2016年1月30日土曜日

wilsonic works 58


まさか自分が初恋の嵐の新作に関わることになるとは思わなかった。

1月27日に、初恋の嵐のアルバム『セカンド』が発売された。
その名の通り、彼らにとってのセカンド・アルバム。
前作『初恋に捧ぐ』からなんと13年という月日が経っている。
誰も彼らのニュー・アルバムが聴けるとは思っていなかっただろう。
僕もそんなこと、夢にも思わなかった。
いろんな意味で奇跡的な出来事だと思う。

2001年秋、僕はドリーミュージック内に“Teenage Symphony”という
レーベルを作り、最初にリリースするコンピレイション盤の構想を練っていた。
ライヴ・ハウス・シーン、インディ・シーンで蠢きつつある、
グッド・メロディを奏でるバンドを集めたコンピだ。
収録するアーティストの候補で挙がってきたのが、初恋の嵐。
当時僕の部下だったDくんからの紹介だった。

その時点で既にマネージメントやメジャーからのデビューが決まっていて、
それがまた僕の知り合いばかりで、ということもあり、
ほどなくしてバンドとも親しくなった。
コンピ参加候補曲として「涙の旅路」のデモをもらい、
あまりに良い曲なので嬉しいやら悔しいやら複雑な感情を持ったことを覚えている。
コンピにこの曲が入るのは嬉しいんだけど、他社のアーティストだから
制作とかに関われない、という悔しさ、みたいな感じ。
僕は「涙の旅路」をコンピの1曲目にした。

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その後のことをいろいろ思い出しながら書いてみたのだが、
めっちゃ長くなりそうなのと、ちょっとセンチメンタルになりすぎたので、書き直す。

2002年3月に西山達郎くんの急逝により、活動休止を余儀なくされた
初恋の嵐は、2011年にライヴ活動を再開する。
僕もスケジュールの合うときはなるべく観に行くようにしていた。
2012年にスピッツがカヴァー曲等を集めたコンピ盤『おるたな』
リリースするに際して、初恋の嵐の「初恋に捧ぐ」を新録音カヴァーした。
これは特に僕が何かをしたわけではなく、スピッツとして純粋に
この曲をカヴァーしたいということで挙がってきた楽曲。

そんなこともあり、2015年、僕が企画したスピッツ『ハチミツ』の発売20周年アルバム
『JUST LIKE HONEY 〜『ハチミツ』20th Anniversary Tribute』
初恋の嵐にも参加してもらいたいと思い、声をかけた。
以前、初恋の嵐 with Friendsで観た曽我部恵一さんの印象がとても鮮やかで、
多分「君と暮らせたら」だと相当いい形になるんじゃないか、と思った。
その通りになった。

『JUST LIKE HONEY』参加オファーに、初恋の嵐として快諾いただいた後、
逆に初恋の嵐から僕に相談されたのが、今回の『セカンド』の草案だった。

未だ正規に発表されていない西山くんの楽曲をレコーディングする。
しかも、極力生前に残された西山くんのヴォーカルやギターを使う。
当初は5〜6曲程度のミニ・アルバムという構想だった。
そのアイディアを有意義に思った僕は、レコード・メーカーとの
交渉と調整を引き受け、実現に向けて動き始めた。
話はとんとん進み、数週間後には企画にGoが出て、
僕はディレクターとして制作に関わることになった。

そこからいくつもの(本当に)奇跡的な出来事があり、ミニ・アルバムの
予定だった企画アルバムは、全10曲入りの『セカンド』となった。

隅倉弘至、鈴木正敏、木暮晋也、玉川裕高、石垣 窓、高野勲、朝倉真司。
ゲスト・ヴォーカルで参加してくれたフジファブリック山内総一郎、
スクービードゥーのコヤマシュウ、そして堂島孝平
エンジニアの池内 亮(敬称略)。
参加いただいた皆さんの素晴らしい演奏や歌唱、初恋の嵐への思いが、
アルバム『セカンド』をこのような形にした。

