2012年5月16日水曜日

wilsonic works 21



5月16日は、気鋭の3ピース・ロック・バンド、SAKANAMON
2nd mini album『泡沫ノンフィクション』の発売日。

僕は今回初めて彼らの作品をプロデュースした。

とはいえ、今回が初めましてだったわけではなく。

SAKANAMONと初めて出会ったのは2010年の新宿LOFT
ブッキング担当のHさんのお眼鏡にかなった若いバンド
ばかりを集めたイヴェントだった。
そこで観たSAKANAMONは、声のユニークさと
3ピースながら打ち込みを使ったアレンジなども
聴かせる、ちょっと気になるバンドだった。
僕はその場で彼らの自主制作CDを購入した。

数ヶ月後、やはりまたLOFTで彼らを観た。
この時、少し彼らと会話したんだっけか?
よく覚えていないが、SAKANAMONは僕の中で
"気になるバンド"のひとつとしてインプットされていた。

2011年、旧知の東京カランコロンが『あなた色のプリンセス』を
リリースする頃、僕はリリース元であるBUDDY RECORDS
Eさんと知り合う。
カランコロンをプロデュースすることになり、Eさんと
諸々情報交換などしているうち、実はSAKANAMONも
Eさんが担当されてBUDDYからミニ・アルバムをリリース
することが判明。

狭い世界ですねー、なんて云いながら、数ヶ月ぶりに
また彼らのライヴを観たりメンバーと話したりしているうち、
自然な流れで今回の作品に関わることになった。


それ以外にも意外なつながりとか奇縁があって今回に
繋がっているんだけど、長くなるので割愛。
つまりなんていうか、出会いは偶然とかではなく必然である
ことが多いよなぁ、ということ。
陳腐なものの云い方になってしまったけど、
近年本当にそう思えることが多い。
このテーマはまたいずれ。



『泡沫ノンフィクション』は、昨年9月発売の『浮遊ギミック』
続くミニ・アルバム第2弾。

前作収録の「ミュージック・プランクトン」に代表される、
エッヂーなギター・サウンドに絡むやや難解でいて
遊び心に溢れた歌詞がSAKANAMONの特徴のひとつで、
今回もその辺は遺憾なく発揮されている。

今回のリード曲「カタハマリズム」の詞とメロディの
関係性ではそれが更に磨きがかかり、オリジナリティと
爆裂度、すごいレベルに到達している。
そして重要なのは、独自でありながら彼らの音楽は
あくまでもキャッチー、ということ。
それでこそポピュラー・ミュージック。

わかりやすい言葉並べたり、歌いやすいメロディなら
キャッチーっていうわけじゃないんだよ、
ということをSAKANAMONは教えてくれる。

その他、「脳内マネジメント事情」、「四畳一間の哲学」
での際どくギリギリな音楽的言葉遊び、複雑な構成なのに
カタルシスに満ちた「淡麗アルコロニカ」、美しき轟音で
聴く者を違う場所に連れて行ってくれる「ピラミッドの少女」、
全5曲それぞれが違う貌でSAKANAMONの魅力を
伝える内容となっている。

彼らをご存じない方は、まずは「カタハマリズム」のMVをどうぞ。

まだ全員20代前半。
前途洋々。

藤森、木村、森野。
やたらと「木」が多いメンバーの苗字(笑)。

興味深い対バンのイヴェントも続々と決まりつつあるので、
ライヴもぜひ。
近いところでは今日5月16日の下北沢GARDEN、
5月24日の新宿LOFT。
6月30日にはリリース記念の自主企画を下北沢Shelter、
7月5日にはスペースシャワー列伝にも出演する。
ライヴの詳細はこちらをどうぞ。
ヴォーカル藤森の天然っぷりを筆頭とした、
それぞれキャラの立っているメンバーを確認してほしい。

*************************************************

今年は自分が関わった作品が続々とリリースされる。
その都度このブログで報告しますので、ぜひとも
チェックのほど、よろしくお願いします。
wilsonicクオリティは、あなたの音楽ライフを充実させる
ことをお約束します(結構本気)。


2012年4月26日木曜日

wilsonic works 20


昨日4月25日は、タニザワトモフミの3rdアルバム『何重人格』の発売日。
僕は今回このアルバムのトータルのプロデューサーとして参加した。

トータルの、という言葉を使うのは、各曲にサウンド・プロデューサー、
アレンジャーが存在するから。
『何重人格』は4つのレコーディング・セッションで作られた
12曲が収録されている。

