2016年4月27日水曜日

wilsonic works 62


本日4月27日は、スピッツの41作目(ダウンロード・シングルを含む)の
シングル、「みなと」の発売日。
フィジカルのシングルとしては2013年の「さらさら」以来約3年振り。

先週22日、テレビ朝日の「ミュージックステーション」に、
これまた3年振りに出演し同曲を披露した。
マサムネまさかのいきなり歌い出し間違えるというハプニングに、
スタッフ一同一瞬真っ青になるも、さすがに30年近く一緒に
やっているメンバー同士、阿吽の呼吸で立て直す。
結果的にはスピッツのTVパフォーマンス史上、かなりの上位に入る
出来だったのではないだろうか?

そしてこの日のもうひとつのトピック。
口笛とタンバリンでサポートに入ってもらった、スカートの澤部渡くん。

本人のツイッター(そして僕も含むリツイート)ぐらいしか
事前情報は無かったため、本番がスタートして、
視聴者の間で「あのタンバリン男は何者?」とざわつき始め、
その日以降非常に面白い広がり方を見せている。

今日、昼間に新宿のタワーレコードに行ったところ、
スピッツのコーナーにスカートのアルバムが置いてあり、
スカートを展開しているところにスピッツの「みなと」も並べられていた。
たまたまスカートを試聴してらっしゃる方がいて、
その人の片手にスピッツの「みなと」が、という光景を見るに至って、
いやあ今回こういう流れになって、本当に良かったなあ、と思った次第。
音楽が繋がって行くきっかけって、どこに転がっているかわからない。

あ、実はタワーレコード新宿店ってすごいんですよ。
4月20日のスカート『CALL』発売時の展開で、「スピッツファンにおすすめ!」
的なバイヤーによる手書きコメントがあったの。
Mステ出演の22日より前で、スピッツとスカートを結びつける情報は
流れてなかったにも拘らず。

そして、本日アップされたナタリーの澤部くんインタヴュー
インタヴュー時はMステ情報は出せないので、一切スピッツのことは
口に出していないのに、インタヴュアーからスピッツに関する質問が
出てくるというミラクル。

なんなんでしょうね、こういう偶然なのか必然なのかわからん連関。
きっと、誰かが仕組んだり仕掛けたりしたことじゃないからだと思う。

澤部くんは、今回の一連の流れを書いたこの日記で、
レコーディング参加オファーの際、「みなと」のラフミックス音源を
聴いたことを「ご褒美」と云ってくれている。
自分が大好きなものに正直に生きて、ショートカットとか楽することを選ばず、
ひとつひとつ丁寧に対処していくことは大切だなーと、改めて思う。
そういうの、必ず報われるから。
それが、ご褒美。


本日アップされた「みなと」のMVフルはこちら
ここ数年、スピッツの映像周り全般を手がけている北山大介監督、
今回も実に独創的でいて、曲に寄り添ったムーヴィーに仕上げてくれました。

ちなみに、今までに無いインパクトの今回のジャケット
アート・ディレクションはいつものCENTRAL67木村豊。
写真素材は『音楽喜劇 ほろよひ人生』という、1933年(昭和8年)の
日本のミュージカル映画のスティル。
マサムネが戦前の日本映画のスティルをいろいろ探してきて、
中でもいちばん使いたい写真がこれだった。
ちょっと見ただけでは時代も国籍も判然としない、趣深い写真だ。

僕はこの映画のことを全く知らなかったのだが、
この写真をジャケットに使用することが決定してすぐに、
読んでいる本の中にこの映画に関する記述を見つけ、その偶然に驚いた。
その本は、『大瀧詠一 Writing & Talking』という、
大瀧詠一さんが生前に残した文章や会話などが網羅されている一冊。
昨年春に出版されたこの分厚い本を僕は、読み終えたくないから
毎日少しづつ少しづつ、チビチビと読んでいる。
そんなスピードで読んでいて、たまたま今回のタイミングで
『ほろよひ人生』を共通項としてスピッツと大瀧さんが僕の中で繋がる。

すごくビックリして、その次にとても嬉しかった。
“自分勝手な偶然” に喜びを見出す。

これもまたご褒美、だったのかもしれない。

2016年4月24日日曜日

wilsonic works 61


モノブライト、2年半振りのオリジナル・アルバム、『Bright Ground Music』
4月20日に発売された。昨年ドラマーが抜け、3人体制となってから初めてのアルバム。
僕は共同プロデューサー、ディレクターとしてアルバム全体に関わった。