2002年の時点で時が止まっていた音源、素材でしかなかったものに
生命を吹き込み、タイムレスな作品として2016年に「誕生」した音たち。

幸いなことに、初恋の嵐をこれまで愛してくれた人たちにも、
今回の『セカンド』は好評と聞く。
都内CDショップでの大々的な展開を見て、ちょっと胸が熱くなった。
初恋の嵐は、忘れられるどころかどんどんリスナーを増やしている。

今回『セカンド』を知って、初恋の嵐を気に入ったら、
ぜひともファースト『初恋に捧ぐ』など、
これまでリリースされてきた初恋の嵐の名曲群に触れてほしい。

本当に残念なんだけど、集めようと思ったらすぐに全曲集められる。
そして、全ての曲に聴くべき価値を見出すことが出来る。
西山くんが書く曲は、一見とてもとっつきやすいんだけど、
皮肉や悪口やスケベな思いなど、毒ある仕掛け(本音?)がそこここに潜んでいる。
それが人間という生き物のリアルな感情や行動を浮き彫りにする。

『セカンド』収録の多くの曲は、西山くんが20歳くらいの頃に書いたものだ。
カントリー・ロック的な曲、ヘヴィなサイケデリック・チューン、16ビートで
メイジャーセブンス・コードをかき鳴らす曲など、ヴァリエイションも様々。
全曲少しずつ聴けるティーザー映像はこちら

早熟にして早逝のソングライター、西山達郎の作品は、『セカンド』のリリースで
ほぼ世の中に発表することが出来たことになる。
これを機会に、もっともっと多くの人に、初恋の嵐を知ってほしいと思う。
そして、こんな奇跡的な出来事に巻き込んでもらって、大変感謝している。
隅倉くん、鈴木まーくん、ありがとう。

13年越しで、嬉しいやら悔しいやら複雑な思いに、ケリがついた。

2016年1月25日月曜日

wilsonic works 57


1月20日にリリースされたザ・ペンフレンドクラブの3rdアルバム、
『Season Of The Pen Friend Club』に解説を書いた。
CDのライナーノーツは、一昨年末にビーチ・ボーイズのリイシューの
ときに、2枚のアルバムを担当して以来。
毎度毎度、アルバムに解説文を書くのは非常に緊張する。

ましてや、今回は再発盤ではなく、現役バリバリのバンドの新作。
文献等があるわけではないので、自分の知識を総動員するしかない。
僕の拙い文章が、ちゃんと解説として成り立っているのか甚だ疑問だが、
リーダーの平川雄一さんには喜んでいただけたみたいなので、
とりあえず第一段階はクリアしたのではないか、と。

ザ・ペンフレンドクラブを初めて知ったのは、とあるネットのニュース。
2014年の初頭に2nd EP『Four By The Pen Friend Club』のリリースを知り、
ディスクユニオンに行って、1st EP『Three By The Pen Friend Club』
も一緒に購入した。カヴァー曲の選び方、オリジナル曲のクオリティの高さに驚く。
僕と同様相当なビーチ・ボーイズ・ファンであることを知り、
勝手にシンパシーを覚えた。

前述の2014年末にリリースされたビーチ・ボーイズのリイシュー6枚の
ライナーを、ペンフレ平川さん、作家の越谷オサムさん、そして僕が
それぞれ2枚ずつ担当することになり、ますます勝手にシンパシーを
覚えた頃、初めてライヴも体験し、その場でようやく挨拶が出来た。

明けて2015年、BB5のライナーを書いた3人で新年会をやろう!
ということになり、新宿でビーチ・ボーイズのことばかり
5時間ぶっ続けで語り続ける会が開催された。
これが実に楽しかった。
この、実に駄目な会は映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』
公開された後に2回目が開催された。
今後も何かと動きがあり次第招集がかかりそうな気配が濃厚。
今年はマイクのビーチ・ボーイズも、ブライアン・ウィルソンも来日
するので、ちょっと活動が忙しくなるかもしれない(仕事しろ)。

