2015年3月24日火曜日

wilsonic works 45


スピッツが2013年9月に横浜赤レンガパークで行った一夜限りのコンサート
“横浜サンセット2013” を映画化した『スピッツ 横浜サンセット2013 -劇場版-』が、
3月21日の横浜ブルク13を皮切りに全国で順次公開される。
3月28日からは、新宿バルト9で公開。

最近音楽と映画のコラボレーションが活発で、洋邦新旧問わず様々な
アーティスト、バンドの映画が製作され、公開されている。
このスピッツの映画には、ドキュメンタリー、密着、証言などは一切ない。
ただただ、当日の様子を出来る限り忠実に再現する目的で
つくられた「コンサート映画」だ。

たった一日限り、スピッツにとって16年振りの大型野外公演とあって、
約15,000枚のチケットに、何倍もの応募が殺到した。
プラチナチケットを手に出来なかったファンにとっては幻のコンサートだった。

2013年から2014年にかけて行っていた『小さな生き物』のツアー先の会場で、
僕の顔を知るスピッツ・ファンの方から、「『横浜サンセット』の商品化、
をお願いします」と懇願されたことも何回かあった。

しかし、この日のステージ、演奏や歌でいくつか大きなミスがあったのだ。
それがどうにも商品化という決断に至らなかった原因のひとつ。
曲をカットしたり、演奏を直したりということも、
このスペシャルなコンサートの意味合いからして考えられなかった。

昨年、『小さな生き物』のリリースに絡むツアーが全て終了した後、
横浜サンセットの映像素材をどうするかをメンバー、スタッフで考えた。
その結果が、
“ミスも含めてその日のそのままをノーカットでまるごと見せるコンサート映画”
という結論だ。
DVD、Blu-ray等のパッケージにはせず、劇場公開オンリー。
より詳しい経緯は、映画のパンフレットに様々なスタッフの
証言があるので、そちらを参照してほしい。

ところで。
前にこのブログでも書いたけど、映画における「ディレクター」は監督のこと。
この映画の監督は、スピッツのライヴ映像作品を多く手掛けている番場秀一。
僕がいつもスピッツの仕事でクレジットされている「ディレクター」
を使うと、監督と間違われちゃうので、この映画での僕の肩書きは
便宜上「サウンド・ディレクター」ということになっている。

こういうときのディレクターの悲哀と喜びについて記しておこう。

このような映画やDVDなど、ライヴ映像作品を作るとき、
僕は当日のステージの模様を生で観ることが出来ない。
横浜サンセットの当日も、僕は音中車(音声中継車)と呼ばれる車の中で、
録音されている音を、ステージの映像を観ながらチェックしていた。
ライヴ・レコーディングにおけるディレクターの仕事とは、こういうものなのだ。
つまり、僕はスピッツのこれまで商品化されたライヴ映像を、生で観たことがない。

ちょっと悲しいんだけど、考え方を変えたら、ライヴ会場の音ではなく、
クリアに録音されたメンバーの演奏をリアルタイムで聴くことが出来るのは、
エンジニアと音中車のスタッフと僕だけ。
なんという特権なんだ!(少し強がってます)

最後にまた映画の話に戻って。

これまで、スピッツのライヴ映像をVHSやLDを経て、
DVDやBlu-rayに定着させる作業を幾度となく行ってきて、
それなりのノウハウは経験してきたつもりだった。
でも、映画はそれらとは全く勝手が違っていた。

2月某日、出来上がった映画を深夜の映画館で、メンバーと共に
コンサート・スタッフや映画スタッフとチェックした。
意味合い的には「完成試写」くらいのつもりでいたのだが、問題勃発。
スタジオでは迫力ある音像だったのに、このとき映画館で流れた音は、
全くパワーが足りないものだった。
これではライヴを追体験する映画にならない。
音を作り直すことになった。

ミキシング・エンジニアやMAエンジニアによる試行錯誤と
ブラッシュアップの作業が毎日のようにあり、日に日に
音質は向上して行った
多くのスタッフのアイディアと惜しみない尽力のおかげで、
なんとか公開までに完璧な音像を作ることが出来た。
演奏だけではなく、映画の中の全ての「音」が生々しく響くものに。
映画(映画館)における音作りは、本当に奥深い。

