2012年12月9日日曜日
wilsonic works 27
3週にわたり4作品がリリースされる "タケウチ冬の盤祭り"
の掉尾を飾るは、これがメジャー・デビュー作品となる、
SAKANAMONの『na』。
収録されている10曲のうち、9曲をプロデュースした。
今回、アルバム発売に合わせてタワーレコードで配布されている
フライヤー用に、タワレコのバイヤーさんやラジオDJ、編集者等に
混じって僕もコメントを寄せている。
その文章をここに転載してみる。
多くのヒラメキとちりばめられた仕掛け。
エモーションと緻密さの同居。
どんなに難解な言葉を使っても人懐こい表情の曲たち。
SAKANAMONの音楽は、一種の「発明」だと思う。
ここにあるいくつかのタームは、僕が音楽に対するに
当たり、非常に大切にしているものばかり。
まず、「ヒラメキ」と「仕掛け」について。
前者は曲を作り、アレンジし、演奏し歌唱するときの、
とっかかりとなるもの。
後者は曲を興味深く聴かせるための手段。
前者が右脳的なるもので、後者が左脳的、という云い方も出来る。
そして、この「ヒラメキ」こそが「発明」なのだ。
音楽は、発明。
発明しなきゃ音楽じゃない。
今回、たまたまSAKANAMONに向けて「発明」という
言葉を使ったけど、多くの優秀なミュージシャンは、
多かれ少なかれ発明し続けているものだ。
そして、発明しなくなるとその音楽は輝きを失う。
僕ら裏方は、そういう発明の才が無いから裏方をやっているのだ(笑)。
ミュージシャンが小さな発明をしたのを見逃さず、
それを商業品として世に送り出すための「仕掛け」
などを考えて、アシストをする。
それが僕の仕事。
SAKANAMONのシンガーであり、ソングライターである
藤森元生の「ヒラメキ」は、時に天才的だ。
どこからそんな着想を得るのかさっぱりわからないが、
やけに気になるモチーフや言葉を持ってくる。
最大公約数のような音楽の氾濫が、現在の音楽販売不振の
一端を担ったと思っている僕は、こういう「はみ出した」才能が
面白くてしょうがない。
次。「人懐こい表情の曲」って何だ?
これも最近ようやく気付いたんだが、僕はどうやら
シリアス(っぽい)曲やアーティストが苦手みたい。
シリアス過ぎて笑えるくらいだったらまだいいんだけど
(今年1回だけそういうアーティストをライヴハウスで
観て、周りの人が熱心に聴いている中、僕は笑いを
堪えるのに必死だったw)。
シリアス(っぽい)音楽は、とにかく窮屈。
なんていうか、解釈の自由度が低いのが苦手で。
曲を聴いて、「俺はこう思う」「私はこう感じた」と、
受け取る側によっていろんな解釈が出来る音楽が好きだ。
あと、同じ曲なのに聴く度に違う感情を揺さぶられる、
とかもうそういうの最高の音楽だと思う。
聴いただけではもちろん、歌詞カードを見ても意味が
わかりにくい歌詞のSAKANAMONの音楽は、難しい言葉を
単に難しく響かせようとしてはいない。
韻を踏んだりする言葉遊びや様々なアレンジの方法で、
歌詞自体の意味ではなく、イメージを植え付ける。
時に開放的に、時に攻撃的に、時に情けなく。
歌声のバランス&ヴァリエイションも重要。
時に無機質、時にエモーショナル、時にアホらしく。
そういった工夫や組み合わせ、加えて藤森元生の持つ
天然成分(笑)の結果、SAKANAMONの音楽は
とても「人懐こく」僕の耳に忍び寄ってくる。
実はこの「天然成分」がいちばん重要だったりするんだけどね。
やってる本人が面白がっていれば、自ずと曲に表情は生まれる。
『na』は、5日に発売されて、売れ行きも順調だと聞く。
きっと彼らの音楽は、それ自身が持つ人懐こさで、
多くの人の生活の「肴」となっていくことだろう。
ということで、アルバム『na』の1曲目を飾る、とびきり
キャッチーでいて、最後に「そのオチかい!」とツッコミを
入れたくなる曲「マジックアワー」のMV&メイキング映像は
こちら。
前作ミニアルバム『泡沫ノンフィクション』にも『na』にも
収録されている「カタハマリズム」のMVはこちら。
そして、アルバム『na』収録曲で唯一僕が関わっていない
曲「ミュージックプランクトン」のMVはこちら。
エンジニアも違うので一概には云えないけど、
「ミュージックプランクトン」と「カタハマリズム」を
聴き比べると、竹内がどういうスタンスで音に
向き合っているか、少しわかっていただけるはず。
ま、同業者向けのお話かもしれませんが。
特にヴォーカルの質感に顕著に出ていますね。
YouTubeではなく、CDで聴くとさらにわかるはず。
p.s.