というような交流の中、今回ニュー・アルバムの解説を、
というお話をいただいた。
平川さん自身が相当な音楽マニアなので、迂闊なことは書けない、
と、正直一瞬怯んだ。
でも、逆に言えばオファーを受けること自体が栄誉。喜んで引き受けた。

解説を書くに当たって、僕はカヴァー曲のオリジナル情報や周辺情報、
オリジナル曲のルーツとなっているであろうミュージシャンや曲など、
固有名詞、曲名などをなるべく多く盛り込むようにした。

僕の中高校生時代、洋楽のライナーノーツは、未知の音楽に出会わせてくれる
キーワードが満載の、魔法のテキストだった。
見たことも聞いたこともないミュージシャンの名前や、曲名などに
出くわすと、聴きたい、知りたい、という思いに駆られたものだ。
そして、そういうナヴィゲイションをしてくれる音楽評論家という
人たちを、本当に尊敬していた(今も)。

ザ・ペンフレンドクラブのアルバムを聴きながら僕の文章を読んで、
聴いたことのなかった音楽に興味を持ってくれたりしたら、
これほど嬉しいことはない。
平川さんや僕のように、駄目でズブズブの音楽ファンに
引きずり込むことが出来たら、最高だ。

ま、僕の文章はさておき。

『Season Of The Pen Friend Club』は、新しいヴォーカリスト
高野ジュンを迎えた新体制でレコーディングされた初のアルバム。
オリジナル曲とカヴァー曲それぞれ5曲ずつ、10曲の
ステレオ・ミックスとモノ・ミックスの全20トラック。
1960年代半ばのアメリカン・ポップスへの深い愛情とフェティシズムに溢れた音作り。
作品を追うごとに曲、演奏、ミックスのクオリティが上がってきているのも素晴らしい!
初の日本語オリジナル曲「街のアンサンブル」の堂々たる佇まいにも驚いた。
全曲少しずつ聴けるトレーラーはこちら。キラッキラでしょ!

今回はたまたま解説文を書かせてもらったが、
今後も引き続き、ファンとして彼らの音楽に注目していきたい。
まだまだ進化し、これからも新たな切り口を示してくれること確実だもの。

2016年1月2日土曜日

wilsonic annual report 2015


昨年1年間の自分のことをまとめてみます。

まず、本業に関して。

その壱:2015年にリリースされた、竹内が関わった作品

(括弧内は役割&肩書き)

03
 スピッツ 映画『スピッツ 横浜サンセット2013 -劇場版-(sound director)
04 スピッツ download single「雪風」(director)
05月 ウルトラタワー single 「希望の唄」(producer)
05月 ウルトラタワー mini album 『bluebell』(producer)
05 ココロオークション single「ターニングデイ | プリズム」(armchair directive)
06月 草野マサムネ「水中メガネ」(『風街であひませう』収録)(vocal direction)
07月 スピッツ Blu-ray & DVD 『JAMBOREE 3 “小さな生き物”』(director)
07月 peridots album 『PEAK』(director)
07月 sympathy mini album 『トランス状態』(co-producer, director)
09 ココロオークション album 『Relight』(5曲でarmchair directive)
(total producer)

前回のブログでも書いたが、1年中スピッツの映像周りの
チェックをしていたような気がする。
12月になんとかリリース出来た『JUST LIKE HONEY』は、本当に難産だった。
故に出来上がったときの喜びは一入。

継続して仕事の出来たウルトラタワー、peridots、ココロオークション、
内容が前作よりも更に充実した実感があったのが嬉しい。

新規のsympathy、さかいゆうが、共に高知県出身というのも面白い。
2016
年は既にスピッツ『THE GREAT JAMBOREE “FESTIVARENA” 日本武道館』
がリリースされ、この後も1月、2月、4月、6月、7月あたりまで
様々な作品の発売が続々と決まっている。
年齢も年齢だし、体調管理しっかりしないと。