ということで、『横浜サンセット 2013 -劇場版-』は、
映画館ならではの大画面と大音量でスペシャルなコンサートを
観るという、今までにない体験が出来る映画です。

お近くの映画館でかかったなら、ぜひ。

p.s.
『横浜サンセット 2013 -劇場版-』は、パッケージ化の予定はありませんが、
その後行われたSPITZ JAMBOREE TOUR 2013-2014 “小さな生き物” の
大宮公演を収録したライヴ映像商品、『JAMBOREE 3 “小さな生き物” 』が
7月1日に発売されることが発表されました。
映画に続き、現在これの編集やらトラックダウンなどの作業を進めている最中です。
ご期待ください。







2015年1月2日金曜日

wilsonic annual report 2014


昨年1年間の自分のことをまとめてみます。

まず、本業に関して。

その壱:2014年にリリースされた、竹内が関わった作品
(括弧内は役割&肩書き)

02月 岡本愛梨 mini album『敏感なアンテナ』(producer & director)
02月 岡本愛梨 download single「アタシ劇場」(producer & director)
07月 PERIDOTS album『TIMEPIECE』(director)
08月 ウルトラタワー mini album 『太陽と月の塔』(producer)
09月〜12月 平沢 進 リマスター&リイシュー企画全9w (supervisor)
10月 ココロオークション mini album 『ヘッドフォンミュージック』
   (2曲でarmchair directive)
11月 READ ALOUD (co-producer & director)
12月 The Beach Boys 『All Summer Long』『Smiley Smile』(liner notes)

仕事の内容は2013年と比べると仕事量は減っているが、
ヴァラエティとしては広がった。

ファンになって約10年、ようやくお声がけいただいた
PERIDOTSとのレコーディングはひたすら楽しかった。

9月からの平沢さん関連のリイシュー企画、
12月のビーチ・ボーイズのライナー執筆は本当に嬉しかった。

久々のarmchair directive仕事も楽しかったし、
新しいアーティストとの仕事は常に刺激的。

2015年はどんなアーティストとの出会いがあるだろうか。



その弐:2014年に購入した音楽

洋楽:721アイテム
邦楽:233アイテム

洋楽は順調に購入が減っている。
その分?、邦楽が2割増しくらい。
そして洋楽の購入はフィジカルが減り、ダウンロードが増えた。
DLは主にBandcampで。

昨年の年間報告で書いた、CD類の断捨離がより具体的に
なりそうな予感。
と言いつつ、宣言した書籍関連の断捨離もまだ済んでいない。

その参:2013年行ったライヴ、イヴェント数とアーティスト数

ライヴ・イヴェント:233
アーティスト数(のべ):804

イヴェント数は前年とそんなに変わらないが、
アーティスト数がめちゃ増えた。
サーキット型フェスやオムニバス・イヴェントに
たくさん出かけた、ということなのだろう。

そうそう、水口さんがキュレートするイヴェント、
“Beat Happening!” には時間が許す限りとにかく通った。
2015年も引き続き通う所存であります。


その肆:2014年に観た映画(映画館で観たもの)

2014年に映画館で観た映画の総本数は、258本。
またまた昨年より大幅に増えた。
暇だったんだよなー。
ホント、今年は真面目に仕事しようと思いましたよ。

以下、2014年竹内的良かった映画(鑑賞順)。
2014年日本公開の新作に限ってます。

【洋画20選】

『少女は自転車にのって』
『旅人は夢を奏でる』
『MUD -マッド-』
『なんちゃって家族』
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
『ダラス・バイヤーズクラブ』
『LIFE!』
『ダブリンの時計職人』
『ブルージャスミン』
『グランド・ブダペスト・ホテル』
『リアリティのダンス』
『ぼくを探しに』
『ソウォン 願い』
『365日のシンプルライフ』
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
『物語る私たち』
『ジャージー・ボーイズ』
『アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜』
『ニンフォマニアック パート1』
『インターステラー』
『ゴーンガール』