今年に入ってからのSAKANAMONは、観る度に
ライヴ・パフォーマンスの完成度が上がってきている。
音源を聴いて興味を持たれた方は、是非とも一度、
ライヴをご覧いただきたい。
また、以前観たことがある方も、是非最新の彼らの
ステージをご覧になってほしい。
ライヴ情報はこちらを参照ください。
2012年11月30日金曜日
wilsonic works 26
今週11月28日に発売された、大阪を拠点に活動するバンド、
カルマセーキの4thアルバム、『鍵は開けてある』に、
面白い形で参加したので、それに関して。
僕は彼らのライヴを2011年の春くらいに渋谷WWWで初めて観た。
それまでにも、心斎橋のサーキット型フェス「見放題」で
プッシュされていたり、3rdアルバム『秘密計画』に
ANATAKIKOUのまあきこと松浦正樹がプロデューサーで
参加しているなど、共通の知人が多いこともあり、
名前だけは知っていたんだけど、ライヴや音源に触れる機会が
なぜか無かった。
で、ライヴを観て「むむっ!」と思い、その日CDを購入して
家で聴いて更に「むむむっ!」と思ってしまった。
今どきこんなにコーラスを多用するバンドも少ないし、
ポップでいながらちょっとヒネらずにはいられない性(さが)を
持て余してる風情にもシンパシーを感じた。
僕の中のセロファン〜ゲントウキ〜クノシンジのライン上にある音楽。
もしTeenage Symphonyというレーベルが今もあったら、
必ず契約したであろうバンド、なわけです。
つまり、惚れた、と。
遅ればせながらカルマセーキのファンとなった僕は、
彼らが東京に来る際にはなるべくライヴを観に行くように
なり、次にレコーディングする際には、なんか手伝わせてよ、
なんてことを話していた。
この度、念願かなってそれが実現、ということです。
で、面白い関わり方、の件。
今回、『鍵は開けてある』のクレジットに、
armchair directive: 竹内 修 (wilsonic)
と書かれている。
なんのこっちゃ、ですよね?
探偵小説、推理小説用語に、armchair detective、
っていうのがあって。
直訳すると安楽椅子探偵。
現場を一切見ることなく、事実関係と証拠などの情報のみを
頼りに事件を解決する探偵のことを指す。
今回僕は、カルマセーキのアルバム制作を手伝うにあたり、
東京に居ながらにしていかに制作作業を進めるかを考えて、
armchair directive=安楽椅子指示、という方法を試してみた。
いや、この肩書き自体は最後に考えたんだけど。
やり方は至極シンプル。
彼らが作ったデモのファイルを送ってもらい、
それに対して僕の意見をメールで返す。
僕の意見を反映してデモを作り直してもらい、
それをまた送ってもらう。
これの繰り返しで、曲をブラッシュアップして行く。
最初はこのやり方、結構大変なんじゃないかなー、
と思っていたんだけど、これが意外とスムーズで。
それもこれも、カルマセーキのメンバーの理解力の高さゆえ。
僕が伝えたことを、100%受け取り、しかも僕が思っていた
以上のレシーヴ(もしくはスマッシュ)を返してくる。
そうなるとこちらも更にエンドルフィンが分泌され、
より面白いアイディアを出したくなるのが人情ってもんで。
詞、曲、アレンジ、構成、楽器のセレクトなど、曲によって
いろんなことを提案し、彼らはそれを全て試し、
最終的に採用するかしないかは彼らの判断にお任せした。
実際のレコーディングには、リズム録りのときに1回だけ顔を出した。
ちょうど大阪にライヴ・イヴェントを観る用事があって、
その翌日、京都でレコーディングを始めたばかりの彼らを激励に。
CHAINSのラリー藤本くんが経営するマザーシップスタジオへ。
暑かったなー、真夏の京都。
そこからは、レコーディングで進展のある度にファイルを
送ってもらって、確認しつつという感じ。
最終的な質感に関して少し意見した程度で、基本的に
彼らのセルフ・プロデュースで進めてもらった。
これが、今回の ”armchair directive” の流れ。
自分にとっては非常に貴重な体験だった。