2007年のメジャー・デビュー以来、エンターテイナー精神溢れる
ステージング、独自の言語感覚を駆使する歌詞、変幻自在なメロディで
確固たるポジションを築き、熱狂的なファンを獲得してきた彼ら。
今回僕が参加するにあたり、これまで培ってきた彼らのやり方を尊重し、
その上で新しいことが出来たら、と思って進めてきた。

まず何よりも今までと違うのは、ドラマーがいない、ということだ。
ドラマー、誰がいいだろう?
モノブライトのデモテープを聴きながらあーだこーだと考えていると、
彼らの曲、跳ねないスクエアなエイトビートが多いことに気づく。
そこでひらめいた僕は、あるとき頭に浮かんだドラマーの名前をメンバーに告げると、

「え、藤井寿光さんって、元ANATAKIKOUのですか?」

と、旧知の仲であり、しかもメンバーが大好きなドラマーだということが判明。

「藤井さんに叩いてもらえたら最高です」

とのことで、その場で藤井くんに電話して、ドラムの依頼をして快諾を得た。

この経緯だけで今回のレコーディング・プロジェクトは良いものになる、
という予感ひしひし。

ま、考えてみればANATAKIKOUもモノブライトもXTC大好きバンド、
交流があって当然なのだった。

その次に、アレンジャー。
大半の曲はメンバーでプリプロしてアレンジがほぼ固まっていたが、
数曲は白紙状態。
ここ数作はメンバーのセルフ・プロデュースで進めてきたので、
アレンジャーと作業することがなかったモノブライトに、
これらの曲で新鮮なアイディアをもらうのもありなんじゃないか、
ということで推薦したのが、
SSWでもあるマルチ・ミュージシャン、橋口靖正

彼には3曲でメンバーと共同アレンジ、管と弦のアレンジを1曲ずつ、
鍵盤やタンバリンなど、やれることはなんでもやってもらった。
モノブライトの音楽の引き出しを増やしてもらうことが出来たけど、
彼が現場に来ると笑いがいつもの3倍くらいになるのがいいね。

実は、橋口くんとは数年前から知り合いではあったし、ライヴを
拝見したりはしていたが、レコーディングでご一緒するのは今回が初。
藤井寿光とは、ドラムテックとして仕事したことはあるが、
ドラマーとしては今回が初。
モノブライトのおかげで、機会があったら一緒にやりたい人たちと仕事が出来て、
俺得な現場でもあったわけ。

エンジニアは、僕もモノブライトも共通して信頼している三上義英さん。
彼が最終的にミックスしてくれる、という安心感が、レコーディングに
おいてリラックスできる材料になっていたことは確か。

結果、これまでのモノブライト成分は確実に残しつつ、
今まであまりクローズアップされていなかった側面が垣間みられる
アルバムになったのではないだろうか。

とかちょっと当たり障りない物言いっぽいけど、
僕、このアルバム大好きなんですよ。
自分が関わっていながら(いや、いるからこそ)、すげー好き。
モノブライトというキャリアがあるバンドの、30代バンドマンの、
パーソナルな魅力が迸っていると思う。
それは歌詞やヴォーカルだけではなく、ベースやギターの演奏にも。
あなただけにしか鳴らせない音が鳴っているよ。
あとね、ヴォーカルの質感が各曲それぞれで本当にいいよ。ほんとだよ。

そして曲順。
普段は曲順番長で、いろいろ注文をつける竹内だけど、
今回はオレ以上の集中力で曲順を考えてきた桃野くんの提案を100%採用している。
何の文句も無い。
素晴らしい曲順だと思う。
ぜひ、1曲目から通して聴いてほしい。

このアルバムのためのミーティングを始めて間もなくに持った、
このレコーディングがとても良いものになるという予感が、
一回も消えることなく段々と確信に変わっていった。
充実した日々だったなー。
マスタリング、終わりたくなかったもんなー。

って思うくらいに良いアルバムです。
これまでモノブライトを好きだった人も、知らなかったっていう人も、
ぜひぜひチェックのほどを。

ミュージック・ヴィデオも充実。
まるで音のダイヤモンドダストやぁ、というくらいキラキラの「冬、今日、タワー」
ひたすら歌の説得力に感服する「ビューティフルモーニング (Wake Up!)」、
恐いくらいに言葉が刺さってくる「こころ」
モノブライト、カタカナ表記になってから、ちとヤバいっす。

