2014年12月2日火曜日

wilsonic works 44


好きだ好きだと云い続けていると、何かが起きたりするものだなあ、と、
感慨も一入な今日この頃。
なんと、明日12月3日に発売されるビーチ・ボーイズの紙ジャケ復刻
6作品の中の2作品の、ライナーノーツを書かせてもらった。

僕の人生の目標のひとつに、

“ビーチ・ボーイズの作品のどこかに、自分の名前がクレジットされる”

というものがあったのだけど、遂に達成してしまった。

リリース全体の内容はこちらを参照ください。
ビーチ・ボーイズの名盤6タイトルが、紙ジャケットでプラチナSHM、
SHM−CD、SACDという3フォーマットでリリースされる。
つまり、全部で18種類のディスクが出る、というわけです。
僕はこの中の『オール・サマー・ロング』『スマイリー・スマイル』
の解説を担当した。

これまで、邦楽作品のライナーを手がけたことはいくつかあるが、洋楽は初めて。
しかも相手は世界でいちばん好きなアーティスト。
まさかこんな機会に恵まれるとは思ってもいなかった。
オファーがあったときは天にも昇る思いだったが、引き受けた
直後から地獄の日々が始まった。

考えれば考えるほど、文章が書けなくなっていくのだ。
そして、ビーチ・ボーイズのことを好きだ好きだと云いながら、
俺は全然ビーチ・ボーイズのことを知らなかったのだ、
ということに気づかされ、唖然とした。
これまで僕は浴びるようにビーチ・ボーイズの音楽に触れてきたが、
ホントにただボケーっ浴びているだけだったのだ。
他人にその素晴らしさを説明出来るだけの知識も見識も無い。
俺は30年間何をしてきたんだ、とマジ凹みました。

しかし、引き受けたからには自分にしか書けないものを、
と心を切り替えて今更ながらに猛勉強。
家にある膨大なビーチ・ボーイズに関する書籍、映像、音源を
(リーガル、イリーガル共に)改めてチェックし、曖昧な記憶を
訂正するなど、インプットに次ぐインプットに2週間。
その後1週間かけて2本の原稿を書き上げた。

この間、仕事に必要なこと以外、ビーチ・ボーイズ以外の音源を
一切聴かなかった。聴く暇が無かった。
一日中家に籠って何冊もの本を広げて音楽を聴き続けていた。
一度提出した後、3回も書き直したりして、ご迷惑をおかけした。

結果、今の自分に書けることは全て書き切れたと思う。
何より嬉しいのは、ビーチ・ボーイズへの理解がまた一歩進んだこと。
今まで「解説を書く」という姿勢で向き合ってこなかった音楽を、
違う角度から見つめることにより、見えていなかった側面が
浮かび上がってくるのだ。
30年以上聴き続けてきた音楽が、更に新鮮に聴ける歓び!
こういう機会を与えてくれたYさんには感謝しかない。

なお、今回僕が担当した2枚以外のライナーを書かれたのは、
漫画家でThe Pen Friend Clubという素敵なバンドのリーダー
である平川雄一さんと、小説家(BB5の「素敵じゃないか」
を主題歌とした映画『陽だまりの彼女』の原作者)の越谷オサムさん。
僕を含め3人とも音楽評論家ではない、というのが面白い。

お二人の文章、タッチは違えどそれぞれ行間からビーチ・ボーイズ
大好きオーラが出まくっていて、こちらも興奮してくる。
僕の文章がどう読まれるのか想像もできないけど、
これを読んで少しでもビーチ・ボーイズのことをより好きに
なってくれたなら、これ以上の喜びはない。

そして、これを読んでいる方で、まだビーチ・ボーイズを
体験したことがない、あまり知らない、というあなたに。

まあ、何から聴いてもいいんだけど、僕のオススメ。
まずは『オール・サマー・ロング』を聴いてみて。
ここで少しずつですが全曲試聴出来ます。

このアルバムには初期ビーチ・ボーイズのエッセンスが全て詰まっている。
これが気に入ったら、その前後の作品を聴いて、どちらの時代に
進むか決めるといい。
間違っても最初に『スマイリー・スマイル』はやめておきましょう。
自分でライナー書いておきながらナンですが、これは上級者用アイテムです。

というわけで、50年生きてきて初めての洋楽のライナーノーツを書いて、
ウカレている男の自慢話ブログでした。