【邦画10選+1】

『東京戯曲』
『小さいおうち』
『大人ドロップ』
『闇金ウシジマくん 2』
『サッドティー』
『滝を見にいく』
『劇場版テレクラキャノンボール2013』
『こっぱみじん』
『2つ目の窓』
『ほとりの朔子』

『おとぎ話みたい <ニューバージョン>』

マシュー・マコノヒーという役者の素晴らしさを実感し、
今泉力哉という監督の才能にようやく気づき、
沖田修一がやっぱり自分にフィットすることを確認した年だった。

キネカ大森の名画二本立てで観た『わたしはロランス』
には圧倒されたが、日本での初公開は昨年ということで、
残念ながら選には入れられなかった。

新作以外では、イエジー・スコリモフスキ、アレハンドロ・ホドロフスキー、
ジャック・タチ、フランソワ・トリュフォーらの作品をまとめて観る
機会に恵まれたのが何よりだった。
特にトリュフォー没後30周年の全23作品のうち、
17作を観た10月〜11月は、本当に充実していたなー。
つーかこの時期、何にも仕事してなかったなー。

********************************************************

以上、2014 年の年間リポート。
2013年の年間リポートはこちら。



2014年12月2日火曜日

wilsonic works 44


好きだ好きだと云い続けていると、何かが起きたりするものだなあ、と、
感慨も一入な今日この頃。
なんと、明日12月3日に発売されるビーチ・ボーイズの紙ジャケ復刻
6作品の中の2作品の、ライナーノーツを書かせてもらった。

僕の人生の目標のひとつに、

“ビーチ・ボーイズの作品のどこかに、自分の名前がクレジットされる”

というものがあったのだけど、遂に達成してしまった。

リリース全体の内容はこちらを参照ください。
ビーチ・ボーイズの名盤6タイトルが、紙ジャケットでプラチナSHM、
SHM−CD、SACDという3フォーマットでリリースされる。
つまり、全部で18種類のディスクが出る、というわけです。
僕はこの中の『オール・サマー・ロング』と『スマイリー・スマイル』
の解説を担当した。

これまで、邦楽作品のライナーを手がけたことはいくつかあるが、洋楽は初めて。
しかも相手は世界でいちばん好きなアーティスト。
まさかこんな機会に恵まれるとは思ってもいなかった。
オファーがあったときは天にも昇る思いだったが、引き受けた
直後から地獄の日々が始まった。

考えれば考えるほど、文章が書けなくなっていくのだ。
そして、ビーチ・ボーイズのことを好きだ好きだと云いながら、
俺は全然ビーチ・ボーイズのことを知らなかったのだ、
ということに気づかされ、唖然とした。
これまで僕は浴びるようにビーチ・ボーイズの音楽に触れてきたが、
ホントにただボケーっ浴びているだけだったのだ。
他人にその素晴らしさを説明出来るだけの知識も見識も無い。
俺は30年間何をしてきたんだ、とマジ凹みました。

しかし、引き受けたからには自分にしか書けないものを、
と心を切り替えて今更ながらに猛勉強。
家にある膨大なビーチ・ボーイズに関する書籍、映像、音源を
(リーガル、イリーガル共に)改めてチェックし、曖昧な記憶を
訂正するなど、インプットに次ぐインプットに2週間。
その後1週間かけて2本の原稿を書き上げた。

この間、仕事に必要なこと以外、ビーチ・ボーイズ以外の音源を
一切聴かなかった。聴く暇が無かった。
一日中家に籠って何冊もの本を広げて音楽を聴き続けていた。
一度提出した後、3回も書き直したりして、ご迷惑をおかけした。

結果、今の自分に書けることは全て書き切れたと思う。
何より嬉しいのは、ビーチ・ボーイズへの理解がまた一歩進んだこと。
今まで「解説を書く」という姿勢で向き合ってこなかった音楽を、
違う角度から見つめることにより、見えていなかった側面が
浮かび上がってくるのだ。
30年以上聴き続けてきた音楽が、更に新鮮に聴ける歓び!
こういう機会を与えてくれたYさんには感謝しかない。