お互いの理解と信頼があれば、直接話し合ったり
一緒に音を出したりしなくても、ある程度貢献出来る、
ということがわかったんだから。
なので、全国全世界の皆さま、竹内と仕事したいけど
東京にいないから無理だ、なんてことを悩む必要は
ありません。遠く離れていても、共同作業は出来ますよ。
そして。
関わっておきながら自分で云うのもなんですが、
カルマセーキ『鍵は開けてある』は、彼らの最高傑作だと思います。
メンバーチェンジ後、最強の4人となった彼らが真摯に音楽に向き合い、
そこにwilsonicの魔法の粉を少し振りかけさせていただいた、
極上のポップ・アルバム。
アルバムのラストに収録されたリード曲、
「サガポー・ティアモ・ラヴャ」のMVはこちら。
ホント名曲。
自然体の映像もいいね。
こんな音楽が、音楽好きの人たちにしっかりと届けば、
まだまだ音楽をめぐる状況はいろいろやりようはある、
と思うんだけどな。
甘いかな。
p.s.
そうそう、『鍵は開けてある』の曲順について。
メンバーが考えたものを僕なりに少し変えて提案したら、
それが採用されたんです。自慢です。
めっちゃ流れがいいっすよ。
それぞれの曲の「役割」がきっちりと見えるとはず。
タニザワトモフミ『日本に落ちてきた男』で、
曲順考案者という仕事を請け負っただけのことはある。
はず(その経緯はこちらのエントリ参照ください)。
2012年11月25日日曜日
wilsonic works 25
昨日書いた東京カランコロンの『きらめき☆ドラマティック』収録の
「サヨナラ バイバイ マルチーズ』のMVと、CDエクストラの
ダイジェスト映像がこちらで観られます。
ダイジェストの中の、いちろーの顔にモザイクがかかっている
場面でいちろーの横にいる僕の姿が確認できます(笑)。
さて、今日は昨日に続き11月21日発売の、
竹内が関わったCDシリーズその2。
驚異の新人バンド、REAL ALOUDの『A』(エース)について。
READ ALOUDは、東京をベースに活動する男性4人組のロック・バンド。
彼らにとって初の全国流通盤となる6曲入りミニ・アルバムが『A』。
このアルバムを僕は、盟友石田ショーキチと共同プロデュースした。
以下、ちょっと竹内と石田ショーキチくんとの歴史をば。
石田くんは、スパイラル・ライフ~SCUDELIA ELECTRO~ソロと、
彼自身のミュージシャンとしての活動はもちろんのこと、
プロデューサー & エンジニアとしても多くの作品を手掛けており、
その手腕には定評がある。
実は僕は、彼の最初期のプロデュース・ワークのディレクターなのだ。
rosyという女性5人組ロック・バンドの2枚のシングルを
プロデュースしてもらったのが最初のお仕事。
これが1996年。
彼にとってほとんど初めてのプロデュースだというのに、
その手際の良さ、話の正しさ面白さ、メンバーへの説得力など、
大いに感心したことをよーく覚えている。
残念ながらrosyはその2枚のシングルをリリースした後に
解散してしまい、アルバムにたどり着けなかった。
次に2000年から2001年にかけて、スピッツのプロデュースを
お願いした。作品でいうと、シングル「ホタル」「放浪カモメはどこまでも」、
アルバム『ハヤブサ』、シングル「遥か」「夢追い虫」の時期。
石田くんの提案により、「夢追い虫」のTDは、ここ10年ほどスピッツの
メイン・エンジニアである高山徹さんで行われた。
これ、とても重要。
2002年、僕がトータル・プロデュースをしたコンピレーション
『一期一会』(スピッツの曲を様々なアーティストがカヴァーしたアルバム)
収録の、セロファンによる「夢追い虫」をお願いしたのも楽しい記憶。
スピッツのオリジナルとセロファンのカヴァー、
両方に同じプロデューサーが関わっていて、
それでいて全然違う質感に仕上がるという面白さ。
2005年から2006年にかけて、石田くんが新たに組んだ
スーパー・バンド、MOTORWORKSの作品を、当時僕が
運営していたレーベル、Teenage Symphonyからリリース
できたことは僕の誇りのひとつ。