2016年2月20日土曜日

wilsonic works 60


52年生きてきて、人生で初めて書籍に解説を寄せるという仕事をした。
2月20日発売のポール・クォリントンによる小説『ホエール・ミュージック』
これ、ビーチ・ボーイズブライアン・ウィルソンのファンにはつとに知られた小説で、
永らく邦訳が望まれていたが、遂に発売に漕ぎ着けた。
主人公のキャラクターが、ある時期のブライアン・ウィルソンにそっくりで、
未完成のアルバムに取り組み続けているという、『SMiLE』を彷彿させる
設定で物語が進んで行く。

主人公を取り巻くバンドのメンバーや登場人物も、もしかしたら
これ、あの人がモデルかな、とか、あの出来事のパロディかな、
と、ビーチ・ボーイズを知っている人をニヤリとさせる場面が
そこかしこに散りばめられている。

そういった、『ホエール・ミュージック』登場人物やエピソードの、
ビーチ・ボーイズとの共通点や相違点の検証などを中心に、解説を
書かせていただいた、というわけだ。

2014年暮れの、ビーチ・ボーイズのアルバム2枚の解説の仕事に続き、
ビーチ・ボーイズを好きだ好きだと言い続けていると、
こんな嬉しいオファーが舞い込んでくることもあるのだなあ、という夢のようなお話。
邦訳が読めるだけでありがたいのに、光栄です、ほんとに。

しかも、訳者は音楽関連書籍の翻訳に定評のある奥田佑士さん、
表紙の装画は本秀康さん、デザインはサリー久保田さんと、
全員信頼出来る音楽アディクトたち。
これで面白いモノにならないわけがない!という環境だった。

実際この小説は、滅法面白い。
著者ポール・クォリントンは、作家であると同時に音楽家でもあり、
自身のバンド、ソロなどいろんな形で音楽を残している。
それゆえ、音楽的知識、ロック史への造詣が深く、
挿入されるエピソードがいちいちリアリティありまくり。
音楽好きな人なら、グイグイ引き込まれるはずだ。
(ビーチ・ボーイズの)史実にしっかり則っているところもあるが、
見てきたような嘘っぱちのエピソードもたくさん仕込まれているのが痛快。

そんなこんなで、この小説を読み解き、ビーチ・ボーイズの
結成から現在までをいろんな資料に当たって再確認するなど、
年明け1月はこの原稿にかかりきりだった。
いろいろ忘れていたことをリマインド出来て良かった。
結果、書きたいことがどんどん増えて、トータル1万字弱という
書籍の解説としては異例なくらいのヴォリュームとなった。
読み応え、あると思います。

ちなみに『ホエール・ミュージック』は小説発表の2年後の1994年に、
本国カナダで映画化されている。挿入曲「クレア」の映像でわかるように、
主人公デズモンドの造形は完璧に1970年代後半のブライアン・ウィルソンだ。
小説の邦訳に続き、この映画も日本でDVD化してくれたら最高なんだけどな。

憶測ですが、『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』のスタッフは、
映画『ホエール・ミュージック』、絶対にチェックしてますね。

『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』のBlu-rayとDVDが
発売された直後に『ホエール・ミュージック』が読める幸せ。

『ホエール・ミュージック』を読んでから、マイク・ラヴ率いる
ビーチ・ボーイズ、ブライアン・ウィルソン・バンド、それぞれ3月、4月に
来日公演を観られる幸せな2016年。

そして今年10月には、待望の自叙伝『I am Brian Wilson』が出版される。
邦訳が出るのかどうかわからないけど、とりあえず英語版出たら買う。
Kindle版も買って、辞書機能駆使して読む。
それまでは何がなんでも生き延びるよ。
人生には目標が必要なのだ。

2016年2月5日金曜日

wilsonic works 59


2月3日にリリースされた、さかいゆうのアルバム『4YU』
シングル「ジャスミン」に続いて、ディレクターとして参加した。
アルバムの全曲試聴はこちら

アルバムの方向性や曲選びなどが始まった時点から約1年間、
スタジオ作業がスタートしてから9ヶ月に亘る制作期間だった。

これまで、基本的にセルフ・プロデュースで3枚のアルバムを
作ってきたさかいくんだが、今回はまずそれにこだわらない、
というところからアルバムの構想を一緒に考え始めた。