なお、今回僕が担当した2枚以外のライナーを書かれたのは、
漫画家でThe Pen Friend Clubという素敵なバンドのリーダー
である平川雄一さんと、小説家(BB5の「素敵じゃないか」
を主題歌とした映画『陽だまりの彼女』の原作者)の越谷オサムさん。
僕を含め3人とも音楽評論家ではない、というのが面白い。

お二人の文章、タッチは違えどそれぞれ行間からビーチ・ボーイズ
大好きオーラが出まくっていて、こちらも興奮してくる。
僕の文章がどう読まれるのか想像もできないけど、
これを読んで少しでもビーチ・ボーイズのことをより好きに
なってくれたなら、これ以上の喜びはない。

そして、これを読んでいる方で、まだビーチ・ボーイズを
体験したことがない、あまり知らない、というあなたに。

まあ、何から聴いてもいいんだけど、僕のオススメ。
まずは『オール・サマー・ロング』を聴いてみて。
ここで少しずつですが全曲試聴出来ます。

このアルバムには初期ビーチ・ボーイズのエッセンスが全て詰まっている。
これが気に入ったら、その前後の作品を聴いて、どちらの時代に
進むか決めるといい。
間違っても最初に『スマイリー・スマイル』はやめておきましょう。
自分でライナー書いておきながらナンですが、これは上級者用アイテムです。

というわけで、50年生きてきて初めての洋楽のライナーノーツを書いて、
ウカレている男の自慢話ブログでした。



2014年11月5日水曜日

wilsonic works 43


READ ALOUDの3rdミニアルバム『アカンサス』が11月5日に発売された。

今回はプロデュースが亀田誠治&バンド、僕は共同プロデューサー及び
ディレクターとして関わった。

よく、プロデューサーとディレクターってどう違うんですか?
という質問を受ける。

日本の音楽界では、プロデューサーは主にサウンド面のプロデュースを
指すことが多く、基本的にアレンジもプロデューサーが行うことが多い。
プロデューサー=音楽家、プレイヤーであるのが普通。

ディレクターは、通常レコード会社、レーベルの社員とか契約社員。
(元)ミュージシャンの場合もあるが、ノンミュージシャンの
人も結構いる。役割はいろいろだが、予算、スケジュールの管理などの
事務的な面と、楽曲のクオリティ・コントロールとか、ジャケット等
ヴィジュアル周りまで関わることが多い(『アカンサス』では
僕はヴィジュアルには関わっていません)。

映画界におけるプロデューサー(制作者)が音楽業界のディレクターで、
映画界のディレクター(監督)が音楽界ではプロデューサーと呼ばれている、
と考えると近いかもしれない。

僕の場合は、アーティストによって関わり方が違うので、
その都度肩書きを使い分けている。
今回のREAD ALOUDのミニアルバムでは、ディレクター的役割が
メインで、予算とスケジュール管理、楽曲の粗選びなどをやった。
アルバム全体の構想段階から関わって、詞やメロディ、
コードや構成などの詰めにも関与したため、共同プロデュースの
クレジットも入れてもらった。

実際のスタジオ作業は基本的に亀田さんとメンバーに全面的にお任せして、
僕はただただ“いい曲”が“もっといい曲”になっていくのを眺めていた。

エンジニアは僕が全幅の信頼を寄せる牧野英司さん。
マスタリングはバーニー・グランドマン前田康司さん。

前作から約1年半。これまでの蓄積と、全国を回るツアーで得た
感触とを上手く消化し、丁寧に時間をかけて作った楽曲たち
(今回はクワタユウキだけではなく、メンバー全員が詞曲作りに
関わっている)。
亀田誠治という新たなパートナーによって引き出された
READ ALOUDのプレイの魅力とクワタのヴォーカル力。
『アカンサス』は、今の充実したREAD ALOUDの姿が
余すことなく詰まっている傑作だ。

初監督映画『FORMA』も話題となった映像作家、坂本あゆみさんが
監督した「君の声を思い出す」のMVはこちら。

12月7日には渋谷クラブクアトロでのワンマン・ライヴも決定している。
彼らの音、映像、生演奏にぜひとも触れてほしい。

p.s.