そんなこんなで僕と石田くんは何年かおきに一緒に
何かしらやっていて、それら全てが成功したわけではないけど、
僕の中ではとても良い記憶として残っているものが多い。
それが、僕が彼を「盟友」と呼ぶ所以。
今回、READ ALOUDの所属するプロダクションから
オファーをいただき、ライヴを観たりデモ音源を聴いたりするうち、
僕は彼らの音楽の中に「ヘヴィネス」と「メロウネス」が
いい具合に同居していることに気づいた。
そして、その硬軟をうまく料理できるサウンド・プロデューサーは
石田くん以外にいない、と思ってすぐさま連絡をした。
幸い、マネージメント・スタッフの中に、以前石田くんと
一緒に仕事をしたことがある人がいたこともあり、
諸々非常にスムーズにコトが進んだのだが、なによりも
石田くんとREAD ALOUDのメンバーとの呼吸の合い方が
半端なかった。
最初のリハーサルで、メンバーそれぞれとバンド全体に対して、
良い点と改良すべき点を的確に簡潔に、
そして何より論理的に指摘し、メンバー大いに納得。
そこからは石田アニキの言葉をスポンジの如くどんどん吸収し、
短期間でスキルもマインドも急成長。
その成長っぷりに今度は石田くんがメンバーに惚れる、
という好循環。
いやー、嬉しいんですよこういうの。
自分がうまく行くだろうと思って仲介したら、
予想を超える展開、結果になるってことが。
そして今回、僕とも石田くんとも初仕事となったエンジニア、
高須寛光さんの丁寧かつアイディア豊富な仕事っぷりにも感服。
高須さんは、THE BACK HORNなどを手掛けられている、
現在メキメキと頭角を現しているまだ若きエンジニア。
いろんなマッチングがすべて吉と出て、余計なことを
考える必要のない、ストレスフリーな現場だった。
これはなかなかないことなんですよ。
今回のアルバム『A』は、そんな急成長中のREAD ALOUDが、
石田くんと高須さんと共に集中し、悩み、そして大いに楽しんで、
あと来る日も来る日もカレーばっかり食いながら(笑)作った、
非常に濃い密度を誇る内容です。
僕はもう、ただただその流れを見守るだけだったな。
READ ALOUDは、現在このアルバムを引っ提げて全国ツアー中。
今日、新代田FEVERで石田ショーキチが主催するイヴェント
"Go All The Way vol.12"に出演した彼らを観てきましたが、
さらに成長し、ライヴの説得力が桁違いに増していた。
まだまだ一部のファンにしか知られていない彼らだけど、
物語はスタートしたばかり。
今からREAD ALOUDのことを気にしてみてください。
数年後彼ら、すごいことになっていると思いますよ。
その片鱗がうかがえる、アルバム収録の6曲が
少しずつ聴けるトレイラーはこちら。
まずはチェック。損はさせません。
あー、長くなっちゃった。
でも、公約通り2日連続更新しました。
もう夜中の2時だけど。
年内、まだまだ更新します(公約)。
2012年11月24日土曜日
wilsonic works 24
今週11月21日に、僕がプロデュースで関わった
ミニ・アルバムが2枚リリースされました。
今日と明日で、その2枚をご紹介しようと思います。
まずは、8月にリリースされた「ナツ盤」こと『ゆらめき☆ロマンティック』に
続く、東京カランコロンのメジャー第2弾となる『きらめき☆ドラマティック』。
前作が女性ヴォーカル「せんせい」をメインにフィーチュアしたのに対し、
今回は男性ヴォーカルの「いちろー」がメイン。
前作同様、収録曲は5トラック、4曲がオリジナルで1曲がカヴァー。
オリジナル4曲は、充実してた前作に負けず劣らずの
キャッチーにして彼らならではのアイディアとオリジナリティが
これでもかとばかりに詰め込まれている。
新しい試みも多く、東京カランコロンの曲作りの引き出しの
豊富さにはいつも本当にびっくりさせられている。
リード曲「サヨナラ バイバイ マルチーズ」は、6/8拍子
(いわゆるハチロク)のロッカバラード。
ハチロクの曲を推し曲にするっていうのも昨今なかなか
勇気の要ることなんだけど、これがまたいい曲なんだ。
