2014年9月24日水曜日
wilsonic works 41
1989年2月、ポリドール(現ユニバーサル ミュージック)に
アルバイトとして入社。
これが僕の音楽制作人生の始まり。
もう25年も音楽制作に携わっていることになる。
入社したその年、ポリドールからソロ・デビューしたのが、
P-MODELの中心人物であった平沢進。
僕の最初のスタジオ体験は、平沢さんの1stソロ・アルバム『時空の水』だった。
1枚目はアシスタント・ディレクターとして。
2枚目以降はディレクターとして、足掛け7年、平沢さんとの仕事は続いた。
“平沢進 ソロ・デビュー25周年 Project Archetype” と銘打たれた
プロジェクトのリリース第1弾、全4タイトルが9月24日にリリースされた。
詳細はユニバーサル ミュージックの公式ページを参照ください。
このプロジェクトに、僕はファッシネイションの
高橋かしこさんと共に、監修という形で関わった。
平沢さんが1989年から1995年の間にポリドールに残した
作品群をリマスターし、SHM-CDとしてリイシューしよう、
というのが “平沢進 ソロ・デビュー25周年 Project Archetype” 。
今年の春、ユニバーサル ミュージックの、かつての僕の先輩から
この構想をお伺いし、光栄なお話と思い、ご協力を確約する。
オリジナルのディレクターだからといって、こういったリマスターや
リイシューにお声掛けいただくのは、非常にレアなケース。
本当に嬉しかった。
早速前述の高橋かしこさんをブレーンにお迎えすべくご相談をし、
ユニバーサルのスタッフと構想を固めていった。
結果、以下のような考え方にまとまった。
①基本的にはオリジナル盤はストレート・リイシュー
未発表テイクなどのボーナス・トラックは収録しない
②新規のベスト(コンピレイション)盤を組む
③マスタリング監修を鎮西正憲さんにお願いする
④ライナーノーツを新たに書き下ろす
⑤ライナーの他に各オリジナル盤にはサウンド解説を入れる
執筆者はサウンド&レコーディングマガジンの國崎晋さん
今回のリマスタリングは非常に意味がある。
19年前〜25年前の作品なので、当時と今ではマスタリングの
意味合い、考え方、システムが全く違っているのだ。
マスタリング監修をお願いした鎮西さんは、1990年から現在まで、
永きにわたり平沢サウンドを支えるレコーディング・エンジニア。
今回リイシューするほぼ全作品を、自身で2012年にリマスタリングした
経験値(2012年のボックス・セット『HALDYN DOME』)もある。
実際のマスタリングはユニバーサルの吉野謙次さんが担当。
このふたりが丁寧に、オリジナルの音を尊重しつつ、より今の世の中に
フィットする音に挑んだ今回のリマスタリング。
結果、とても耳馴染み良く、且つ平沢さんの音楽が持つ特徴を
引き立てた音となった。オリジナル盤を持っている人にこそ、
リマスターの音を確認してもらいたいと思う。
また、オリジナル・アルバムに封入されたライナー・ノーツも
興味深い。1stは高橋かしこさん、2ndは同アルバムのプロデューサー
でもある有島明朗さん、3rdは中野でテクノ専門ショップ「メカノ」
を経営する中野泰博さん。それぞれの視点、それぞれの体験に
よって描かれる平沢初期ソロのお話。
國崎晋さんによる録音機材、録音方法等の文章がこれまた面白い。
機材に疎い人でも楽しめる内容になっているのでご心配なく。
そしてジャケット・デザイン。
オリジナル・アルバムは帯やバック・インレイのデザインを統一し、
その他は元のデザインを生かした。
コンピレイション『Archetype|1989-1995 Polydor Years of Hirasawa』は、
新規デザインで、なんと32ページフルカラーのブックレットという贅沢仕様。
当時のアーティスト写真やそのアウトテイクなど(既発表だがレアなもの)が
多数使用されている。
アート・ディレクション&デザインは、monogrammeの中井敏文さん。
このアルバムでは高橋かしこさんにポリドール期〜現在までの
平沢ソロに関する概論を書いていただき、これが滅法わかりやすい。
そして不肖竹内も、個人的な思い出など交えながら、
全27曲の聴きどころを紹介する文章を書いております。
リマスタリングしたり、解説を書いたり、久しぶりに
鎮西さんと一緒に作業したりするに連れ、いろいろなことを思い出した。
いろんなことに気づいた。
当時平沢さんがどんなに革新的なことをやっていたのか、
僕は全くわかっていなかったんだなー、と恥じてみたり。
初期はスタジオにいろんな人が陣中見舞いに来ていたなー。
みんなでワイワイとコーラスやったりしたなー。
ああ、平沢さんの歌は、鼻濁音が綺麗だなー、とか。
平沢さんは僕のこと「たけちゃん」と呼んでくれた。
しかも「けちゃん」の方が高くなる独特のイントネーション。
そういう呼び方するの、平沢さんだけだった。
僕の全く知らない固有名詞や概念を、平沢さんからいっぱい教わった。
知らなくても生きて行けるけど、知っていたほうが絶対面白いことばかりを。
先日、高橋かしこさんが主催するトーク・イヴェント、
「ニュー・ウェイヴとはなんだったのか」の番外編に
出演した際に、上記のようなことをいろいろお話した。
その日、トーク・イヴェントが終わって、サンレコ國崎さんと
雑談したときに二人で共通した結論が出た。
“平沢進の音楽と出会う人生で良かった!”
このブログをお読みで、まだ平沢進の音楽と出会っていない方。
新規コンピ『Archetype』全曲、少しずつだけどここで試聴できます。
この機会に是非とも出会ってみてほしい。
あなたの音楽ライフに、確実に新しいトビラが開くはず。