2016年7月28日木曜日
wilsonic works 66
まずは告知から。
wilsonic竹内、ラジオにゲスト出演します。
8月の毎月曜日、21時〜22時、FM COCOLOの「J-POP LEGEND FORUM」。
音楽評論家の田家秀樹さんが案内人となって、毎月音楽にまつわる1つの
トピックを深く掘り下げるという、丁寧かつ現代において非常に贅沢な番組です。
8月はスピッツがピックアップされ、5週に亘ってディレクターである竹内が
ゲストとして出演することになりました。
8月1日と8日はニュー・アルバム『醒めない』全曲特集。
15日以降の3週は、デビューから前作までを時間軸で追っていく予定。
スピッツの楽曲制作の知られざるエピソードなど、スタッフ・サイドからの
視点で語らせていただきます。
関西エリアの方は是非ともチェックしてみてください。
ラジコプレミアムなら、全国どこからでも聴けます。
番組のブログはこちら。
案内人田家秀樹さんがブログでこの件をとり上げてくださいました。
以上、告知でした。
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7月27日、スピッツの15枚目のオリジナル・アルバム『醒めない』が発売された。
スピッツのアルバムが夏にリリースされるのはとても珍しく、
過去には『ハヤブサ』(2000年7月26日)だけ。以来16年振り。
今回はファンクラブ会員のみ購入可能な “デラックスエディション”、
CDにDVDもしくはBlu-rayが付いた “初回限定盤”、CDのみの “通常盤”、
そして2枚組ヴァイナル(アナログ盤)という4パターン6種でのリリース。
予約限定生産なので、既に入手が困難になっているのだが、
このブログではアナログ盤に関することを書いてみようかと。
まず、最近の自分のことから。
昨年の暮れくらいから、洋楽の新譜はほぼヴァイナル(アナログ盤)で購入している。
今年の1月〜6月に購入した洋楽の音源は約300枚。
その内、半数以上の約160枚がアナログだ。
欧米でリリースされるアルバムのほとんどがアナログもプレス
されるようになったことと、昨年末にCDを3000枚ほど処分した
ことがアナログ転向の大きな理由だ。
CDしか出ていないものはCDを買うしかないけど、
両方出ているなら、ちょっと割高でもアナログを買う。
大きなジャケットを眺めながら聴くと、音楽は更に楽しい。
音楽を “所有” するなら、アナログがいい。
そんな最近のモードなのです。
保管スペースの確保だけが大問題ですが・・・。
世界的にもアナログ・レコードの市場はここ数年右肩上がりが続いており、
日本でも、近年アナログでリリースする人が増えてきている。
そして、スピッツはこれまで全てのオリジナル・アルバムを
アナログでもリリースしてきた。
5年前、『とげまる』のアナログ盤リリース時に書いた、
スピッツのアナログ盤の歴史についてのエントリはこちら。
今読むと、5年で僕自身の考え方が随分変わったことが伺えて面白い。
さて。
これまでスピッツのアルバムのアナログ盤は、CDの発売の数ヶ月後に
発売されてきたが、今回は初のCD・アナログ同時発売!
アナログをCDリリースより遅らせていたのは、
単純にアナログは製造工程に時間がかかるのと、受注のシステム等の問題があったため。
また、アナログにはアナログとして意味のあることを、と考えて、
CDとは曲順を変えたり、曲目を増やしたり、ヴァージョン違いを入れたり、
毎回オリジナルのイラストや漫画を封入したりしていたので、
準備に時間がかかっていたのだ。
今回、同時発売が実現したのは、ひとえにユニバーサルJの
スタッフの尽力のおかげ。お疲れさまでした!
今回の『醒めない』のアナログは、前作までと違ってCDと同じ曲順となっている。
深い意味はないのだが、同時発売なので徒に曲順を変えることも
ないだろう、という考えからだ。
あと、これまでは後発リリースなので、CD購入やDLしてアルバムを聴いていた人が、
別アイテムとしてアナログを買っていた、というケースが多かったはず。
内容を変えるのはそういう方へのサーヴィス的意味合いでもあった。
同発の今回はアナログ一択という方もいるのではないか、と考えると、
大幅に曲順を変えるのは適切ではないかな、と。
漫画はヤマザキマリさんの描き下ろしが実現した。
レコーディング中に、オファーに対して快諾のお返事いただき、
そのニュースにメンバー共々大いに盛り上がった。
「テルマエ・スピッツ」と題された漫画、最高です。
『小さな生き物』のアナログにはCDとほんの少しだけ違うところがあった。
それは当時全国タワーレコードで開催した “小さな生き物展” で公開した
僕の「制作メモ」でしか明らかにしていないので、知らない人が多いかもしれない。
さて、今回はCDとアナログで違いはあるのだろうか?
両方購入した方は、是非ともチェックのほどを。
あと、これは毎回そうなのだが、CDとアナログは基本的に音が違う。
フォーマットによる違いは勿論のこと、エンジニア高山徹のミックスした
音源を、CDはそのまま高山さんがマスタリング(さりげなく今回のトピックですこれ)、
アナログはビクターの小鐡さんがカッティングしている。
最終工程を違う人が行っているんだから全然違うんです。
聴き比べ出来る方は、その辺気にして聴いてみてはいかがでしょうか。
ま、CDもアナログもそれぞれめっちゃいい音であることは保証します!
本当にアナログのことしか書かないブログになってしまった。
アルバム全体の宣伝も最低限しなきゃ!
田家秀樹さんによるオフィシャル・ライナーノーツはこちら。
アルバム・トレーラー映像はこちら。
MVは、「みなと」、「醒めない」をどうぞ。
あと、タワーレコード渋谷店8Fにて、『醒めない展』開催中です。
8月7日までなので、お早めに!