バンド名のREAD ALOUDは、音読、声に出して言う、というような
意味合いだけど、彼らはそれを地で行くというか、何に対しても
真剣に、本気で議論する。遠慮せず、主張する。
メンバー同士でも、他者に対しても。
そして、言ったことには責任を持つ。

事なかれ主義、空気を読む、摩擦を起こさない、なんて若者が
多いこの時代に、彼らのガチンコぶりは新鮮だ。
いつまでもそのREAD ALOUD精神でいてもらいたいし、
僕もなるべくそうありたいと、彼らを見ていて思った次第。




2014年10月7日火曜日

wilsonic works 42


久しぶりに、armchair directiveという肩書きを使った。
明日10月8日発売のココロオークションのアルバム、『ヘッドフォンミュージック』。
これに収録された「ハルカ」と「夏の幻」に、上記クレジットで参加した。
armchair directiveとは、離れた場所からメール等の指示だけで
プロデュースやディレクションを行うこと。
前回これを使ったカルマセーキのアルバムに関してはこちらのエントリを。

ココロオークションは、2011年頃から活動をしている、関西をベースのバンド。
以前から親交のある「見放題」のスタッフが関わっていることもあり、
名前は知っていたのだが、実際にライヴを観たのは去年の見放題が初めてだったのかな。
そのときの印象が思っていたより硬派で、なんかとても良くて、
ライヴ後にスタッフやメンバーにその感想を伝えた記憶がある。

その後、今年に入ってリリースされたアルバム『七色のダイス』
を購入して聴いて、そのメロディのクオリティに改めて驚いた。
そしてメロディをしっかり活かす言葉の乗せ方にも舌を巻いた。
そして何よりもそれを歌うヴォーカル粟子くんのずるい声。
僕はすっかりココロオークションのファンになってしまった。

“タワレコメン”にも選出されたのも頷ける『七色のダイス』
に続く新しい作品作りに協力してほしいという連絡があったのは、
5月に入ってすぐだったと思う。
もちろん二つ返事でぜひとも、と引き受けた。
彼らは大阪在住で、レコーディングも大阪で行うことに
なっていたので、armchair directive方式を採用。
上記2曲に関して粟子くんとメールで何往復かして、形にしていった。

一緒に作業する人との相性や性格にももよるんだろうけど、
僕はこのarmchair directiveという方法、結構気に入っている。
というのも、僕は物事をじっくり考えないと駄目なんです。
打てば響くように当意即妙な面白いアイディアとか出ません。
実際に会って話をしていても、長考に入ることがしばしば。

メールでデモを受け取って、何回も何回も聴き込んだり、
自分でも歌ってみたり、ギターで弾いてみたり、歌詞だけを
じーっと眺めたりして、いろんな可能性を探ってみる。
道筋が見えてきたところで、それを言語化してメールにして返す。
このようにじっくりと考えるやり方が、自分には向いているのだ。

そうそう、8月にリリースしたウルトラタワーのアルバム曲たちも、
曲作りにおいては上記のようなやりとりで進めて行った。
彼らは京都、滋賀在住なので。

ということで改めてこれをお読みの業界関係者やミュージシャンの方へ。
wilsonic竹内は、どちらにお住まいの方とも一緒に音楽を作ることが可能です。
どんなやり方をするのか、お知りになりたい方は、
お気軽に wilsonic@me.com までご連絡ください。

最後は営業になってしまったけど、ココロオークションの
『ヘッドフォンミュージック』、僕が関わった曲以外も
当然良い曲ぞろいなのでおすすめです。
リード曲「ヘッドフォントリガー」のMVはこちら。
ヴィデオの中に登場するメイド姿の女の子、なんか見覚えがあるぞ(笑)。

2014年9月24日水曜日

wilsonic works 41


1989年2月、ポリドール(現ユニバーサル ミュージック)に
アルバイトとして入社。
これが僕の音楽制作人生の始まり。
もう25年も音楽制作に携わっていることになる。