Elvis Woodstockことリリー・フランキーさんが書き下ろしてくれた
歌詞の切なくやるせない男の哀感を、いちろーが見事に歌い上げる。
冒頭と最後は、いちろー、せんせい、おいたんの3人の
ア・カペラ・コーラスという試みもいい仕上がり。
そうそう、この歌詞を最初にいただいたとき、僕は高校生の
ときに何度も何度も聴いていた、加川良の「偶成」という曲の
ことを思い出した。
失恋したときにこの曲を聴くと、ずーっと立ち直れないし、
誰のことも信じられなくなる、そんな名曲w。
『親愛なるQに捧ぐ』という、1972年のアルバムに入っています。
つまり、それと同等の "男のナルシスティックなネガティヴさ" が
「サヨナラ バイバイ マルチーズ」の歌詞には描かれていて、
ちょっと感情移入しちゃった、ということ。
20代の頃の自分自身の失恋体験を久々に思い出したり(恥)。
その他、タイトルとは裏腹にめちゃくちゃアッパーな
「フォークダンスが踊れない」、流れるようなメロディと、
よーく聴くとみんながかなりすごい演奏をしていることがわかる
「冬part2」、せんせいも出演するテレビ朝日、
『"ドラマ"ガールズトーク**十人のシスターたち**』のテーマソング
「ロンリーナイト・フォーリンラブ」(この曲は可哀そうで健気?な
女の子が主人公)と、カランコロンのいろんなタイプの曲が詰まっている。
そして今回のカヴァーは「フユ盤」ということで、
カズンの1995年の大ヒット曲「冬のファンタジー」。
前作でカヴァーした渡辺満里奈の「うれしい予感」は、
轟音ギターで覆われたシューゲイザー風味でしたが、
今回はそれとは打って変わったアコースティックなスタジオ・ライヴ風味。
この曲のアレンジには、ある曲へのちょっとしたオマージュが
入っているので、気づいた方はニヤリとしてください。
今年既に2曲入りシングル1枚、5曲入りの
ミニ・アルバムを2枚リリースした東京カランコロン。
実はその後もどんどんすごい勢いでレコーディングしております。
なんか今年、ずーっと彼らと一緒にレコーディングしてる
ような気がするなあ・・・。
次なる作品も乞うご期待!
ということで明日は11月21日に発売されたもう1枚の
竹内関連作品、READ ALOUDの『A』に関してのブログを
アップする予定。
2日連続更新なんて、ホントに出来るのか?
2012年9月19日水曜日
wilsonic works 23
本日9月19日は、99RadioServiceのニュー・シングル
「BYE × BYE」(これで"バイバイバイ"と読みます)の発売日。
収録されている4トラックのうち、タイトル曲と「リオトキオ」の
2曲をプロデュースした。
彼らと仕事をしたのは今回が初めてだが、
99RadioServiceのヴォーカル&ギターであるKo-heyとは、
LOST IN TIMEの『LOST AND FOUND』のレコーディングの
ときにすれ違っている。
「ニジノシズク」という曲のコーラスにと、海北くんが
スタジオに連れて来たのだ。
僕はこのアルバムの共同プロデューサーだったんだけど、
このコーラス録りに関しては全て海北くんの仕切り&ジャッジ
で進めていたので、当時僕はKo-heyとは挨拶もせず。
それが2010年の半ばくらいか。
当時99RadioServiceはインディから1枚目のアルバムを
リリースしてしばらく経っていた頃だった。
その後彼らはメジャーに進出し、2枚目のアルバムを2011年9月にリリース。
昨年11月のシングル「YOUTHFUL」はアニメ『ちはやふる』の
主題歌に抜擢されるなど順調なリリースを重ねる。
前作から約10ヶ月のインターヴァルでリリースされる今回の
シングルで、僕にプロデュースのお話が来た。
経緯としては、こうだ。
彼らの所属レコード会社VAPは、同じく僕が最新作『何重人格』
をプロデュースした、タニザワトモフミくんと一緒。
今年2月頃、タニザワくんのディレクター氏が出来上がったばかりの
『何重人格』をデスクで聴いていたところ、近くにいた
99RadioServiceのディレクター氏が興味を持ち、竹内という男にも
興味を持った、ということらしい。
