2015年7月8日水曜日
wilsonic works 51
7月8日はPERIDOTSの4枚目のオリジナル・アルバム『PEAK』の発売日。
セルフ・カヴァー・アルバムの前作『TIMEPIECE』に続いて、
ディレクターとしてアルバム・レコーディングに立ち会った。
前作もそうだけど、PERIDOTSの場合、ディレクターといいながら
僕はほとんど仕事らしきことをしていない。
もちろん曲選びとか、レコーディング前のミーティングや、
メールでのやりとりなどして、意見や感想を伝えるし、
全てのレコーディングに立ち会って、その進行を確認した。
ディレクターというよりは “Morale Booster”のほうがしっくりくる。
意味合いとしては、士気を高めるもの、くらいの感じ。
Roger Nichols and the Small Circle of Friendsの1stアルバムに、
Van Dyke ParksやRandy Newmanなどがこのクレジットで入っている。
実際当時Van Dykeらがどんな形でMoraleをBoostしたのかは
わからないけど。
曲作りの段階、アレンジの最中、レコーディング現場に僕がいる。
その都度、客観的な意見、違う角度からの見方などを提供し、
刺激なり意欲増進なりをする、というような役割。
なのではないか、と。
まあ僕の役割なんてどうでもいい。
このアルバムの密度、相当なことになっているので、そのことを。
今回、プロデュースはPERIDOTSことタカハシコウキ本人と久保田光太郎さん。
アレンジも基本全編光太郎さん。
ドラムスに中畑大樹さん、ベースにFIREさんというお馴染みの
チームでのリズムでレコーディングした曲もあれば、
これまたお馴染みの浦清英さん、河野圭さんのピアノを
フィーチュアした曲もある。
でも、なによりも。
久保田光太郎という音楽家が、これまでの経験値と
永年のPERIDOTSとの歴史を踏まえて、
考えに考え抜いたアレンジが全曲で炸裂している。
それがまずすごい。
全体のバランスを考えながら、各曲に見合ったアレンジを施す。
そのアレンジを活かす最良の楽器を選び、最高の音色を探り、最善のプレイをする。
ちょっと違うかなと思ったら、根本まで戻って考え直す。
言葉、メロディ、歌い方、曲毎のマイク選び、
全てに妥協無くトライする姿勢。
久保田光太郎、タカハシコウキ、エンジニアの渡辺敏広のトライアングルは、
上記のような取り組み方でレコーディングを進め、
結果『PEAK』は、とてつもない密度のアルバムとなった。
本来当たり前のことなんですよ、音楽を作るに当たってこういう姿勢で臨むのは。
でも昨今、レコーディングというものがカジュアルになり過ぎて、
こういった本来の姿勢が忘れられている現場が多い。
誰でも安価で、簡単に録音が出来るような世の中になったのは、
全体のパイを広げたり、敷居を低くするという意味では
歓迎すべきことなのだろうが、その弊害も同じくらいあるわけで。
ま、この辺のことはいつかまとめて書きます。
『PEAK』に収録された全10曲。
よく、“ヴァラエティに富んだアルバム” なんていうけど、
それはこのアルバムにこそ相応しい形容だと思う。
詞もメロディもアレンジも、ここまで振り切ったアルバムはなかなか無い。
それでいて聴きにくいわけではなく、肌触りはとてもポップ。
密度は濃いけど、暑苦しくはない。
なんなんだろう、これ。
音楽が好きな人が、より音楽のことを好きになる、
そんなアルバムなんじゃないかと思う。
音楽って、まだまだ可能性があるんだなって。
そんなことを思った。
今までのPERIDOTSを知っている人も、
PERIDOTSを全然知らない人も、
このアルバムを通して聴いたら、ちょっとびっくりすると思うんだ。
たくさんの人に、届いてほしい。
p.s.
PERIDOTSのマスタリングは、これまではほぼLAのStephen Marcussenだったが、
『PEAK』 はロンドンのMetropolis MasteringのTim Youngによるマスタリング。
7曲目の「Tomorrow My Friend」で、その起用の意味がストンと腑に落ちる。
同業者の方、ぜひともその辺、聴き取って感じてもらいたいっす。
p.s. 2
タカハシくんと光太郎さんが全曲解説をしながらアルバムを試聴する
スペシャル対談の映像はこちら。サブテキストとして、どうぞ。