その結果、蔦谷好位置石崎 光mabanuaAvec Avecといった
サウンド・クリエイター、作詞に渡辺シュンスケ西寺郷太森雪之丞
といった面々が名を連ねる、実に興味深いアルバムに仕上がった。
ある意味、バラバラだし、一貫性は無いかもしれない。
1曲毎にジャンルが違うんじゃないか、とも思える雑食性。

しかし、作曲と歌唱がさかいゆうであることと、アルバム全曲
(既発EP曲「サマー・アゲイン」を除く)のミックスを
molmolこと佐藤宏明が手がけることによる統一感があることも確か。

しかしこのレコーディングはいろんな意味で勉強になった。
彼が所属するオフィス オーガスタという、多くの個性的な
アーティストとたくさんのヒット曲を持つマネージメント&
制作会社の文化に触れることが出来たのがまず大きい。
ヒットに賭ける思いと、アーティスティックであることのバランスとか。

そして、さかいくんという天賦の才を持つ全身音楽家とのやりとり。
日本の音楽界の現状分析、曲に対して選ぶミュージシャンの的確さなど、
自身の歌やプレイ以外でも舌を巻く場面満載ですよ。

レコーディングを通じて様々な凄腕ミュージシャンのプレイを観て、
聴くことが出来たのも財産だなあ。
ドラマーだけでも、あらきゆうこ石若 駿岡野 'Tiger' 諭
玉田豊夢、mabanua、松永俊弥屋敷豪太ってもう!

曲によってはリズム録りからTDまで半年かかった曲もあるなど、
その曲にとって必然となる形を追求し、時間をかけて丁寧に、
でも決して考え過ぎずに(これ重要)作られた『4YU』。
奇跡的な演奏、信じられないくらい良い音のミックスなど、
注目してほしいところはたくさんあるのだが、なによりもやはり
さかいゆうの歌声、これに尽きる。
張りのあるハイトーンから、囁くようなシルキー・ヴォイスまで、
様々な表情を見せるミラクルな声。

コーラス・ワークもすごいよ。
「トウキョーSOUL」の間奏の複雑且つニュアンスに富むコーラスを、
あれよあれよという間に録っていくさまには、口あんぐり。
頭の中に鳴っている、もう出来上がっているものを形にして行く、
ということなんだなあと感心した次第。

というわけで、久々に男性ソロ・シンガーのアルバムを1枚まるごとご一緒した。
最近あまり使っていなかった筋肉を動かした、ような体験だった。

筋肉といえば。
さかいくんのライヴを観ると、彼の音楽的な才能が身体能力と
リンクしていることがよーくわかる。
平気な顔してすごいことやってる。
あれは一度、体験しておいて損は無いと思う。
ツアー、6月〜7月にあります。

p.s.
参考までに。
シングル「ジャスミン」のときのブログはこちら


2016年1月30日土曜日

wilsonic works 58


まさか自分が初恋の嵐の新作に関わることになるとは思わなかった。

1月27日に、初恋の嵐のアルバム『セカンド』が発売された。
その名の通り、彼らにとってのセカンド・アルバム。
前作『初恋に捧ぐ』からなんと13年という月日が経っている。
誰も彼らのニュー・アルバムが聴けるとは思っていなかっただろう。
僕もそんなこと、夢にも思わなかった。
いろんな意味で奇跡的な出来事だと思う。

2001年秋、僕はドリーミュージック内に“Teenage Symphony”という
レーベルを作り、最初にリリースするコンピレイション盤の構想を練っていた。
ライヴ・ハウス・シーン、インディ・シーンで蠢きつつある、
グッド・メロディを奏でるバンドを集めたコンピだ。
収録するアーティストの候補で挙がってきたのが、初恋の嵐。
当時僕の部下だったDくんからの紹介だった。

その時点で既にマネージメントやメジャーからのデビューが決まっていて、
それがまた僕の知り合いばかりで、ということもあり、
ほどなくしてバンドとも親しくなった。
コンピ参加候補曲として「涙の旅路」のデモをもらい、
あまりに良い曲なので嬉しいやら悔しいやら複雑な感情を持ったことを覚えている。
コンピにこの曲が入るのは嬉しいんだけど、他社のアーティストだから
制作とかに関われない、という悔しさ、みたいな感じ。
僕は「涙の旅路」をコンピの1曲目にした。