バンド、ソロ・アーティストを問わず、このような作りのアルバムは
最近はあまり多くないのではないか?
大体は一つのトーンでまとめていることが多い。
あとは、シングル曲だけ有名プロデューサー使って、
他はセルフとか、新進のアレンジャーを使う、というパターン。

なぜなら、複数のサウンド・プロダクションでやると、

1. 全体をまとめること、統一感を出すことが難しい。
2. スケジュールの管理が大変。
3. 合理的ではないので予算がかさみがち。

そしてなにより、

4. とにかく面倒くさい。

というような理由から、アルバム全体をひとつの
サウンド・プロダクションで貫き通すことが多いのだろう。

僕がこの世でいちばん嫌いな言葉は、「面倒くさい」。
冗談以外ではこの言葉をなるべく使わないようにしている。

だって、面倒くさいことをなんとか工夫して努力して
乗り越えてこそ、楽しいゴールが待っているんじゃないの?
面倒くさいことを回避して楽ちんに物事を進めても、
最大でも想像通りの結果しか得られない。
そんなのつまんないじゃないか。

というわけで、思いついちゃったらどんなに大変だろうが
理想に向かって走り始める僕でして、昨年8月に立ち上がった
このアルバムの構想、いつしか曲ごとに違う主人公がいて、
それに応じた歌詞を作り、ってことはアレンジも変えて、
なんならサウンド・プロデューサーも複数ピックアップしよう、
というようなことを考えてしまった。
タニザワくんとのディスカッションの末にそうなったので、
僕だけの責任ではないと思うが、タニザワくんを
非常に面倒くさい作業に付き合わせてしまったことは確か。
多分彼の労力、負担はこれまでのどの作品よりも
多かったと思われる。
ごめんね。

でもね、その甲斐はあったと思いますよ僕は。
前作『日本に落ちてきた男』が大傑作であるのは
もう日本ポップス界の常識ですが、その後に
出す "待望のニュー・アルバム" という期待に
きっちり応えられるものが出来たんではないか?
と自負しております。


では今回関わってくれた4つのサウンド・プロダクション
の説明をば。

まずは『日本に落ちてきた男』をを全編サウンド・プロデュース
した驚異のポップ・マエストロ、石崎光(cafelon)。
アルバム・リード曲である「四季娘」を始めとして、
4曲を担当。ビートルズを始祖とするグレート・ブリテン・マナー
満載のアレンジでタニザワくんの曲を引きたてています。
エンジニアは柏井日向。このチーム、信頼度抜群!

そしてタニザワくんとはインディーズ・デビュー当時からの
盟友である、sugarbeans。シンガー・ソングライターであり、
ドラマーでありキーボーディストであり、もちろんアレンジャー、
プロデューサーである彼は、変幻自在のアレンジで
タニザワくんを料理。アルバムのオープニングを飾る
「世界一周ノスゝメ」含む3曲で腕を振るってくれた。
彼が関わるとなんか無国籍な?異国情緒が醸し出される
のが不思議。

前作『日本に~』のアートワークやMVを手掛けた
SLEEPERS FILMのメンバーであり、バンドgolfのメンバー
であり、タニザワトモフミのライヴ・バンドのギタリスト
でもある関根卓史が2曲で参加。
基本彼とタニザワくんとだけで構築するデスクトップ・ミュージック。
すっとぼけて坦々と進む「ラブラブ♡MP3」と、
爆裂する料理ソング「炒飯奉行」、全く性格の違う2曲に
仕上げてくれた。

そして残る3曲がグレンスミス
昨年リリースされた『ROMAN ALBUM』は僕の2011年
邦楽アルバム・チャートBEST3に入るくらいの衝撃だった。
それをタニザワくんに聴いてもらったところ、彼もえらく
気に入ってくれて。一緒に曲作りたいよねーということで
ダメモトでオファーしたところ、快諾いただいた。
グレンスミスにとっても初めての他流試合、そして
クノシンジがグレンスミスに参加してから初めての
セッションだったこともあり、最初は手探り状態から
スタート。しかし、セッションを重ねるごとに呼吸が合ってきて、
最終的には素晴らしい3曲が出来上がった。

以上4種類のセッション。
それぞれに試行錯誤や紆余曲折は当然あったけど、
結果的には絶妙なバランスでアルバムの中で
それぞれが光を放っているのではないか、と。
オフィシャル・サイトで全曲試聴出来ますので是非。
そしてこのある意味バラバラな音たちを、見事に
1枚のアルバムとしてまとめ上げてくれた
マスタリング・エンジニアは日本が誇る世界の小鐡こと、
JVCマスタリング・センターの小鐡徹
今までもそうですが、今回さらに小鐡さんの腕に
シビレました。平伏!

