2015年12月23日水曜日

wilsonic works 55


スピッツの6thアルバム『ハチミツ』が発売されてから20年。
その、20周年を記念して企画したトリビュート・アルバム、
『JUST LIKE HONEY 〜『ハチミツ』20th Anniversary Tribute〜』
が12月23日にリリースとなった。

正確に云うと、既に12月9日からiTunesストアで配信がスタート、
23日はCDのリリース日である。
来年1月27日にはアナログ盤としても発売される。

僕はこのアルバムの企画立案をし、トータルのプロデューサーを務めた。

こちらのサイトにこのアルバムの企画意図など、多少硬めに書いたし、
アルバムに封入される投げ込みで、MUSICA鹿野さんと対談して、
リリース当時のスピッツのことなど語っているので、
ここでは少し違うネタを。

実は、最初考えていたのはトリビュート・アルバムではなくて、
『ハチミツ』20周年記念の豪華デラックス・エディションだった、
というお話。
飽くまでも僕の頭の中の妄想レヴェルでは。

きっかけというか、大いに参考になったのは、2014年3月に
リリースされたエルトン・ジョンの『Goodbye Yellow Brick Road』
40周年記念スーパー・デラックス・エディション
リマスター、ライヴ音源、映像など4CD+DVDというヴォリューム。
その中の1枚のCDに、アルバム全曲ではないが、エド・シーラン
若手アーティストによるカヴァーが入っていたのだ。

これに倣い、『ハチミツ』も未発表ボーナス・トラックや当時のライヴ音源、
そしてアルバムまるごとのトリビュートなど、3枚組ボックスとかに
ならないかなー、と思いついた。

思いついてみたものの、よく考えるとこの頃のスピッツに
未発表マテリアルなんて存在しないし、ライヴは『JAMBOREE 1』
(現在は『ジャンボリー・デラックス』)が出ている。
そんなわけで、『ハチミツ 20th Anniversary Super Deluxe Edition』は、
2014年春に思いついた途端に自分内で却下された。

ただ、そのときにイメージしたトリビュート・アルバムのことは
頭の隅に残っていたのだな。
半年くらい経った2014年秋に、どういうメンツが集まったら
面白いんだろう、と少しずつなんとなく考え始めていた。

『ハチミツ』のオリジナルの発売日は9月20日なので、
リリースするなら2015年9月を目標にしよう、と思い、
年末にユニバーサルのA&Rと情報を共有する。

明けて2015年初頭、正式にリリースに向け準備を始め、
2月以降順次アーティストに参加要請のお声掛けを始めた。

と、あっさり書いているけど、全ラインナップが決定したのは
そこから半年以上経過した2015年8月。
全音源のレコーディングが終わる見込みが11月頭となった。
当初考えていた9月発売なんて完全に無理で、
年内発売もあわや、というところまで行きかけたが、
なんとか20周年の2015年内にリリースにこぎ着けることが出来た。

2002年にカヴァー・アルバム『一期一会 Sweets for my SPITZ』
制作した経験値があるので、その当時のタイム感で進めていたのだが、
全然勝手が違った。
何よりも12曲という限られた楽曲を振り分けるというパズル感は、
『一期一会』とは比較にならないくらい大変だった。

2015年は常にこのアルバムのことが頭の片隅にあり、
ずーっと不安な気持ちを抱えたままだった。
テトリスで長い棒が全然落ちてこないみたいな、
どうしようどうしよう、って焦っている気分。
でも、待つしかないわけで。

一緒に企画して進めたA&RのFさんの支えが無ければ、
この企画は成り立たなかった。僕一人じゃ絶対に無理だった。
深い感謝を捧げます。

11月上旬にマスタリングを終え、中旬にアナログのカッティングを
終えたとき、初めて安堵の気分を味わった。
よ・う・や・く・で・き・あ・が・っ・た!!!

そして。
このトリビュート・アルバム、相当面白い出来になっていると思う。
当初予想していたものと結構違っていて、それが逆に楽しい。

お忙しい中このような企画に賛同し、ご参加いただいた
アーティストの皆さまには、ひたすら感謝しかない。
無いスケジュールをこじ開けていただいたスタッフの皆さまのご厚情にも深謝。

あとは、ひとりでも多くの方に、このアルバムをお届け出来れば。

こういうアルバムを企画するなら、まずはきちんと売る、
伝えることが参加アーティストへの最低限のマナーですからね。

そして、これを知った、聴いた人には、

1. スピッツ(『ハチミツ』)ファンの人が、スピッツ以外のアーティストを知る。
2. 収録アーティストのファンが、スピッツ(『ハチミツ』)のことを知る。
3. 収録アーティストのファンが、別の収録アーティストを知る。

という3種類の「知る」チャンスが訪れる。
このことがその人のその後の音楽ライフに何らかプラスになるといいなあ、と。

普段から日本のロック、ポップスに親しんでいて、
収録アーティストの大半を知っている人でも、
これまで持っていたイメージと違う新鮮なものを受け取るかもしれない。
普段あまり音楽を積極的に探っていない人に、
新たな扉が開くような出会いがあれば、企画者としてこれ以上嬉しいことはない。

僕自身がこれまでいろんなカヴァーやトリビュートで、
新たな出会いをしてきたことが、こういうアルバムを作る
原動力になっているんだと思う。
どうか、多くの方に新規ご贔屓アーティストが増えんことを!

しかしまあ。
あんなにしんどい思いをして制作を進め、途中段階では
「もう二度とトリビュート企画なんてやりたくない!』とまで
思っていたのに、実はもう僕の中では違うアイディアが
いくつか浮かんできている(スピッツ関連ではないっす)。
これが制作マンの業というものなのか・・・。
ま、実現するかどうかはわかりませんが。

p.s.
アルバムのアートワークは、オリジナルの『ハチミツ』の
アートディレクターでもある、CENTRAL67木村豊
ポップで可愛いデザイン、アナログ盤が楽しみでしょうがない!

p.s. 2
アルバム・タイトルの『JUST LIKE HONEY』は、ご存知の通り
Jesus & The Mary Chainの1985年のシングル曲で、彼らの
1stアルバム『Psycho Candy』に収録されている曲のタイトルと同じ。

でも、実はもうひとつ元ネタがあって。

僕の大好きなイギリスの音楽プロデューサーで、Joe Meekという人がいる。
この人、1960年代にたくさんのヒット曲を放ったのだが、
その中で2曲の有名なトリビュート・ソングがある。
1曲がMike Berryの「Tribute to Buddy Holly」。
そしてもう1曲がHeinzによる「Just Like Eddie」。
前者はバディ・ホリー、後者はエディ・コクランという、
いずれも早逝したアメリカのロックンローラーに捧げた歌。
後者の「Just Like Eddie」の「Eddie」の部分を「ハチミツ」に
変換したのが『JUST LIKE HONEY』というわけなのでした。
ここで書いておかないと自分でも忘れそうなんで、備忘録。