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その後のことをいろいろ思い出しながら書いてみたのだが、
めっちゃ長くなりそうなのと、ちょっとセンチメンタルになりすぎたので、書き直す。

2002年3月に西山達郎くんの急逝により、活動休止を余儀なくされた
初恋の嵐は、2011年にライヴ活動を再開する。
僕もスケジュールの合うときはなるべく観に行くようにしていた。
2012年にスピッツがカヴァー曲等を集めたコンピ盤『おるたな』
リリースするに際して、初恋の嵐の「初恋に捧ぐ」を新録音カヴァーした。
これは特に僕が何かをしたわけではなく、スピッツとして純粋に
この曲をカヴァーしたいということで挙がってきた楽曲。

そんなこともあり、2015年、僕が企画したスピッツ『ハチミツ』の発売20周年アルバム
『JUST LIKE HONEY 〜『ハチミツ』20th Anniversary Tribute』
初恋の嵐にも参加してもらいたいと思い、声をかけた。
以前、初恋の嵐 with Friendsで観た曽我部恵一さんの印象がとても鮮やかで、
多分「君と暮らせたら」だと相当いい形になるんじゃないか、と思った。
その通りになった。

『JUST LIKE HONEY』参加オファーに、初恋の嵐として快諾いただいた後、
逆に初恋の嵐から僕に相談されたのが、今回の『セカンド』の草案だった。

未だ正規に発表されていない西山くんの楽曲をレコーディングする。
しかも、極力生前に残された西山くんのヴォーカルやギターを使う。
当初は5〜6曲程度のミニ・アルバムという構想だった。
そのアイディアを有意義に思った僕は、レコード・メーカーとの
交渉と調整を引き受け、実現に向けて動き始めた。
話はとんとん進み、数週間後には企画にGoが出て、
僕はディレクターとして制作に関わることになった。

そこからいくつもの(本当に)奇跡的な出来事があり、ミニ・アルバムの
予定だった企画アルバムは、全10曲入りの『セカンド』となった。

隅倉弘至、鈴木正敏、木暮晋也、玉川裕高、石垣 窓、高野勲、朝倉真司。
ゲスト・ヴォーカルで参加してくれたフジファブリック山内総一郎、
スクービードゥーのコヤマシュウ、そして堂島孝平
エンジニアの池内 亮(敬称略)。
参加いただいた皆さんの素晴らしい演奏や歌唱、初恋の嵐への思いが、
アルバム『セカンド』をこのような形にした。

2002年の時点で時が止まっていた音源、素材でしかなかったものに
生命を吹き込み、タイムレスな作品として2016年に「誕生」した音たち。

幸いなことに、初恋の嵐をこれまで愛してくれた人たちにも、
今回の『セカンド』は好評と聞く。
都内CDショップでの大々的な展開を見て、ちょっと胸が熱くなった。
初恋の嵐は、忘れられるどころかどんどんリスナーを増やしている。

今回『セカンド』を知って、初恋の嵐を気に入ったら、
ぜひともファースト『初恋に捧ぐ』など、
これまでリリースされてきた初恋の嵐の名曲群に触れてほしい。

本当に残念なんだけど、集めようと思ったらすぐに全曲集められる。
そして、全ての曲に聴くべき価値を見出すことが出来る。
西山くんが書く曲は、一見とてもとっつきやすいんだけど、
皮肉や悪口やスケベな思いなど、毒ある仕掛け(本音?)がそこここに潜んでいる。
それが人間という生き物のリアルな感情や行動を浮き彫りにする。

『セカンド』収録の多くの曲は、西山くんが20歳くらいの頃に書いたものだ。
カントリー・ロック的な曲、ヘヴィなサイケデリック・チューン、16ビートで
メイジャーセブンス・コードをかき鳴らす曲など、ヴァリエイションも様々。
全曲少しずつ聴けるティーザー映像はこちら

早熟にして早逝のソングライター、西山達郎の作品は、『セカンド』のリリースで
ほぼ世の中に発表することが出来たことになる。
これを機会に、もっともっと多くの人に、初恋の嵐を知ってほしいと思う。
そして、こんな奇跡的な出来事に巻き込んでもらって、大変感謝している。
隅倉くん、鈴木まーくん、ありがとう。