今回、ヴィジュアル周りに関しては僕は関与してませんが、
ジャケットのADはファンタジスタ歌麿呂さん、
「四季娘」MVの監督は山崎連基さん。
お二人ともタニザワくんの音楽に共鳴してくれて、
素晴らしい作品に仕上げてくれています。

しかし『何重人格』っていうタイトル、しみじみいいなー。
リリースになった今、改めて思う。


p.s.
僕とタニザワくんとのこれまでに関しては、こちらのエントリ
をお読みいただくと、なんとなくおわかりいただけるか、と。
あと、『日本に落ちてきた男』はアルバムの内容は
もちろんのこと、ライナーノーツも読み応えありますんで、
まだお持ちでない方は是非ともご購入のほどを。
買わないと読めません(笑)。


2012年4月18日水曜日

wilsonic works 19


今日4月18日は東京カランコロンのニュー・シングル、
「×ゲーム」の発売日。
昨年の「少女ジャンプ」同様、プロデューサーとして関わった。

「少女ジャンプ」のメイン・ヴォーカルはせんせいだったけど、
今回のメインはいちろー。
彼の伸びやかなハイ・トーンが活きるメロディックな楽曲。
なんか、曲ももちろんだけど、詞の評判も良いみたい。

これまでの東京カランコロンは、すべての作詞作曲編曲を
バンド内で賄ってきたけど、今回の表題曲「×ゲーム」には、
共同アレンジでcafelonの石崎光くんが参加しており、
カランコロンのサウンドに華を加えてくれている。

光くんは多分このブログでいちばん頻繁に名前が出てくる
ミュージシャン & プロデューサーなのではないかな?
来週も彼の名前登場の予定w
つまり、僕がここ数年、最も信頼しているアレンジャー、
サウンド・プロデューサーの一人である、と。
ホント、いつも期待以上の貢献をしてくれて、
毎回多くの刺激を与えてくれる。

カップリングの「true! true! true!」はライヴでの超人気曲
の待望の音源化。こちらもメインはいちろーで、ファルセットを
駆使した80‘s的ダンサブルなアッパー・チューン。

音源としては以上の2曲だけど、CD-EXTRAで4曲の
ライヴ映像が収録されているのがまたお得。
ライヴに定評のある彼らの、今年1月に開催された、
"ワンマ ソフェス2012"での映像をお楽しみあれ。

************************************************

そんなニュー・シングルの発売日だった本日。
僕は都内某スタジオでレコーディングをしていたのだが、
殊の外作業がスムーズに進み、19時にはお役御免となった。
おかげで行けないと思っていた東京カランコロンの
新宿LOFTでのライヴに駆けつけることが出来た。

曲が出来た頃、アレンジがなかなか固まらないままに
試行錯誤でライヴ演奏されていた「×ゲーム」が、
今日はすっかりと彼らの代表曲のように響いていた。

カランコロン自身のバンドとしてのスキルアップもあるし、
バンドと石崎光くんとでいろんなアレンジのアイディアを
出し合って出来上がった、という経緯の結果でもある。


ひとつの曲が、デモや弾き語りの状態から完成品に
出来上がるまでの経緯を見守ったり監督したりするのが
僕のメインの仕事。
そこにルーティンはない。毎回新しいことが起きる。
だからこの仕事はいつも新鮮で飽きることがない。

その積み重ねで、今日みたいにバンドや曲が着々と
"成長"していく経過を一緒に体験、もしくは目撃出来る。
これこそこの仕事の醍醐味だよなあ、と改めて。

ロフトに行けてよかったなー。
レコーディングをサクサク進めてくれた某アーティスト
にも感謝だなー。
っていうか、こういう流れって偶然やラッキーじゃなくて、
絶対そのライヴは観ることになってるんだよ、とか。
まあいいか、そんな話は。