入社したその年、ポリドールからソロ・デビューしたのが、
P-MODELの中心人物であった平沢進。
僕の最初のスタジオ体験は、平沢さんの1stソロ・アルバム『時空の水』だった。
1枚目はアシスタント・ディレクターとして。
2枚目以降はディレクターとして、足掛け7年、平沢さんとの仕事は続いた。

“平沢進 ソロ・デビュー25周年 Project Archetype” と銘打たれた
プロジェクトのリリース第1弾、全4タイトルが9月24日にリリースされた。
詳細はユニバーサル ミュージックの公式ページを参照ください。

このプロジェクトに、僕はファッシネイションの
高橋かしこさんと共に、監修という形で関わった。

平沢さんが1989年から1995年の間にポリドールに残した
作品群をリマスターし、SHM-CDとしてリイシューしよう、
というのが “平沢進 ソロ・デビュー25周年 Project Archetype” 。

今年の春、ユニバーサル ミュージックの、かつての僕の先輩から
この構想をお伺いし、光栄なお話と思い、ご協力を確約する。
オリジナルのディレクターだからといって、こういったリマスターや
リイシューにお声掛けいただくのは、非常にレアなケース。
本当に嬉しかった。

早速前述の高橋かしこさんをブレーンにお迎えすべくご相談をし、
ユニバーサルのスタッフと構想を固めていった。
結果、以下のような考え方にまとまった。

①基本的にはオリジナル盤はストレート・リイシュー
 未発表テイクなどのボーナス・トラックは収録しない
②新規のベスト(コンピレイション)盤を組む
③マスタリング監修を鎮西正憲さんにお願いする
④ライナーノーツを新たに書き下ろす
⑤ライナーの他に各オリジナル盤にはサウンド解説を入れる
 執筆者はサウンド&レコーディングマガジンの國崎晋さん


今回のリマスタリングは非常に意味がある。
19年前〜25年前の作品なので、当時と今ではマスタリングの
意味合い、考え方、システムが全く違っているのだ。

マスタリング監修をお願いした鎮西さんは、1990年から現在まで、
永きにわたり平沢サウンドを支えるレコーディング・エンジニア。
今回リイシューするほぼ全作品を、自身で2012年にリマスタリングした
経験値(2012年のボックス・セット『HALDYN DOME』)もある。
実際のマスタリングはユニバーサルの吉野謙次さんが担当。
このふたりが丁寧に、オリジナルの音を尊重しつつ、より今の世の中に
フィットする音に挑んだ今回のリマスタリング。

結果、とても耳馴染み良く、且つ平沢さんの音楽が持つ特徴を
引き立てた音となった。オリジナル盤を持っている人にこそ、
リマスターの音を確認してもらいたいと思う。

また、オリジナル・アルバムに封入されたライナー・ノーツも
興味深い。1stは高橋かしこさん、2ndは同アルバムのプロデューサー
でもある有島明朗さん、3rdは中野でテクノ専門ショップ「メカノ」
を経営する中野泰博さん。それぞれの視点、それぞれの体験に
よって描かれる平沢初期ソロのお話。
國崎晋さんによる録音機材、録音方法等の文章がこれまた面白い。
機材に疎い人でも楽しめる内容になっているのでご心配なく。

そしてジャケット・デザイン。
オリジナル・アルバムは帯やバック・インレイのデザインを統一し、
その他は元のデザインを生かした。

コンピレイション『Archetype|1989-1995 Polydor Years of Hirasawa』は、
新規デザインで、なんと32ページフルカラーのブックレットという贅沢仕様。
当時のアーティスト写真やそのアウトテイクなど(既発表だがレアなもの)が
多数使用されている。
アート・ディレクション&デザインは、monogrammeの中井敏文さん。

このアルバムでは高橋かしこさんにポリドール期〜現在までの
平沢ソロに関する概論を書いていただき、これが滅法わかりやすい。
そして不肖竹内も、個人的な思い出など交えながら、
全27曲の聴きどころを紹介する文章を書いております。