13年越しで、嬉しいやら悔しいやら複雑な思いに、ケリがついた。

2016年1月25日月曜日

wilsonic works 57


1月20日にリリースされたザ・ペンフレンドクラブの3rdアルバム、
『Season Of The Pen Friend Club』に解説を書いた。
CDのライナーノーツは、一昨年末にビーチ・ボーイズのリイシューの
ときに、2枚のアルバムを担当して以来。
毎度毎度、アルバムに解説文を書くのは非常に緊張する。

ましてや、今回は再発盤ではなく、現役バリバリのバンドの新作。
文献等があるわけではないので、自分の知識を総動員するしかない。
僕の拙い文章が、ちゃんと解説として成り立っているのか甚だ疑問だが、
リーダーの平川雄一さんには喜んでいただけたみたいなので、
とりあえず第一段階はクリアしたのではないか、と。

ザ・ペンフレンドクラブを初めて知ったのは、とあるネットのニュース。
2014年の初頭に2nd EP『Four By The Pen Friend Club』のリリースを知り、
ディスクユニオンに行って、1st EP『Three By The Pen Friend Club』
も一緒に購入した。カヴァー曲の選び方、オリジナル曲のクオリティの高さに驚く。
僕と同様相当なビーチ・ボーイズ・ファンであることを知り、
勝手にシンパシーを覚えた。

前述の2014年末にリリースされたビーチ・ボーイズのリイシュー6枚の
ライナーを、ペンフレ平川さん、作家の越谷オサムさん、そして僕が
それぞれ2枚ずつ担当することになり、ますます勝手にシンパシーを
覚えた頃、初めてライヴも体験し、その場でようやく挨拶が出来た。

明けて2015年、BB5のライナーを書いた3人で新年会をやろう!
ということになり、新宿でビーチ・ボーイズのことばかり
5時間ぶっ続けで語り続ける会が開催された。
これが実に楽しかった。
この、実に駄目な会は映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』
公開された後に2回目が開催された。
今後も何かと動きがあり次第招集がかかりそうな気配が濃厚。
今年はマイクのビーチ・ボーイズも、ブライアン・ウィルソンも来日
するので、ちょっと活動が忙しくなるかもしれない(仕事しろ)。

というような交流の中、今回ニュー・アルバムの解説を、
というお話をいただいた。
平川さん自身が相当な音楽マニアなので、迂闊なことは書けない、
と、正直一瞬怯んだ。
でも、逆に言えばオファーを受けること自体が栄誉。喜んで引き受けた。

解説を書くに当たって、僕はカヴァー曲のオリジナル情報や周辺情報、
オリジナル曲のルーツとなっているであろうミュージシャンや曲など、
固有名詞、曲名などをなるべく多く盛り込むようにした。

僕の中高校生時代、洋楽のライナーノーツは、未知の音楽に出会わせてくれる
キーワードが満載の、魔法のテキストだった。
見たことも聞いたこともないミュージシャンの名前や、曲名などに
出くわすと、聴きたい、知りたい、という思いに駆られたものだ。
そして、そういうナヴィゲイションをしてくれる音楽評論家という
人たちを、本当に尊敬していた(今も)。

ザ・ペンフレンドクラブのアルバムを聴きながら僕の文章を読んで、
聴いたことのなかった音楽に興味を持ってくれたりしたら、
これほど嬉しいことはない。
平川さんや僕のように、駄目でズブズブの音楽ファンに
引きずり込むことが出来たら、最高だ。

ま、僕の文章はさておき。

『Season Of The Pen Friend Club』は、新しいヴォーカリスト
高野ジュンを迎えた新体制でレコーディングされた初のアルバム。
オリジナル曲とカヴァー曲それぞれ5曲ずつ、10曲の
ステレオ・ミックスとモノ・ミックスの全20トラック。
1960年代半ばのアメリカン・ポップスへの深い愛情とフェティシズムに溢れた音作り。
作品を追うごとに曲、演奏、ミックスのクオリティが上がってきているのも素晴らしい!
初の日本語オリジナル曲「街のアンサンブル」の堂々たる佇まいにも驚いた。
全曲少しずつ聴けるトレーラーはこちら。キラッキラでしょ!