その弐:2015年に購入した音楽


洋楽:479アイテム
邦楽:206アイテム

洋楽は遂に年間500枚を切った。いちばん買っていた頃の1/3。
CDよりもvinylを買う機会が増えた。邦楽も少し減少。
これくらいの枚数だと、ハズレも減るし、好きだったものを
聴き返して確認する作業も出来る。良いことずくめ。

ここ数年考えていた断捨離を遂に少しずつ決行し始めた。
音楽書籍を約800冊、CDを約3000枚処分した。
しかしこんな程度では部屋は全く片付かない。
今年はさらに進める所存。

その参:2015年行ったライヴ、イヴェント数とアーティスト数


ライヴ・イヴェント:173
アーティスト数(のべ):704
両方とも少しずつ減った。
11月〜12月はレコーディングが多く、ライヴになかなか
行けなかったのが響いている。
洋楽のライヴは少ししか観ていないが、良いものが多かった。


その肆:2015年に観た映画(映画館で観たもの)


2015
年に映画館で観た映画の総本数は、247
昨年より微減。
来年は更に減りそうな予感が今からしていてやや残念。

11月でHuluを解約した。
月に1本くらいしか観る時間が持てず、観るべき優先順位作品は
Huluにいなくて、DVDを観る時間がほしかったから。

以下、2015年竹内的良かった映画(鑑賞順)。


【洋画新作20選】

『ラブ & マーシー 終わらないメロディー』は、今までで
いちばん多くスクリーンで観た映画になった(5回)。

【邦画新作10選】


あと、今年は名画座でたくさんの旧作に触れた。
自分が初めて観て、感動した作品を以下に列挙。

【旧作初体験10選】

シネマヴェーラで上映される映画は、時間が許す限り
全て観たい、と思わせるプログラムばかり。
エルンスト・ルビッチ特集橋本忍特集、もっと観たかった。

仕事が忙しい時期だったので少ししか観られなかったの、残念。

『神々のたそがれ』でアレクセイ・ゲルマンの魔力に魅せられた。
早稲田松竹で旧作を全部観て、ユーロスペースでも復習した。
『誓いの休暇』や『炎628』など含め、ソヴィエト映画恐るべし。

戦後70年ということもあり、多くの戦争映画を観た。
世界史をもう一回ちゃんと勉強しようと思った。

今年も洋邦問わず、新作旧作の映画を楽しみたい。

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以上、2015年の年間リポート。
2014年の年間リポートはこちら



2015年12月31日木曜日

wilsonic works 56


2015年も本日で終わり。

1年中『ハチミツ』の20周年トリビュートのことを考えて、
1年中スピッツのライヴ映像の編集作業をやっていた。

そんな年だった。

3月から公開がスタートした『スピッツ 横浜サンセット 2013 -劇場版-』は、
昨年から編集やミックスダウンの作業を進めており、年明け早々から
スタジオや映画館などで試写しながら最終形を固めて行った。

その作業が済んだら『JAMBOREE 3 “小さな生き物』
7月1日の発売に向け、3月〜5月にかけての制作。
スピッツはファンクラブ・ツアー “GO! GO! スカンジナビア vol. 6”や
VIVA LA ROCK出演などの合間を縫っての作業となった。

それが終わるや否や、明日2016年1月1日に発売日を迎える、
『THE GREAT JAMBOREE 2014 “FESTIVARENA” 日本武道館』に取りかかる。
5月の下旬から作業に入り、パッケージの最終チェックは11月まで、
足掛け7ヶ月。

2014年夏前くらいだったか。
『横浜サンセット』を劇場公開のみの映像作品とすることを決めた時点で、
全3作品の大体の時系列、パッケージのイメージは出来ていた。

2013年9月、アルバム『小さな生き物』の発売〜“横浜サンセット 2013”
の開催をスタート地点とした “FESTIVARENA” 終了までのスピッツの1年間を、
2015年初頭から約1年かけて展開して行く。みたいな。