そんなわけで急成長中の東京カランコロンの
ニュー・シングル、「×ゲーム」をよろしくです。
毎回素晴らしいアートワークは古賀鈴鳴さん。
今回はカランコロン史上最もヴィヴィッドな色遣いですね。

そして、メンバーの役者魂炸裂?のMVも必見ですよ。















2012年3月7日水曜日

LOST IN TIME 10th Anniversary


LOST IN TIMEが今年デビュー10周年。
それを記念して、初めてのベスト・アルバムが2種、
本日3月7日にリリースされる。

タイトルは『BEST きのう編』『BEST あした編』
2枚合わせて全33曲。
うち、新曲が5曲。
僕がプロデュースで関わった曲は7曲収録。

それぞれ1枚モノとして独立しているのだが、
初回限定特別仕様の2枚組もある。
しかもこちらには、ドラマー大岡源一郎の視点で
捉えた彼らの10年間が読めるヒストリー・ブックが
同梱されている。

読みました。読み応えあって相当面白い。
源ちゃんの視点は、当事者でありながら冷静で、
冷静でありながら愛情にあふれており、
彼の存在がLOST IN TIMEというバンドの10年を
下支えしてきたんだな、ということがよーくわかる。

そして、もしお近くにタワーレコードがある方は、
そちらでこの2枚組限定盤を購入するといい。
なんと太っ腹にもタワレコ限定で約60分にも及ぶ
ヒストリーDVD「すべては風の吹くままに」がもらえるから。

これ、10年間の貴重なライヴの映像、歴代メンバーの
証言、コメントをヴォーカル海北大輔のナレーションで
綴る、ファンならマストな内容なのだ。
そして、ワタクシ竹内も証言者の一人としてDVDに
参加させていただいております。

ひと足お先に送付いただき、DVDを堪能させてもらった。
これがもう丁寧に丁寧に作られており、特典なのにおしげもなく
労力がつぎ込まれていて相当びっくりした。
フツーに売り物のヒストリーDVDレヴェルですよ!
僕もちょっと顔を出す予告編でご確認を→http://youtu.be/JU9shTqlI5M

メンバーのみならず、彼らをとりまくレーベルやマネージメントの
スタッフ全員の誠実さがそのままカタチとなったかのよう。

こういう姿勢があるからこそ、10年間続けてこれたのだろうし、
誠実にいたからこそ、ファンは彼らを信頼するのだろう。
改めて背筋が伸びるなー。

そんな彼らの歴史の一部に関われたことを、誇りに思います。

海北くん、源ちゃん、三井くん、
これからも、お互い躓いたり迷ったり悩んだり笑ったりしながら、
少しずつ前進していきましょう。

10周年、おめでとう。


p.s.
これまでの僕とLOST IN TIMEとの関わりについて
触れたブログのエントリは以下のとおり。
2008年、シングル「希望」のときはこちら
2009年、『明日が聞こえる』のときはこちら
2010年、『ロスト アンド ファウンド』のときはこちら





2012年2月1日水曜日

wilsonic works 18


今日はスピッツのSPECIAL ALBUM『おるたな』の発売日。

SPECIAL ALBUMっていうのは、オリジナル・アルバムではない、
くらいの意味合いで、第1弾となる『花鳥風月』をリリースする
ときに考えた名称。今となってはちょっと安易過ぎたかなー、
とも思うけど、まあいいか、実際スペシャルだから、などと
自分に言い聞かせている。

『おるたな』は、その『花鳥風月』(1999年)、2004年の『色色衣』
に続く第3弾。

これまではシングルのカップリングを主体としていたものが、
今回はカップリング曲とカヴァー曲とで構成されている。
昨年末、TVドラマ『僕とスターの99日』主題歌に起用された
原田真二「タイム・トラベル」のカヴァーも、このアルバムで
ついに初ディスク化。

そして、初回封入特典。
前作まではメンバーの座談会を封入していたんだけど、
今回はなんと僕が書いた「制作ノート」というものが封入
されています。

実はスピッツって、これまでにいろーんなカヴァーをやって
きているんですよ、ということや、レコーディング時の
状況や曲にまつわるエピソードなどを書いています。
気になる方は初回盤をゲットして読んでみてください。

