2016年7月13日は、パレードパレード初の全国流通盤ミニアルバム、
『Squall』の発売日。メンバーとの共同プロデュースという形で全面参加した。
今回のミニアルバムは彼らにとって3枚目だが、初の全国流通となる。
パレードパレードは、札幌で結成された4人組ポップ・バンド。
キーボード&ヴォーカルの大松沢ショージが曲を書き、
ギターの松本晃貴が詞を書く(この関係性、ウルトラタワーと同じ)。
パレードパレードの音楽は、“シティ・ポップ” と称されることが多い。
この “シティ・ポップ” というジャンル名に関してちょっと説明をば。
元々は1970年代の “ニュー・ミュージック” が、アメリカ等の同時代の
フュージョン〜クロスオーヴァー、ファンク、AOR等の影響を受け、
職業アレンジャーとスタジオ・ミュージシャンが作り上げた音楽を指す。
80年代初頭〜中盤、シンガー・ソングライターを中心に
シティ・ポップと呼ばれる音楽がひとつの潮流を作り、
アイドル、歌謡曲の世界でも同様のサウンドが導入されるようになった。
それとは別に、ここ数年、東京のバンドを中心に “シティ・ポップ” と
呼ばれるものが増えている。
これらのバンドの多くは、80年代の “シティ・ポップ” と
直結しているものではないようだ。
まず、それらのほぼ大半がバンドだということが特徴。ソロ・シンガーは少ない。
そして、70年代後半〜80年代を踏まえているのではなく、それ以前の
70年代前半へのオマージュからスタートしているバンドが多い。
はっぴいえんど、はちみつぱい、シュガー・ベイブ、ティン・パン・アレイなど。
これら70年代前半に活動したバンドたちは、その後の足跡や
度重なる再評価によって現在では揺るぎない地位を誇っているが、
70年代当時は一般的には「マイナー」だし、「マニアック」な音楽だった。
対して、80年代のシティ・ポップは、メジャーだった。
山下達郎の『RIDE ON TIME』(1980)、大滝詠一『A LONG VACATION』(1981)
という、70年代にマイナーだったバンドのメンバーのアルバムが、
80年代初頭に大ヒットしたのは、象徴的な出来事。
さてさて、かように “シティ・ポップ” というのは解釈が難しいというか、
話す人によって随分意味合いが違ってくるのだが、
話はいったいどこに進むのかというと、パレードパレードの “シティ・ポップ” は、
いったいどういう音楽なのか、ということ。
彼らの音楽の分母には、80年代の “シティ・ポップ” も、
そしてそれらを構成していた70年代〜80年代の洋邦ポップスも、
そして同じくリアルタイムに聴いてきた90年代後半〜現在に至る
同時代の音楽も総て並列にあるように思う。
スティーヴィ・ワンダーもユーミンも星野源もディアンジェロもみんな並列。
音楽を聴き始めた頃からYouTubeが存在する世代の “シティ・ポップ” 。
時代もジャンルも洋も邦も問わず、面白いと思うもの、
カッコいいと思うものを追い求め続けていたら、
全くオリジナルな音楽が出来上がった。そんな感じ。
そこに最近の “シティ・ポップ” バンドに見られる
サブカル的な側面が一切感じられないのも特徴。
とても素直に、直感的に音楽に向き合っている。
バンドの音と打ち込みを同居させ、隅々まで練り上げられたサウンド、
様々な形で現れるヴォーカル・ハーモニーへのフェティシズム。
「林檎」に顕著なちょっと淫靡な香りすらする、男女の機微を描く歌詞。
今、横並びで同じような音を鳴らしているバンドは、まずいない。
よくよく聴き込むと相当変なことやっているのに、ポップスとして機能する。
パレードパレード、最強じゃないか。
アルバム1曲目を飾る「林檎」のMVはこちら。
彼らのルーツや楽曲作りの背景に迫るロング・インタヴューはこちら。
初の全国流通盤『Squall』、お見知りおきのほどを。p.s.
パレードパレードは、前回このブログで書いたOfficial髭男dismと共通点が多い。
共にヴォーカリストが鍵盤を弾く。&ドラム、ベース、ギターの4人組。
地元である程度のキャリアを積み(コンテストで上位入賞など)、
満を持して2016年前半に上京、活動の拠点を東京に移す。
Official髭男dismは山陰、パレードパレードは北海道と、
これまで活動してきた地域の違いはあれ、年齢も近く、
僕が関わるタイミングも近かったので、ちょっとしたシンクロニシティ。
東京という情報過多な街で活動していなかったことが、
それぞれのバンドのオリジナリティ形成にプラスに働いている、
というのも共通点かな。
共に、東京からはまず出てこない音楽だと思う。
あ、ヴォーカリストが共にaikoファン、というのもオマケの共通点。