決めたはいいけど、実際にやってみると作業に追われる日々だった。
僕なんか制作部分しかやっていないので大して忙しくなかったけど、
初めて取り組む映画というメディア、
日本ではここまで精巧なものはなかなかお目にかかれない
『FESTIVARENA』デラックスエディションの仕掛け絵本など、
関わったスタッフの尽力には感謝しかない。

3作品全ての映像監督は番場秀一。
赤レンガパーク、大宮ソニックシティ、日本武道館という会場、
劇場公開のみの映像と、パッケージ商品としての映像など、
それぞれをどう録り、どう編集するか、彼のヴィジョンには
大いに唸らされた。
1年半に及ぶ作業、本当にお疲れさまでした!

先ほど、自宅のTVで『FESTIVARENA』を久しぶりに観た。
スタジオで散々観た映像だけど、自宅で観るとこれがまた新鮮なのだ。
いつも書きますが、Blu-rayは画像ももちろん、音質も最高。
スピッツに限らず、視聴環境が整っているなら、Blu-rayおすすめです。

ということで、2015年最後のブログ更新は簡潔に終わります。
年明けて早々に2015年の総括したいと思います。

では皆さま、良いお年を。

p.s.
最近スタジオに籠りっぱなしで全然レコード屋に行けなかったのだが、
昨日久しぶりにタワーレコード新宿店に行けた。
『JUST LIKE HONEY』と『FESTIVARENA』を中心とした7Fの
展開、ちょっとグッと来るものがあった。
Twitterのタイムラインで見るいろんなお店のディスプレイとか、
熱いコメントとか、本当にありがたい。
来年も、お店が思いっきりプッシュしたくなるような作品を
送り出して行く所存であります!

2015年12月23日水曜日

wilsonic works 55


スピッツの6thアルバム『ハチミツ』が発売されてから20年。
その、20周年を記念して企画したトリビュート・アルバム、
『JUST LIKE HONEY 〜『ハチミツ』20th Anniversary Tribute〜』
が12月23日にリリースとなった。

正確に云うと、既に12月9日からiTunesストアで配信がスタート、
23日はCDのリリース日である。
来年1月27日にはアナログ盤としても発売される。

僕はこのアルバムの企画立案をし、トータルのプロデューサーを務めた。

こちらのサイトにこのアルバムの企画意図など、多少硬めに書いたし、
アルバムに封入される投げ込みで、MUSICA鹿野さんと対談して、
リリース当時のスピッツのことなど語っているので、
ここでは少し違うネタを。

実は、最初考えていたのはトリビュート・アルバムではなくて、
『ハチミツ』20周年記念の豪華デラックス・エディションだった、
というお話。
飽くまでも僕の頭の中の妄想レヴェルでは。

きっかけというか、大いに参考になったのは、2014年3月に
リリースされたエルトン・ジョンの『Goodbye Yellow Brick Road』
40周年記念スーパー・デラックス・エディション
リマスター、ライヴ音源、映像など4CD+DVDというヴォリューム。
その中の1枚のCDに、アルバム全曲ではないが、エド・シーラン
若手アーティストによるカヴァーが入っていたのだ。

これに倣い、『ハチミツ』も未発表ボーナス・トラックや当時のライヴ音源、
そしてアルバムまるごとのトリビュートなど、3枚組ボックスとかに
ならないかなー、と思いついた。

思いついてみたものの、よく考えるとこの頃のスピッツに
未発表マテリアルなんて存在しないし、ライヴは『JAMBOREE 1』
(現在は『ジャンボリー・デラックス』)が出ている。
そんなわけで、『ハチミツ 20th Anniversary Super Deluxe Edition』は、
2014年春に思いついた途端に自分内で却下された。