っていう告知だけじゃなんなんで、ここではそこには書かなかった、
とても印象に残っている、スピッツのカヴァー曲の話を。

時は1992年4月25日。
ミニ・アルバム『オーロラになれなかった人のために』発売日に
行われた、弦管を入れたスペシャルなコンサートが、いまはなき
有楽町よみうりホールにて行われた。
コンサート・タイトルは非常に長いんで書きたくないくらいだけど(笑)、

「オーロラになれなかった人のために “蜜柑色の満月のもとで、
まぼろしの物語を語ろう ~一夜限りの絵空事~”」

でした。長すぎる。

この日、コーラスの寺本りえ子さんと一緒にデュエットしたのが、
ベッツィ&クリスの名曲「花のように」。
デビュー曲「白い色は恋人の色」に続く第2弾シングル、
作詞作曲はデビュー曲に引き続き北山修、加藤和彦のコンビ。

これがねー、もう絶品だったんですよ。
オリジナルは姉妹だから両方女声なんだけど、
マサムネの声がうまーく寺本さんと混じって。

でも、お客さんには通じたのかなぁ?
デビュー2年目のロック・バンドの弦管入りスペシャル・コンサートで、
20年以上前のヒット曲を披露する、という構図。
「花のように」リリース時、スピッツのメンバーは2歳だから、
同年代の人間はまず知らない曲。
実にチャレンジングな試み。

「ロビンソン」で大ブレイクする3年も前、そんな無茶な選曲をして、
アイデンティティを模索していた、ということなんだろうな。

といったこととかいろいろ思い出しながら書いた
『おるたな』の「制作ノート」、お楽しみいただけたら幸いです。

あ、初回盤は3面デジパック仕様で冬野さほさんのイラストが
ぐっと映える作りとなっていますので、お早めにどうぞ。

と、こんなところで2012年初のブログを終わりたいと思います。


p.s.

もひとつ思い出した。

1992年4月25日のよみうりホール、
発売日なので『オーロラになれなかった人のために』
即売の陳列をしようと商品を取り出したところ、
僕と販促担当の人間は蒼ざめた。
なんと、ブックレットの表1と表4が逆になってセットアップ
されていたのだ。
つまり、表1が “9分割の写真” ではなく、“手のひらの上に洋梨”
という状態。
2週間前に上がっていたサンプル盤では正しく入っていたのに!

その後のバタバタはよく覚えていない。
その日の即売は取りやめたのかすらも。

全国に出回った商品は出来る限り回収&交換したが、
当然全部を回収できるはずもない。
その時ブックレットが反対に入ったCDを購入し、
シュリンクしたまま持っている方がいたら、
それは相当にレアなものです(笑)。








2011年12月20日火曜日

wilsonic works 17



昨日深夜、来年2月1日にリリースするスペシャル・アルバム、
『おるたな』のニュースが発表されたけど、今日は12月20日。
ライヴ映像作品『とげまる20102011』の店頭入荷日なので、
今日はそちらのことを。


2009年にリリースした『JAMBOREE TOUR 2009 ~さざなみOTRカスタム
at さいたまスーパーアリーナ』から2年ぶりとなるライヴ映像作品。


アルバム『とげまる』リリース前の2010年6月の神奈川県民ホール、
リリース後、2011年7月のさいたまスーパーアリーナという、
2会場の模様を、『とげまる』収録曲を中心に全19曲を編集したもの。
監督は前作に引き続き番場秀一


そして今回、いつものDVDに加え、スピッツにとって初の
Blu-rayフォーマットでのリリースというのもトピックだ。


Blu-ray、既に導入されている方はご存じでしょうが、
情報量ホントにハンパないっすね。
今まで、ユーザーとしてBlu-rayを体験してはきたけど、
今回は作り手側として初めてそれに触れてつぶさにわかった。


映像はもちろんのこと、音もDVDとは全然違う。
ましてやCDなんて相手にならない。
詳しいお話はここではしませんが、要するに扱える情報量が
Blu-rayはDVD(もちろんCDも)に比して桁違いに増えているので、
作り上げた音そのものを再生できる、というわけなんです。
CDやDVDではどうしても圧縮せざるをえなかったものが、
Blu-rayではそのまんまお届けできる。
これはすごいことですよ。
(注:DVDオーディオはまた別物なのでお間違いなきよう)