こういう連鎖、嬉しい。
去年の暮れにも、それに似たようなことがあって、もうすぐ
それも形となって世に出て行く予定なんだが、
なんてゆーか、
ちゃんとやれば誰かがちゃんと評価してくれるし、
逆に手を抜いたり楽したりしたら、必ずその報いが返ってくる。
だから仕事はいつも真剣勝負、100%の自分を投入せねば
ならないんすよねー。
当たり前ですが。
閑話休題。
そこからトントン拍子に話が進み、ビートルズ好きのKo-taと
バディ・ホリー好きのKo-heyという兄弟を中心としたこの
バンドの曲作りに関わっていくことになった。
3月に曲を絞り込み、4月に詞やアレンジの詰め、プリプロ、
5月にはレコーディングを終える、という作業の流れ。
と書いてしまうとあっさりだが、実に濃い~い作業の連続だった。
初めて一緒に仕事をしたとは思えないほど、
最初から深いところにググっと入り込んで共同作業が出来た。
毎日のように新しいアイディアの応酬。スクラップ&ビルドの連続。
終わったときの充実感、半端なかったっすねー。
これは、メンバーがクレヴァーでオープンマインドだからこそ。
ガチンコ作業なのでときに衝突したり意地張ったりみたいな
場面もあったような気がするけど、それもすべて最良の結果を
産み出すための重要な通過点だったと云える。
そして今回のレコーディングで重要なキーパーソンが、
エンジニアのmixmix佐藤雅彦さん。
佐藤さんと竹内の初めてのお仕事は、スピッツの『花鳥風月』に新録音で
収録した「愛のしるし」と「流れ星」という白井良明さんのプロデュースの2曲。
1999年のことだからもう13年前か・・・。
その後、男女ユニット "Lita"のレコーディングでお世話になったり、
スピッツのライヴをレコーディング&ミックスしてもらったりしていたが、
ここ何年かはご一緒する機会がなかった。
今回、99の音は佐藤さんにやってもらうしかない、と直感が閃き、
andymoriやらチャットモンチーやらplentyやら女王蜂やらで
超多忙な彼のスケジュールをなんとかこじ開けていただき、久々に
お仕事させてもらった。
きっと99のメンバーとは心も音もマッチングが良いはずだとは
思っていたものの、予想以上のハモり具合。
佐藤さんのエンジニアとしてのスキルや知識の充実はもちろん、
当意即妙な話術にメンバーも僕もすっかりやられちまいました。
そして、独立されて自分のスタジオを作ったことも大いに影響している
のだと思うけど、音楽制作に対する真摯な姿勢も素晴らしく、
大笑いしながらも背筋が伸びる思いの毎日。
刺激的で真剣で、参加するみんながそれぞれの最大の力を
発揮する。それでいて笑いが絶えない現場から生まれた音楽。
99RadioServiceのニュー・シングル、「BYE × BYE」には、
そんなマジカルな音が封じ込まれています。
タイトル曲「BYE × BYE」は、Ko-heyの切ない声質を活かした、
秋の気配にマッチする失恋ソング。
2曲目「リオトキオ」は、表題曲とはうって変わって、地球の裏側まで
踊り倒すくらいの勢いの、ライヴではシンガロング必至の
アッパー・チューン。
3曲目以降は僕は関わっていないんだけど、トラック3は、
僕も大好きなアメリカのパワーポッパー"Bleu"が彼らのために
書き下ろした曲だし、4曲目は前作シングル「Youthful」の
ライヴ・ヴァージョンと、盛りだくさんとなっております。
ギター&ヴォーカルのKo-taが演出した「BYE × BYE」の
MVもぜひともチェックのほどを。
2012年8月14日火曜日
now I am a moviegoer
以下、2012年の7月上旬に下書きして、そのまま放置していた
ブログを本日加筆訂正してアップします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
前々回のエントリで、
「仕事が忙しくないときは昼間から映画観たり」
なんて書いたけど、
実は40年以上、映画には特に興味なかった。
子どもの頃、親に連れて行ってもらった記憶は
いくつかのゴジラ、ガメラ程度だろうか?