ただ、そのときにイメージしたトリビュート・アルバムのことは
頭の隅に残っていたのだな。
半年くらい経った2014年秋に、どういうメンツが集まったら
面白いんだろう、と少しずつなんとなく考え始めていた。

『ハチミツ』のオリジナルの発売日は9月20日なので、
リリースするなら2015年9月を目標にしよう、と思い、
年末にユニバーサルのA&Rと情報を共有する。

明けて2015年初頭、正式にリリースに向け準備を始め、
2月以降順次アーティストに参加要請のお声掛けを始めた。

と、あっさり書いているけど、全ラインナップが決定したのは
そこから半年以上経過した2015年8月。
全音源のレコーディングが終わる見込みが11月頭となった。
当初考えていた9月発売なんて完全に無理で、
年内発売もあわや、というところまで行きかけたが、
なんとか20周年の2015年内にリリースにこぎ着けることが出来た。

2002年にカヴァー・アルバム『一期一会 Sweets for my SPITZ』
制作した経験値があるので、その当時のタイム感で進めていたのだが、
全然勝手が違った。
何よりも12曲という限られた楽曲を振り分けるというパズル感は、
『一期一会』とは比較にならないくらい大変だった。

2015年は常にこのアルバムのことが頭の片隅にあり、
ずーっと不安な気持ちを抱えたままだった。
テトリスで長い棒が全然落ちてこないみたいな、
どうしようどうしよう、って焦っている気分。
でも、待つしかないわけで。

一緒に企画して進めたA&RのFさんの支えが無ければ、
この企画は成り立たなかった。僕一人じゃ絶対に無理だった。
深い感謝を捧げます。

11月上旬にマスタリングを終え、中旬にアナログのカッティングを
終えたとき、初めて安堵の気分を味わった。
よ・う・や・く・で・き・あ・が・っ・た!!!

そして。
このトリビュート・アルバム、相当面白い出来になっていると思う。
当初予想していたものと結構違っていて、それが逆に楽しい。

お忙しい中このような企画に賛同し、ご参加いただいた
アーティストの皆さまには、ひたすら感謝しかない。
無いスケジュールをこじ開けていただいたスタッフの皆さまのご厚情にも深謝。

あとは、ひとりでも多くの方に、このアルバムをお届け出来れば。

こういうアルバムを企画するなら、まずはきちんと売る、
伝えることが参加アーティストへの最低限のマナーですからね。

そして、これを知った、聴いた人には、

1. スピッツ(『ハチミツ』)ファンの人が、スピッツ以外のアーティストを知る。
2. 収録アーティストのファンが、スピッツ(『ハチミツ』)のことを知る。
3. 収録アーティストのファンが、別の収録アーティストを知る。

という3種類の「知る」チャンスが訪れる。
このことがその人のその後の音楽ライフに何らかプラスになるといいなあ、と。

普段から日本のロック、ポップスに親しんでいて、
収録アーティストの大半を知っている人でも、
これまで持っていたイメージと違う新鮮なものを受け取るかもしれない。
普段あまり音楽を積極的に探っていない人に、
新たな扉が開くような出会いがあれば、企画者としてこれ以上嬉しいことはない。

僕自身がこれまでいろんなカヴァーやトリビュートで、
新たな出会いをしてきたことが、こういうアルバムを作る
原動力になっているんだと思う。
どうか、多くの方に新規ご贔屓アーティストが増えんことを!

しかしまあ。
あんなにしんどい思いをして制作を進め、途中段階では
「もう二度とトリビュート企画なんてやりたくない!』とまで
思っていたのに、実はもう僕の中では違うアイディアが
いくつか浮かんできている(スピッツ関連ではないっす)。
これが制作マンの業というものなのか・・・。
ま、実現するかどうかはわかりませんが。

p.s.
アルバムのアートワークは、オリジナルの『ハチミツ』の
アートディレクターでもある、CENTRAL67木村豊
ポップで可愛いデザイン、アナログ盤が楽しみでしょうがない!