今回はたまたま解説文を書かせてもらったが、
今後も引き続き、ファンとして彼らの音楽に注目していきたい。
まだまだ進化し、これからも新たな切り口を示してくれること確実だもの。

2016年1月2日土曜日

wilsonic annual report 2015


昨年1年間の自分のことをまとめてみます。

まず、本業に関して。

その壱:2015年にリリースされた、竹内が関わった作品

(括弧内は役割&肩書き)

03
 スピッツ 映画『スピッツ 横浜サンセット2013 -劇場版-(sound director)
04 スピッツ download single「雪風」(director)
05月 ウルトラタワー single 「希望の唄」(producer)
05月 ウルトラタワー mini album 『bluebell』(producer)
05 ココロオークション single「ターニングデイ | プリズム」(armchair directive)
06月 草野マサムネ「水中メガネ」(『風街であひませう』収録)(vocal direction)
07月 スピッツ Blu-ray & DVD 『JAMBOREE 3 “小さな生き物”』(director)
07月 peridots album 『PEAK』(director)
07月 sympathy mini album 『トランス状態』(co-producer, director)
09 ココロオークション album 『Relight』(5曲でarmchair directive)
(total producer)

前回のブログでも書いたが、1年中スピッツの映像周りの
チェックをしていたような気がする。
12月になんとかリリース出来た『JUST LIKE HONEY』は、本当に難産だった。
故に出来上がったときの喜びは一入。

継続して仕事の出来たウルトラタワー、peridots、ココロオークション、
内容が前作よりも更に充実した実感があったのが嬉しい。

新規のsympathy、さかいゆうが、共に高知県出身というのも面白い。
2016
年は既にスピッツ『THE GREAT JAMBOREE “FESTIVARENA” 日本武道館』
がリリースされ、この後も1月、2月、4月、6月、7月あたりまで
様々な作品の発売が続々と決まっている。
年齢も年齢だし、体調管理しっかりしないと。



その弐:2015年に購入した音楽


洋楽:479アイテム
邦楽:206アイテム

洋楽は遂に年間500枚を切った。いちばん買っていた頃の1/3。
CDよりもvinylを買う機会が増えた。邦楽も少し減少。
これくらいの枚数だと、ハズレも減るし、好きだったものを
聴き返して確認する作業も出来る。良いことずくめ。

ここ数年考えていた断捨離を遂に少しずつ決行し始めた。
音楽書籍を約800冊、CDを約3000枚処分した。
しかしこんな程度では部屋は全く片付かない。
今年はさらに進める所存。

その参:2015年行ったライヴ、イヴェント数とアーティスト数


ライヴ・イヴェント:173
アーティスト数(のべ):704
両方とも少しずつ減った。
11月〜12月はレコーディングが多く、ライヴになかなか
行けなかったのが響いている。
洋楽のライヴは少ししか観ていないが、良いものが多かった。


その肆:2015年に観た映画(映画館で観たもの)


2015
年に映画館で観た映画の総本数は、247
昨年より微減。
来年は更に減りそうな予感が今からしていてやや残念。

11月でHuluを解約した。
月に1本くらいしか観る時間が持てず、観るべき優先順位作品は
Huluにいなくて、DVDを観る時間がほしかったから。

以下、2015年竹内的良かった映画(鑑賞順)。


【洋画新作20選】

『ラブ & マーシー 終わらないメロディー』は、今までで
いちばん多くスクリーンで観た映画になった(5回)。

【邦画新作10選】


あと、今年は名画座でたくさんの旧作に触れた。
自分が初めて観て、感動した作品を以下に列挙。

【旧作初体験10選】

シネマヴェーラで上映される映画は、時間が許す限り
全て観たい、と思わせるプログラムばかり。
エルンスト・ルビッチ特集橋本忍特集、もっと観たかった。

仕事が忙しい時期だったので少ししか観られなかったの、残念。

『神々のたそがれ』でアレクセイ・ゲルマンの魔力に魅せられた。
早稲田松竹で旧作を全部観て、ユーロスペースでも復習した。
『誓いの休暇』や『炎628』など含め、ソヴィエト映画恐るべし。

戦後70年ということもあり、多くの戦争映画を観た。
世界史をもう一回ちゃんと勉強しようと思った。

今年も洋邦問わず、新作旧作の映画を楽しみたい。

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以上、2015年の年間リポート。
2014年の年間リポートはこちら