よっぽど酔狂な人じゃなければBlu-rayとDVD両方買う人なんて
いないと思いますが、もし較べる機会があったらぜひとも試してほしい。
今どきのテレビなら、その違いがわかるはずだから。


残念ながら、今はまだBlu-rayのほうがDVDよりもやや割高に
なっているけど、もしBlu-Rayの再生装置をお持ちなら、迷わず
そちらをお勧めします。


もちろん、DVDが全然ダメ、とかそういうことではない。
DVDの中で出来る最善を尽くしていますので、そこはご心配なく。


さてさて、フォーマットの話はこの辺にして、今回も初回限定版
にはいろんなオマケが付いています(DVD、Blu-rayともに)。


まず、映像のボーナス・ディスクは、
2005年11月27日にZEPP TOKYOで行われた
SPITZ JAMBOREE TOUR "あまったれ2005" から8曲。
約6年前のスピッツのライヴハウスでの模様が観られます。
本編ディスクがアリーナとホールなので、このボーナス・ディスクで
3種類の大きさのステージでのスピッツが楽しめる、という趣向。


『放浪隼純情双六』という、長尺の限定ライヴDVDを
出した後のツアーで、当面商品として出す予定が無かったので
後々のために撮り溜めていたものの一つ。
2009年、2011年とその後のライヴ映像商品が発売されることで
いよいよ発表のタイミングを逃してしまったため(笑)、
今回遂にボーナス映像として初お目見えと相成った。
ライヴハウスならではのアグレッシヴなステージング、そして
本編より6歳若いスピッツをお楽しみください。


さらに初回版には、前回好評だったライヴCDが今回も2枚。
映像本編はさいたまスーパーアリーナと神奈川県民ホールの
映像が入り乱れる曲順になっているが、CDは神奈川で1枚、
さいたまで1枚、という全くの別編集になっている。
映像には含まれていない部分もあったりするので、違いを
見つけてニヤニヤしていただければ幸いです。


ところで。


今年、スピッツはCDを1枚もリリースしなかった。
3月に予定していて4月に延期になった『とげまる』のアナログ
ミュージック・ヴィデオ集『ソラトビデオCOMPLETE 1991-2011』
そして今回のライヴ映像作品と、CDフォーマット以外のものだけ。
ドラマ主題歌「タイム・トラベル」は着うた®のみ。


2003年以来ですかね、シングルもアルバムも出さなかったのは。
ま、そういう谷間もあります、長いことやっていると。
ただ、CDというフォーマットが存亡の危機にあることは確か。
登場以来30年。もう役目は終えたのではないか?、とか。
その辺のことはまたいずれ。


年の瀬です。
年内もう一回くらいこのブログ、更新したいと思っている。
けど、どうなることやら。







2011年11月7日月曜日

wilsonic works 16


本日11月9日はAJISAIのシングル「EXIT」の発売日。

これで、9月から3ヶ月連続で、自分がプロデュースに関わった
シングルがリリースされたことになる。

そして今月のAJISAI。

3ヶ月連続、
異なるアーティスト、
しかもシングル。
実は、それぞれ僕のプロデュースのスタンスも違う。

ということなので、今回はwilsonic竹内のプロデュースの際の
さまざまなヴァリエイションに関して書こうかな、と。


①HOW MERRY MARRYの場合

彼らは今年メジャー・デビューしたんだけど、実は2009年から
マネージメント・サイドの要請で育成をお手伝いしていた。

曲の作り方のセオリーやテクニックをレクチャーしたり、
吸収しておくべき音楽や映画、書籍などについて話したり・・・。
逆に彼らから僕の知らない世代の文化を教わったり。

日々そんなことをしながら曲作りを進めて行き、実際の
レコーディングでは基本的にはアレンジャー(サウンド・プロデューサー)
に入ってもらって、曲を作り上げる、という流れ。

その際、曲に応じてのアレンジャーやエンジニアの
人選が僕の重要な仕事のひとつだ。

中長期的スタンスで関わることにより、アーティストの志向とスキルと
可能性を吟味できるし、それと世の中のトレンドなどを重ね合わせながら
制作に当たれるのがありがたい。