p.s. 2
アルバム・タイトルの『JUST LIKE HONEY』は、ご存知の通り
Jesus & The Mary Chainの1985年のシングル曲で、彼らの
1stアルバム『Psycho Candy』に収録されている曲のタイトルと同じ。

でも、実はもうひとつ元ネタがあって。

僕の大好きなイギリスの音楽プロデューサーで、Joe Meekという人がいる。
この人、1960年代にたくさんのヒット曲を放ったのだが、
その中で2曲の有名なトリビュート・ソングがある。
1曲がMike Berryの「Tribute to Buddy Holly」。
そしてもう1曲がHeinzによる「Just Like Eddie」。
前者はバディ・ホリー、後者はエディ・コクランという、
いずれも早逝したアメリカのロックンローラーに捧げた歌。
後者の「Just Like Eddie」の「Eddie」の部分を「ハチミツ」に
変換したのが『JUST LIKE HONEY』というわけなのでした。
ここで書いておかないと自分でも忘れそうなんで、備忘録。


2015年10月28日水曜日

wilsonic works 54


10月21日にリリースされた、さかいゆうのシングル「ジャスミン」に、
ディレクターとして参加した。

2015年の初頭にマネージメントのスタッフからお誘いいただき、
さかいくんの新作の制作のお手伝いをすることになった。
オフィスオーガスタの人たちとは20年来のお付き合いがあるが、
こういう形でお仕事をしたのは今回が初めて。
4月から始めていたレコーディングの成果の第一弾が「ジャスミン」。

まず。

噂には聞いていたが、さかいゆうは本当に凄かった。
20歳を過ぎてから音楽を本格的に始めた、
という普通の音楽家に比べれば遅めのスタートなのだが、
それを全く感じさせない、音楽的身体能力の凄まじさ。
プレイヤーとしてもシンガーとしても舌を巻く上手さ。

ただ上手いだけじゃない。
音楽を理論ではなく、純粋に「音楽そのもの」として体で受け止めている。
かといって野性のままに突き進むわけではなく、
自分や他人のプレイを客観的に判断する冷静さも併せ持つ。
いろんな音楽を分け隔てなく聴き、その分析も的確。
あと、いろいろ聴かせてもらったモノマネが特徴を捉えていて最高に面白い。

つまり、なんというか、全身が音楽で出来ているような人なのだ。
いやー、初めて会うタイプの。ある意味天才。

さてさて新作シングル「ジャスミン」のことを。

これまで、基本的にセルフ・プロデュースで音楽を作ってきた
さかいくんが、これまでやってこなかったことにも積極的に
チャレンジしよう、という意思のもと、表題曲のプロデュースは
蔦谷好位置さんにお願いした。

カップリングの「WALK ON AIR」はcafelonの石崎光プロデュース。
作詞は同じくcafelonのメンバーであり、Schroeder-Headz
渡辺シュンスケ

加えてカヴァー曲。ORIGINAL LOVEの「接吻」をセルフ・プロデュースで。

この3曲、全部違うプロダクションで、ミュージシャンもみんなバラバラ、
そしてとにかく豪華!
以下、各曲のミュージシャンを列挙します。

「ジャスミン」
ドラムス:玉田豊夢
ベース:松原秀樹
ギター:山口周平
ストリングス:弦一徹ストリングス

「WALK ON AIR」
ドラムス:あらきゆうこ
ベース:根岸孝旨

「接吻」
ドラムス:屋敷豪太
ウッドベース:鹿島達也
ギター:田中 "TAK" 拓也

すげー豪華!
そして全曲のピアノはさかいゆう。

普段、バンドもののレコーディングに関わることが多く、
このようにいろいろなミュージシャンが参加するレコーディングを
あまり体験していないので、非常に刺激的だった。
皆さんホントに素晴らしいプレイヤー!