テレビで放映される映画はいくつか観て、
激しく揺さぶられたことがあったけど、
音楽のようにさらに深く探究したりすることはなかった。
あー、20代の頃ジョン・ヒューズものとかにちょっと
ハマりかけたことがあったけど、長続きはしなかったなー。
そんな僕がですよ、去年から週に1回は映画館で
映画を観る、ということを義務付けていて、
厳密にいうと週に1回は行けないこともあるんだけど
ほぼそのくらいのペース(もしくはそれ以上)で続けている。
きっかけはJon Brion。
彼が音楽を手掛ける一連の映画をDVD等で観て、
映画と音楽の密接な関わりに気付いたり、
ポール・トーマス・アンダーソンという監督の作品に
触れることにより、現代アメリカ映画の面白さに
気付き始めたりするわけだ。
で、ジョンが関わった映画は劇場で観るようにしよう、
と思って、『ハッカビーズ』とか観たりし始めたんだけど、
とどめは『脳内ニューヨーク』かな。
僕はこれが日本で公開されたとき、一週間で2回観た。
この映画で、映画の面白さと音楽の素晴らしさと、
フィリップ・シーモア・ホフマンという俳優に改めて唸り、
ミシェル・ウィリアムスという女優に惚れてしまうのだ。
それが2009年の11月。
翌2010年は、気になる映画があったら、
時間を見つけては映画館に足を運ぶ
ようになっていた。月に2本くらいの頻度かな?
で、2011年、前述のように週に1回は映画館に行こう、
という目標を立て、多分年間で60本くらいは観たと思う。
ベストは『アリス・クリードの失踪』かな。
ただ、その他何を観たかとかメモしなかったんであまり覚えていない。
なので、今年は3段階くらいで評価するメモも始めてみた。
そのメモによると、今年上半期に映画館で観た映画は、
全部で42本。月に平均7本。健闘しております。
その中で今のところのベストは、
今年に入って、2回観たのはこの映画だけ。
次点は『おとなのけんか』か『ヒミズ』か『ル・アーヴルの靴みがき』か?
『さあ帰ろう、ペダルをこいで』は、映画としては大作でもないし、
なんていうか、まあ地味なほうでしょう。
でもね、なんか最近こういう「家族」とか「無償の愛」
とかに弱いんですよ。
そして、時代や社会に翻弄される人々の、
どうしようもない運命、とか。
だから僕は『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』も
『きっとここが帰る場所』も好き。
あと、主演のミキ・マノイロヴィッチが本当に上手い
(昨年リヴァイヴァル上映された『アンダーグラウンド』で、
彼とエミール・クストリッツァ監督と、音楽家ゴラン・ブレゴヴィッチを知り、
これまた長い旅がスタートするのですが、それはまた別の機会に)。
でもですね。
やっぱ付け焼刃の映画ファンだから、まだまだ全然ダメ。
知識全然ないし、映画の観方よくわかってない。
『スターウォーズ』も『マトリックス』も観たことないし、
フェリーニもヒッチコックも黒澤も1作も体験しておりません。
これからひたすら修行だなー。
ただ、今は映画を観るのが純粋に楽しい。
まだまだすごい映画、面白い映画、恐ろしい映画が
いっぱい待ち構えているかと思うと、身震いする。
音楽にしても小説にしても、ひとりの人間が一生の
うちに体験出来る数は限られている。
だからこそその人なりの好みや指向があって、
それによる選択がまたその人を作っていく。
これまで触れてきた多くの音楽や文学によって今の僕が作られた。
そして、新たに僕の世界を構築するコンテンツとして、映画が加わった。
今までほぼ未体験だった映画の世界が、40代後半の男の視界に、
新しい色を着けてくれる。
要するに。
久々に音楽以外の趣味が出来たんで嬉しい、という、
ただそれだけの今回のブログでした。
wilsonic works 22
前回のエントリのときはまだ制作途中だったが、
それから2ヶ月強、東京カランコロンのメジャー・デビュー・ミニアルバム、
『ゆらめき☆ロマンティック』が8月15日の発売日を迎える。
なんでもお盆休みの物流の都合とかで、通常は発売日前日に
店頭に商品が並ぶものだが、早いところでは昨日13日に
超フライング・ゲット出来る状態になっていた。
先ほど僕も、7階で大展開していただいている、タワー新宿にて
ゲットしてきたばかり。
このミニアルバム、男女ツイン・ヴォーカルを擁する彼らの、
女性ヴォーカルの「せんせい」をフィーチュアした楽曲を中心に
組まれた全5曲。
プロデュースに関わった自分が云うのもなんですが、
その密度たるや半端ないっす。
1曲目「泣き虫ファイター」は、元チャットモンチーの高橋久美子さんが
初めて他者に歌詞を提供したことも話題の超キャッチーな失恋?ソング。
せんせいのヴォーカル、今までとはひと味違う新しい表情が新鮮!
