAMON
メジャー初シングル、「シグナルマン」
僕がプロデュースした表題曲が大阪のラジオ局、
FM802ヘビーローテーションに選ばれた。

僕が関わった曲で同局のヘビーローテーションに
選ばれたのは、これで5曲目。
制作マン人生24年で5曲が多いのか少ないのか
わからないけど、全国FMで「イチオシ」とか
「パワープッシュ」とかいろんな呼び名で同様の
システムがあるわけだが、FM802のこれは、
自分にとって特別だ。

何せ、最初に選ばれたのが1991年4月、スピッツ
「ニノウデの世界」という曲。

大阪の宣伝担当の方もディレクターである僕も、大いに戸惑った。
だって、シングルは「ヒバリのこころ」であって、
「ニノウデの世界」はアルバム収録曲。
「選んでもらえたんは嬉しいけど、なんでこの曲やねん!」って感じ。

レコード会社やアーティスト・サイドの思惑など関係なく、
自分たちが良いと思った曲をプッシュする、
というFM802の頑なな姿勢。
その洗礼をいきなり浴びたことになる。

戸惑ったけど、嬉しくもあった。
だって、アルバムをしっかり聴いてくれて
曲をピックアップし、並みいる強力新譜の中から
スピッツを選んでくれたんだから。

そういったわけで、FM802のヘビーローテーションは、
僕にとって特別で、選ばれることは非常に誇らしいこと、
となった。


その次は1993年。
同じくスピッツの6枚目のシングル「裸のままで」。
同一アーティストが2回ヘビーローテーションに選ばれる、
という例はFM802史上数例だけとのこと。

ホーン・セクションまで入った派手なアレンジに、
ファンやそれまで応援してくれていたメディアなどから
賛否両論の「裸のままで」だったが、FM802からの
"お墨付き" は大いに励みとなった。

3曲目は2003年2月度、ゲントウキの1stシングル「鈍色の季節」。
僕の思惑では2ndシングル「素敵な、あの人。」で
全国のパワープレイを席巻するつもりだったのだが、
やはりこちらの思い通りにはさせてくれない802(笑)。

一聴しただけでは地味なスロー・バラードである「鈍色の季節」。
実はそういう曲こそヘビーローテーション映えする、
ということなのだろう。
10年経った今でも、寒い季節などに時折オンエアしていただいているようだ。

こういう、かつてプッシュした楽曲やアーティストを、
ずっと応援してくれる姿勢もFM802の素晴らしいところ。


その次は僕は直接のディレクターではなかったが、
レーベル・プロデューサーとして関わったbonobos
3rdシングル「あの言葉、あの光」。2004年8月度。

ゲントウキ、bonobos共に関西で活動をスタートしたバンド。
それだけにメンバーはヘビーローテーションが決まったとき、
それはそれは嬉しそうだった。

FM802としても関西発のアーティストをプッシュしたい、
という思いがあったことは確かだろう。

2バンドとも、現在は東京を活動拠点とし、メンバーにも
変化があったが、共に今年デビュー10周年。
おめでとう。これからも素敵な活動を!

これまでの4曲はこんな経緯。
1曲目と2曲目は "メーカー・ディレクター" 時代、
3曲目と4曲目は "レーベル・プロデューサー" 時代、
ということになる。

そして今年2013年4月度、"インディペンデント・プロデューサー"
となって初めてFM802のヘビーローテーションに選ばれた、
SAKANAMONの「シグナルマン」。
独立して4年目にして、ようやく。
記念すべき出来事なんですよ僕にとってこれは。

この曲をシングルとしてレコーディングするに至るまで、
実はいろんな面白いことがあったんだけど、それは
メンバーがインタヴュー等で少しずつ語っていくのでは
ないかと思うので、ここでは割愛。

最終的には実に堂々とした楽曲に仕上がって、
メジャーから最初にリリースする「シングル」として、
どこに出しても恥ずかしくないものになったと思う。
チャートどんどん駆け上ってほしいなあ。

あと、彼らのヴィジュアル周りは僕は全然関わっていないけど、
毎回ジャケットやMV、とても良いね。
いつも感心しています。
最近はメンバーの表情もとてもシャープになってきて。
でも、やっぱMCとかはズッコケで天然で。
それがいいバランス。
ということで「シグナルマン」のMVはこちらから。

通常盤はスタジオ録音3曲+ライヴ1曲の4トラック入りCD。
(内、表題曲と「真夜中の大岡山にて」の2曲を竹内がプロデュース)
初回限定盤はそのCDに加え、初ワンマンから7曲のライヴ映像と
オマケが入ったDVDが付いてます。