スピッツのディレクターとしてレコーディングに携わって今年で26年。
オリジナル・アルバム15枚目にして、まだまだワクワクさせてくれる、
こんなミラクルなバンドのディレクターでいられて、ホント幸せ者っす。
というわけで毎回自己新記録を更新するバンド、スピッツの最新作『醒めない』。
今回も、最高です。
p.s.
これを書きながら思い至った。
10代後半〜20代にかけて、ナイアガラ・レーベルの諸作品に触れ、
オリジナルと再発盤、CDとアナログでのヴァージョン違いなどに
大いに振り回された僕自身の経験が、スピッツのアナログ盤を出すときの
考え方に反映されているのだなあ、と。
当時、宝探ししているような気持ちで音楽を聴いていたんだ、僕は。
そして、いろんな宝物を見つけることが出来た。
それが僕の “ガーンとなったあのメモリー”。
2016年7月24日日曜日
wilsonic works 65
2016年7月13日は、パレードパレード初の全国流通盤ミニアルバム、
『Squall』の発売日。メンバーとの共同プロデュースという形で全面参加した。
今回のミニアルバムは彼らにとって3枚目だが、初の全国流通となる。
パレードパレードは、札幌で結成された4人組ポップ・バンド。
キーボード&ヴォーカルの大松沢ショージが曲を書き、
ギターの松本晃貴が詞を書く(この関係性、ウルトラタワーと同じ)。
パレードパレードの音楽は、“シティ・ポップ” と称されることが多い。
この “シティ・ポップ” というジャンル名に関してちょっと説明をば。
元々は1970年代の “ニュー・ミュージック” が、アメリカ等の同時代の
フュージョン〜クロスオーヴァー、ファンク、AOR等の影響を受け、
職業アレンジャーとスタジオ・ミュージシャンが作り上げた音楽を指す。
80年代初頭〜中盤、シンガー・ソングライターを中心に
シティ・ポップと呼ばれる音楽がひとつの潮流を作り、
アイドル、歌謡曲の世界でも同様のサウンドが導入されるようになった。
それとは別に、ここ数年、東京のバンドを中心に “シティ・ポップ” と
呼ばれるものが増えている。
これらのバンドの多くは、80年代の “シティ・ポップ” と
直結しているものではないようだ。
まず、それらのほぼ大半がバンドだということが特徴。ソロ・シンガーは少ない。
そして、70年代後半〜80年代を踏まえているのではなく、それ以前の
70年代前半へのオマージュからスタートしているバンドが多い。
はっぴいえんど、はちみつぱい、シュガー・ベイブ、ティン・パン・アレイなど。
これら70年代前半に活動したバンドたちは、その後の足跡や
度重なる再評価によって現在では揺るぎない地位を誇っているが、
70年代当時は一般的には「マイナー」だし、「マニアック」な音楽だった。
対して、80年代のシティ・ポップは、メジャーだった。
山下達郎の『RIDE ON TIME』(1980)、大滝詠一『A LONG VACATION』(1981)
という、70年代にマイナーだったバンドのメンバーのアルバムが、
80年代初頭に大ヒットしたのは、象徴的な出来事。
さてさて、かように “シティ・ポップ” というのは解釈が難しいというか、
話す人によって随分意味合いが違ってくるのだが、
話はいったいどこに進むのかというと、パレードパレードの “シティ・ポップ” は、
いったいどういう音楽なのか、ということ。
彼らの音楽の分母には、80年代の “シティ・ポップ” も、
そしてそれらを構成していた70年代〜80年代の洋邦ポップスも、
そして同じくリアルタイムに聴いてきた90年代後半〜現在に至る
同時代の音楽も総て並列にあるように思う。
スティーヴィ・ワンダーもユーミンも星野源もディアンジェロもみんな並列。
音楽を聴き始めた頃からYouTubeが存在する世代の “シティ・ポップ” 。
時代もジャンルも洋も邦も問わず、面白いと思うもの、
カッコいいと思うものを追い求め続けていたら、
全くオリジナルな音楽が出来上がった。そんな感じ。
そこに最近の “シティ・ポップ” バンドに見られる
サブカル的な側面が一切感じられないのも特徴。
とても素直に、直感的に音楽に向き合っている。
バンドの音と打ち込みを同居させ、隅々まで練り上げられたサウンド、
様々な形で現れるヴォーカル・ハーモニーへのフェティシズム。
「林檎」に顕著なちょっと淫靡な香りすらする、男女の機微を描く歌詞。
今、横並びで同じような音を鳴らしているバンドは、まずいない。
よくよく聴き込むと相当変なことやっているのに、ポップスとして機能する。
パレードパレード、最強じゃないか。
アルバム1曲目を飾る「林檎」のMVはこちら。
彼らのルーツや楽曲作りの背景に迫るロング・インタヴューはこちら。
初の全国流通盤『Squall』、お見知りおきのほどを。p.s.
パレードパレードは、前回このブログで書いたOfficial髭男dismと共通点が多い。
共にヴォーカリストが鍵盤を弾く。&ドラム、ベース、ギターの4人組。
地元である程度のキャリアを積み(コンテストで上位入賞など)、
満を持して2016年前半に上京、活動の拠点を東京に移す。
Official髭男dismは山陰、パレードパレードは北海道と、
これまで活動してきた地域の違いはあれ、年齢も近く、
僕が関わるタイミングも近かったので、ちょっとしたシンクロニシティ。
東京という情報過多な街で活動していなかったことが、
それぞれのバンドのオリジナリティ形成にプラスに働いている、
というのも共通点かな。
共に、東京からはまず出てこない音楽だと思う。
あ、ヴォーカリストが共にaikoファン、というのもオマケの共通点。
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