そして、全曲のミックスを手がけているのが、
久しぶりにご一緒した、molmolこと佐藤宏明
約5年振りだったけど、更に進化したその音作り。
彼のミックスにも唸らされっぱなしだった。

同じエンジニアだけど、3曲のプロダクションが違うことによる
その肌触りの違いを楽しむことも出来る。
「ジャスミン」と「WALK ON AIR」はそれぞれプロデューサーが
ヴォーカル・ディレクションをしているが、「接吻」は僕が
歌入れをしている。やっぱ歌入れする人によって、歌の表情って
随分違うんだなー、と今回改めて思った。

というわけで、僕のさかいゆうくんとの初仕事である
「ジャスミン」是非ともチェックのほど、よろしくお願いします。

早見あかり出演のMVはこちら
初回限定生産盤の映像ダイジェストはこちら
蔦谷さんとさかいくんの対談はこちら

そして、さかいゆうはライヴで観てもすごい。
っていうか凄いライヴをやるのです。観たら確実に彼を見る目が変わる。
11月〜12月にはツアーもあるので、こちらもぜひチェックのほどを。

2015年9月20日日曜日

wilsonic works 53


9月16日、ココロオークションのフルアルバム『Relight』が発売された。
5月のシングル「ターニング・デイ / プリズム」に続き、
armchair directiveという肩書きで参加。
全曲ではなく、上記シングル2曲含む5曲で、あーだこーだやっている。

自分が関わった曲と、関わっていない曲が混在している作品は、
聴いていて面白い。
自分では意識していなかったことが発見出来たり、
アーティストの持つ個性や志向性が、
自分が関わっていない曲からほの見えたりするのだ。

例えば『Relight』の1曲目と2曲目。
1曲目の「day by day」はメンバーだけで制作し、
2曲目「ここに在る」は僕が参加したもの。

「day by day」の持つスピード感、一筆書きのような
メロディと歌詞の展開、一方向に徹底したアレンジとサウンド。
これらは僕が入ったら少し勢いが削がれていたかもしれない、と思うのだ。
それに比して「ここに在る」は “構築” 感があるというか、
手堅い作りになっているような気がする。

ココロオークションは、圧倒的にキャッチーなメロディを
武器とするバンドなのだが、同時に斬新なアイディアや、
自分たちが面白がれることに貪欲にアプローチをする姿勢を持つ。
そういうバンドに対して僕が行うことの多くは、いわば “剪定” 。

アイディアが斬新過ぎたり、過激だったり、ミュージシャン的な部分で
面白がり過ぎたりして、本来曲が持っていた魅力が削がれていないか、
なんてことを俯瞰や一歩退いて観ながら考える。

アーティスト発信のオリジナリティは残しつつ、
はみ出過ぎてしまった枝を切り、
より多くの人に伝わる形にする。

それが、僕の仕事。

前述のようにアルバム『Relight』全8曲のうち、
僕は5曲に関わっている。
上記の情報を得た上でアルバムを聴いて、
どれがそれなのかわかったりしたらすごいですけどね。

ともあれ。

本当に強いメロディと多彩なギター・サウンドを核とした
アレンジで綴られる『Relight』、是非ともチェックのほどを。

また、今回収録の「雨音」で3部作完結となる
「夏のMV3部作」も要チェック。以下の順番でどうぞ!
「雨音」ラスト、ヤラれますよ。

蝉時雨→②夏の幻→③雨音

そして。
最近のココロオークション、ライヴが非常に充実してるので、
東京でのライヴは行けるときは必ず行くようにしている。
速い曲もしっとりした曲もしっかり伝わる緩急あるステージ、
機会があったら是非とも体験してみてほしい。


p.s.
若い頃はアーティストと一緒になって面白がっていろんなことをやった。
いろんなことを学んだ。
成功も失敗も経験した。
無駄なこと、遠回り、試行錯誤、いっぱいやった。
余計な事はしすぎるほどいいのだ。

そういう経験を積ませてもらったことには、
当時所属したレコード会社には本当に感謝している。
今は、失敗が許されない空気が蔓延しているのが残念だ。