あ、明日20日(土)と21日(日)は、新宿と梅田で
SAKANAMONのインストア・ライヴがあります。
アコースティック編成はレアなので、ぜひこの機会に。

20日は15時から、タワーレコード新宿店7F特設ステージ(バンド編成)、
21日は17時から、タワーレコード梅田NU茶屋町店(こちらは藤森ソロ弾き語り)。
5月11日の渋谷タワーもあるので、詳細はこちらを。

p.s.
FM802のヘビーローテーションの歴史すべてがわかるのが、
オフィシャルサイトのこちら。お時間あったらぜひ。
1989年から、毎月どんな曲を選んできたのかがわかります。
「さすが!」とか「意外!」とか、「どんな曲だったっけ?」
とか、いろいろ面白いっすよ。

2013年4月12日金曜日

wilsonic works 30


4月10日、LOST IN TIMEのCD2枚組となるニュー・アルバム
『(   )トラスト オーバー サーティー』がリリースされた。

『明日が聞こえる』『ロスト アンド ファウンド』に続いて
作品作りに関わらせてもらったが、今回の関わり方は
今までとは少し違う。

スケジュールがなかなか合わないということもあり、
僕がスタジオでレコーディングに立ち会ったのは、
スタジオ録音5曲のうち「OVER」と「最後の頁」の2曲のみ。
他の3曲はメンバーとエンジニアの鳥羽修さんが作り上げた。

ただ、スタジオに立ち会うかどうか、ということは
僕の仕事に不可欠なことではない。
去年のカルマセーキのレコーディング体験と今回の
LOST IN TIMEの音作りの過程を経て確信を持った。

バンドに力があり、事前にしっかりと準備さえしておけば、
必ずしもレコーディングに立ち会わなくても良い作品が
出来る、と。

もちろん、可能であれば全てに立ち会って、リアルタイムに
考え方を共有するに越したことはないだろう。
でも、常にそこには共依存の関係になる可能性が潜んでいる。
関係が長くなればなるほど、その危険性は高くなる。

安心感だけを求め、お互いに依存する関係に未来は無い。
常に適度の緊張感と新鮮な感覚を持ち続けられれば良いのだが。
この話はアーティストとプロデューサーだけではなく、
いろんな関係に当てはまるけど、深すぎるのでこのへんで。

さてさてLOST IN TIMEとの今回の作業。
とっかかりは昨年秋あたり。
海北くんとの雑談のようなミーティングから。
そのときの僕の発言が海北くんの何かを刺激したらしく、
そこから今回のアルバムの構想が漠然と進み始めた。

11月に入ると、週に1回くらいメンバーと会い、
出来た曲のチェックやアレンジ、歌詞を詰める作業。
毎回いくつかの宿題や課題を出しては翌週に突き合わせる、
というような感じ。
この作業の途中で、アルバム・タイトルの元となるアイディアが
飛び交った痕跡が僕の手帖に残っている。

12月には前述の2曲のレコーディング。
年明け、1月に残り3曲の詰めミーティングを数回行い、
2月にメンバーと鳥羽さんでレコーディングを進める。

全曲、TDはファイルを送ってもらうだけにして、
チェック&フィニッシュはメンバーに任せた。
だって、基本鳥羽さんの音に間違いはないですからね。
今までのアルバムでも、TDに文句云ったことないもん。

マスタリングはPEACE MUSICの中村宗一郎さん。
僕はお会いしたことがなかったのでここはぜひとも
立ち会いたかったんだけど、スケジュール合わずで
残念無念。

今回のアルバムはスタジオ録音5曲のCDと、
ライヴ録音8曲が収められたCD、という2枚組。
それで1575円って、どんだけお値打ちなの。

で、このライヴ・テイクがまた素晴らしくて。
今年1月の新代田FEVERでのライヴなんだけど、
声の伸びが半端ない。
このライヴ、見逃してるんだよなー。
これまた残念無念。

そんな経緯もあって、出来上がった作品を今までの2作と比べると
やや客観的に見ることが出来るような気がする。

なんていうか、歌詞がよりリアルな海北くんに近づいたような。
それは、初めて他人からの提供曲を歌ったってことも
実は大きく作用していると思うんだな(収録曲「雨が降る夜」は、
盟友つばきの一色徳保さんからの提供曲)。

そしてLOST IN TIMEというバンド内力学がより理想的に
なってきたような。

そのへんのヒント、海北くんによるセルフ・ライナー
いろいろ散りばめられていますのでお時間ありましたら
ご一読のほどを。

あと、ミュージシャン仲間を始め、評判の高い「30」の
MVはこちら

p.s. この、LOST IN TIMEのアルバムは、タイトルも含め
"30代" をテーマにしているんだけど、ホントに偶然。
このエントリのタイトルを見てくださいよ。
僕がフリーランスとなり、wilsonic名義で仕事をしてから、
このアルバムがちょうど30作目。
単なる偶然だけど、面白いね。