2011年6月6日月曜日

A book which I was Impressed by deeply


10年以上前に出版された本なんだけど、
最近その存在を知り、読んでみたら
めちゃくちゃ目から鱗落ちまくったんで紹介します。


昨年他界した作家、劇作家の井上ひさしが、
1996年に岩手県一関で開催した「作文教室」
のドキュメンタリー。

これ、全ての「表現」に携わる人は絶対に読んで損はない!

もうね、考えてみれば当たり前のことを、
改めて平易な言葉で噛み砕いて説明してくれているだけ、
といえばその通りなんだけど、以下、アトランダムに
見出しをいくつかピックアップするので、
ちょっと読んでみてほしい。

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いちばん大事なことは、自分にしか書けないことを、
誰にでもわかる文章で書くということ。

題名をつけるということで三分の一以上は書いた、
ということになります。

書いたから終わったわけではない。読み手の胸に
届いたときに、自分の書いた文章は目的を達成し、
そこで文章は終わるわけです。

日本語の音素の特徴は、数が少ないだけでなく、
唇を使うものが非常に少ないんです。

観察する。要約する。報告する。そういう文章を
うんと書かせる。わたしたちもそういう教育受けて
いたら・・・。

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どうですか? 相当気になるでしょう?
この本は「作文」ということにフォーカスしてはいるけど、
「表現」に向かうときの心構え、
「言葉」を扱うときの基本的考え方、
などが懇切丁寧に説明されているので、
読みようによってはいろんな分野の創作活動に
敷衍できるようになっている。

井上ひさしという知の巨人にして日本語遣いの名手が、
その経験と学習で得た知識&ノウハウを、惜しみなく
伝達しているんだから面白くないはずがない!

僕は14歳くらいからの約5年間、井上ひさしの小説、
戯曲、エッセイなど、当時手に入る文章全てを読んだ。
そして、彼の作品から日本語の奥深さ、音韻の楽しさ難しさ
などを、特に「勉強している」つもりもなく、自然に
自分の中に取り込んできたようだ。

音楽に関わるようになり、ディレクターやらプロデューサー
と呼ばれるような仕事をするようになって、
自分の「井上ひさし体験」が実はとても役立っていることに
あるとき気づいた。

小説やエッセイを書いているだけの、
いわゆる「名文家」はいっぱいいるが、
井上ひさしは戯曲、つまり舞台における「セリフ」
としての日本語も追求した。
そこが今の僕の仕事に役立っている点、なのだ。

つまり、口語としての日本語。
口から発せられた瞬間にすぐに意味を捕まえてもらえなきゃ、
芝居は成り立たない。

歌詞カードに首っ引きじゃなきゃわからない音楽ではなく、
街中で流れてきてちょっと耳を傾けたらグイグイ入ってくるコトバ。

実はこのようなことを、昨年井上氏の訃報に接したときに
ツイッターでもちらっとつぶやいたりしたんだけど、
今年に入ってこの本に出会ってさらに確信したのでした。
すごいや、井上ひさし。

読み逃していた彼の本、ちゃんと読もうっと。
そして、時間があるときに昔むさぼり読んだ本を、
今の視点で再読してみよう。


では最後にこの本の中にあるネタでお別れです。

「黒い目のきれいな女の子」

なんの変哲もないフツーの文章ですが、
これで約18通りの違う意味の解釈が出来るそうです。
わかります?
日本語って面白いなー。