これまで全ての楽曲をいちろー及びメンバーだけで作ってきた彼らが、
なぜ高橋さんに作詞を依頼したのか、などが、高橋さんとの対談形式で
語られているナタリーの記事はこちら。
そして「泣き虫ファイター」のMVはこちら。
楽しい振り付けはなんとラッキィ池田さん!
2曲目「夏Part1」と3曲目「ウキウキエブリデイ」の作詞は、共にせんせい。
これまでほぼ全ての作詞を、男性ヴォーカル&ギターの
「いちろー」が手がけてきた東京カランコロンだが、
今回は作詞にヴォーカルにせんせい大フィーチュア。
いちろーの強くて印象的な詞に対し、せんせいの詞はMC等の
彼女のイメージと同様の、ふわふわしたドリーミーな世界観に溢れている。
4曲目にはアニメ「ちびまる子ちゃん」主題歌の、「うれしい予感」
(オリジナルは渡辺満里奈)のカヴァーを収録。
ご存知の方はご存知のように、僕は相当なナイアガラ・マニア
だったので、勘ぐられる方もいらっしゃるかもしれませんが、
このセレクトは僕ではありません(笑)。
せんせいが「ちびまる子ちゃん」の大ファンだということで、
彼女がこの曲をピックアップしてきた、というのが真相。
オリジナルとは似ても似つかぬシューゲイザー的アレンジにより、
(といいながら根底に流れる共通するものはある)、
これはこれで相当面白いヴァージョンになったと思う。
5曲目「ララララ」はいちろーの作詞。
ヴォーカルもメインのラインを主にいちろーが歌っている。
彼の曲作りに対するスタンスが、彼らしい語り口で綴られている。
今回、彼の詞は5曲中この1曲だけだから、余計にいちろーの
キャラクターが浮き彫りになっているのかもしれない。
という内容。
最後まで聴くとまた最初から聴きたくなる、そんな5曲の流れ。
メジャー・デビューが決まり、どういうコンセプトで
リリースして行くのか、をコンセプチュアルに考え、
その戦略に沿って曲作りを始め、練り上げて行く。
その瞬間瞬間に立ち会って彼らを見続けてきているわけだが、
彼らがすごい速さで成長していることを実感するここ数ヶ月だった。
いろんなラッキーやミラクルを呼び込み、周りの人を
ぐいぐい巻き込んで行く勢いたるやもう。
アラフィフの僕にはとうてい真似できない反射神経と
吸収力、そして体力。感嘆ものです。
彼らのその急成長&努力が遺憾なく封じ込められた
『ゆらめき☆ロマンティック』。
ぜひとも手に取って、聴いてみてください。
なお、素晴らしいアートワークは、ゆずやSEKAI NO OWARI
などの作品で知られるファンタジスタ歌磨呂さん。
タニザワトモフミの『何重人格』も彼の仕事。
とにかくアイディアの宝庫。
今回のジャケット写真、アーティスト写真、これは合成では
ありません。どうやって撮ったのか推測するのもまた一興かと。
あと、東京カランコロンはCDも素晴らしいけどライヴがまた
すごくいいと評判なので、音が気に入った人はぜひとも
彼らのステージを体験してほしい。
9月12日に渋谷クアトロにてワンマンのチケット一般発売は8月18日より。
ソールドアウト必至なので、早めのゲットをお勧めします。
ワンマン含む今後のライヴの詳細はこちら。
そして。
僕は何より彼らの上昇志向、貪欲さが大好きで。
インタヴューなどを読んでみるとおわかりのように、
彼らは売れたいとためらいもなく云いきり、そのために
いろんなことにチャレンジしたい、テレビにもいっぱい
出たい、と云う。
だから彼らはメジャーに行き、さまざまな戦略を考え、
やりたいことやるべきことを具現化していく。
しっかりとした骨格の音楽を作った上で考える
戦略だから、決して間違わない。
実に頼もしい。
こうなったらもう、バカみたいに売れてもらわないと。
いやほんとに。
そのためのお手伝い、これからもしっかりやらせていただく所存。
あーもう、悪い予感のかけらもない。
登録:
投稿 (Atom)