リマスタリングしたり、解説を書いたり、久しぶりに
鎮西さんと一緒に作業したりするに連れ、いろいろなことを思い出した。
いろんなことに気づいた。

当時平沢さんがどんなに革新的なことをやっていたのか、
僕は全くわかっていなかったんだなー、と恥じてみたり。

初期はスタジオにいろんな人が陣中見舞いに来ていたなー。
みんなでワイワイとコーラスやったりしたなー。

ああ、平沢さんの歌は、鼻濁音が綺麗だなー、とか。

平沢さんは僕のこと「たけちゃん」と呼んでくれた。
しかも「けちゃん」の方が高くなる独特のイントネーション。
そういう呼び方するの、平沢さんだけだった。

僕の全く知らない固有名詞や概念を、平沢さんからいっぱい教わった。
知らなくても生きて行けるけど、知っていたほうが絶対面白いことばかりを。

先日、高橋かしこさんが主催するトーク・イヴェント、
「ニュー・ウェイヴとはなんだったのか」の番外編に
出演した際に、上記のようなことをいろいろお話した。

その日、トーク・イヴェントが終わって、サンレコ國崎さんと
雑談したときに二人で共通した結論が出た。

“平沢進の音楽と出会う人生で良かった!”

このブログをお読みで、まだ平沢進の音楽と出会っていない方。
新規コンピ『Archetype』全曲、少しずつだけどここで試聴できます。
この機会に是非とも出会ってみてほしい。

あなたの音楽ライフに、確実に新しいトビラが開くはず。

2014年8月6日水曜日

wilsonic works 40


wilsonicのお仕事、記念すべき40作目は、滋賀出身、京都を拠点に
活動する若きバンド、ウルトラタワーのデビュー・ミニアルバム。
タイトルは『太陽と月の塔』。
全6曲、プロデュースに全面的に関わった。

まだ22、23歳という若さながら、バンド歴は7年目を数える。
メンバーのうち3人が中学校のときに結成した前身バンドに、
他校でひとつ歳上のドラマーを迎え入れて、ウルトラタワーが始まった。

マネージメント・サイドから、彼らのことを聞いたのは昨年夏。
いくつかの曲を聴かせてもらって、そのメロディのキャッチーさに唸った。

その後いくつかのミーティングを経て、正式にプロデュースすることになり、
昨年12月から本格的にデビュー盤のための準備を始めた。

ウルトラタワーの曲作りはちょっと面白い役割分担になっている。
基本、作曲がヴォーカルの大濱、作詞がギターの寺内、という枠組み。
逆パターンは結構あるけど、歌う人が作詞をしないというのは珍しい。
しかも寺内の書く詞は、ストーリーやイマジネーションに溢れた
今どきあまり類を見ないファンタジックな作風で、非常に個性的なものだ。

まずメロディを大濱が作り、それに対して寺内が詞をつけていく
(以前は詞が先のことが多かったようだ)。
ひとりだけで作詞作曲を完結させない形は、うまくいくと
とんでもない化学変化が起こる可能性がある。
逆に、お互いが全く違うことを考えていると、
見るも悲惨な結果を招くことになる。

今回、新曲を作るに当たって僕がいちばん丁寧に扱ったのは、
この部分。曲作りのリレーション、その交通整理だ。

作曲者、ヴォーカリストは作詞をする人の考えや物語を読み取り、
作詞者は作曲者のメロディの意図を考慮し、ヴォーカリストの
歌いやすさを考える。
こういう思慮深さも大切だし、違和感があるときは伝え、
主張すべきことははっきりと云う、というような姿勢も非常に重要。

これ、自分で全部書いて歌う人は、知らず知らずのうちに
(もしくは自覚的に)やっていたり、お互いの立場を少しずつ
譲り合ったりしてるんだけど、分業になるとそれぞれ自分で
精一杯でだったり遠慮したりで、うまく伝わらない場合が多い。

70年代の歌謡曲などを聴くとその素晴らしき分業制がよくわかる。
「このシンガー」のために、
「作詞家」がこのテーマで詞を書き、
「作曲家」がその言葉にこういうメロディを付け、
「編曲家」がこういう楽器を使ってこんなイメージにした、
ということが。