一緒にいる時間はまだ短いけど、スピッツクノシンジのやり方と
基本同じで、いわば竹内の王道的関わり方がこれ。
フリーランスでこういう関係性を築くのは結構難しいんだけど。
元々メーカー・ディレクターだったから、
2年なら2年の契約期間内にどんな流れで何をするか、
という考え方が身体に沁みついているのかもしれない。


②東京カランコロンの場合

これは今回シングルにすべき曲が既にあり、彼らにとって初のシングル
なので、僕に何かアドヴァイスを、ということでお声がかかった。
従って、曲に関しては一切手を加えていないし、アレンジも
メンバーが考えていたものを少しだけいじっただけ。
ヴォーカル・ディレクションはじっくりと時間をかけてやったけど。

僕がこれまで関わったアーティストでは、グルーヴァーズ
LOST IN TIMEのスタンスにやや近い、かな?
確かな演奏力と曲作りの骨格がしっかりしているバンドとの
典型的な関わり方。
なんで、カランコロンとは是非ともフル・アルバムを一緒に
作りたいなあ、と勝手に思っている。


③AJISAIの場合

カランコロンとは以前からライヴを通じて面識があったが、
AJISAIとはこのレコーディングの話があって、初対面。

もうすぐ結成10年を迎えるキャリアあるバンドなので名前は当然
知っていたし、彼らの結構初期のCDを購入していたこともあり、
ぜひとも喜んで、ということでスタートした。

それまでにメンバーの作った何十曲ものデモと、そこからさらに作る
新曲群を徹底的に聴きこんでチョイス~ブラッシュアップ。
曲を絞り込んで一緒にスタジオに入って入念なリハーサル。
アレンジを固めると同時に詞も詰めて行く。

初めての顔合わせなので、アーティストとの距離、間合いを
測りつつ作業を進めることになる。
ライヴでのパフォーマンスを確認したり、メンバー個々の
キャラクターや考え方を把握したり・・・。
なので、いつもより時間はかかる。

しかし、ここで時間をかけておかないと、
実際のレコーディングに入ってから躓いてしまったり、
出来あがった後に不満が残ったりする場合があるから
慎重に進める必要がある。

ということで準備に2ヶ月。
でも、じっくりと準備したおかげでレコーディングはサクサク
進んだし、結果にメンバーもレーベル・サイドも満足して
くれているのではないか?と思っている。

この経緯、おとぎ話サード・アルバムを作ったときに似ているかも。
有馬くんが膨大な数の曲を短い時間でどんどん作る中、
それを取捨選択しては一緒にリハスタに入ってアレンジを
考えて行く、という流れ。
そして最初おとぎ話のメンバーはレーベルのスタッフから
勧められた僕という存在を、全く信頼も期待もしていなかった(笑)。
いや、AJISAIがそうだったということではなくて、初対面という
ニュートラルな状態からのスタート、という意味で同じだった、と。


以上、3アーティストとの関わり方の違い、でした。


僕はミュージシャンじゃないし、自分で曲を作るわけでもない。
ただ、アーティストが作りつつある音を聴いて、その曲の持ち味を
さらに引き出し、伝えたいことがより伝わりやすいようにするための
お手伝い、アドヴァイスをする。

僕のプロデュース・ワークのキャッチ・コピーは、
"Enhance Your Music" 。
あなたの音楽を向上させます、って感じ。
偉そうに。

でもね。
インディー、メジャー問わず、折角作る音楽じゃないですか。
伝わらないより少しでも多くの人に伝わった方がいいでしょ?
宣伝や営業ではなく、音楽そのものがもっと「伝わる」ものに
なるための制作ノウハウを、20年以上かけて培ってきたつもり。
伝えたい、と思っている人たちに、それが少しでも役立つなら
嬉しいことだなあ、と。

大きなお世話で、単なる勘違い野郎なのかもしれませんが。
今どき、音楽を生業にしようなんて酔狂なことを考えるやつは、
このくらいおこがましくなきゃやってらんないよね、ということで。

うまくまとまらないな。

AJISAIの「EXIT」は、最近のプロデュース・ワークの中では
久々にソリッドなギター・ロックで、自分でも新鮮だったなー。
カップリングはAJISAIの持つ抒情的な面が良く出た
ミディアム・ナンバー。ライヴ音源も入ってお得なんで、
チェックしてみてください。
amazonはこちら。「EXIT」のMVはこちら

さて、今年はあと1アイテムのリリースを残すのみ!