忘れがちだけど、シンガー・ソングライターだって基本は同じ。
上記のような分業制を踏まえておかないと、
自分に甘いジャッジしかできなくなる。

この文字数だと元々のメロディを変化させないとうまく乗らない。
じゃあ変えちゃえって簡単に変えてしまい、元々持っていた
良いメロディを崩してしまったり。
その言葉をこのメロディに乗せたらイントネーションが
おかしくなるけどまあいいや、とか。
この音符の長さでその言葉だと歌いにくいけど、ガマンすればいいよね、とか。

このような妥協は曲の純度を下げてしまうだけだ。

歌詞とメロディの関係には、いろんなルールがある。
別に絶対に守らなければいけないわけじゃないけど、
ルールは知らないより知っていたほうがいい。
知った上でわざと破ったり踏み外したりするのは「個性」。

ウルトラタワーがせっかく作詞作曲を分業しているので、これを
更なる強みにするため、上記のようなことをあーだこーだと
レクチャーしながら曲作りをサポートした。
2ヶ月くらいかけていろんなことを共有して出来上がったのが
「RUBY SPARKS」と「星降る街」。
他の4曲は自主制作のCDに収録したことがあったり、
何らかの形で曲として出来ていたものを新たに録り直したものだ。

関わっている僕が云うのもなんだけど、本当によく練り上げられた
曲が揃っているミニアルバムだと思う。
タイトなリズムと2本のギターのアンサンブルが基本。
そこに大濱のちょっとハスキーで印象的なヴォーカル。
彼のハイトーン・ヴォイスはウルトラタワー最大の武器だ。
ピアノやストリングスを入れた壮大な作品もあり、
ロック・ファンだけではなく幅広い層に指示され得る音楽が鳴っている。

オフィシャルで全曲少しずつ聴けるのでよろしければぜひ。
あと、映画『ハイキック・エンジェルズ』等で活躍中の
宮原華音さんをフィーチュアした「RUBY SPARKS」のMVはこちら。
僕のことも少しふれているバンド初のインタヴュー記事はこちら。


以下はちょっと違う角度から。

実は初めてマネージメント・サイドから彼らのことを紹介されたとき、
僕は彼らの曲を聴くのは初めてだと思っていた。
しかし違っていたのだ。
家に帰って調べると、僕は彼らが2010年にリリースした
1stシングル「Little Globe」を持っていた。
いったい何処でいつ購入したのかさっぱり覚えていない。
しかし、改めて聴くと、曲だけはしっかり覚えていた。
非常に強い曲だったので印象に残っていたのだ。

今回のウルトラタワーとの出会い(再会)と、その後の進行具合は、
そんな偶然とか必然とかがない交ぜになった、いろんな「縁」があった。

まず、マネージメントは僕がクノシンジくんでご一緒した方が関わっている。
レコード会社の制作責任者は、かつてポリドールでスピッツのデビューの
ときに販促マンとして関わってくれた同僚。
上記2名、ともに僕と同い歳の50歳。

エンジニアは僕のたっての希望でmixmixの佐藤雅彦さん。
彼とは99RadioServiceのシングルでご一緒して以来。
いろいろお骨折りいただいたが、結果的に全員が満足する
音に仕上げてもらった。感謝してもし切れない。

2曲のストリングス・アレンジには信頼の竹内印、棚谷祐一さん。
スピッツ、セロファン、ゲントウキ、クノシンジ、おとぎ話、
LOST IN TIMEと、竹内の数々のお仕事に関わってもらった
棚谷さんに久々にご登場願い、素晴らしい弦のスコアを書いていただいた。
そして超久々に生ピアノも。
現場ではいろいろトラブルありご心配おかけしましたが、仕上がり最高!

avexのディレクター氏が今回のアートワーク周りのスタッフとして
ピックアップしたのが、阿萬企画の阿萬智博さん。
1996年頃からグルーヴァーズのジャケットでお世話になり、一時期
相当ガッツリ仕事をさせてもらった仲。
この人選にはホントにビックリした。

何かが起きるときは、このように誰が仕組んだわけでもなく、
後から考えればあーなるほどねー、なんていう「必然」が
あちこちに転がっているものなのだ、と思った次第。

ということで、ウルトラタワー、デビューおめでとう。
これからいろんな面白いこと、起こしていこう。