2016年4月27日水曜日

wilsonic works 62


本日4月27日は、スピッツの41作目(ダウンロード・シングルを含む)の
シングル、「みなと」の発売日。
フィジカルのシングルとしては2013年の「さらさら」以来約3年振り。

先週22日、テレビ朝日の「ミュージックステーション」に、
これまた3年振りに出演し同曲を披露した。
マサムネまさかのいきなり歌い出し間違えるというハプニングに、
スタッフ一同一瞬真っ青になるも、さすがに30年近く一緒に
やっているメンバー同士、阿吽の呼吸で立て直す。
結果的にはスピッツのTVパフォーマンス史上、かなりの上位に入る
出来だったのではないだろうか?

そしてこの日のもうひとつのトピック。
口笛とタンバリンでサポートに入ってもらった、スカートの澤部渡くん。

本人のツイッター(そして僕も含むリツイート)ぐらいしか
事前情報は無かったため、本番がスタートして、
視聴者の間で「あのタンバリン男は何者?」とざわつき始め、
その日以降非常に面白い広がり方を見せている。

今日、昼間に新宿のタワーレコードに行ったところ、
スピッツのコーナーにスカートのアルバムが置いてあり、
スカートを展開しているところにスピッツの「みなと」も並べられていた。
たまたまスカートを試聴してらっしゃる方がいて、
その人の片手にスピッツの「みなと」が、という光景を見るに至って、
いやあ今回こういう流れになって、本当に良かったなあ、と思った次第。
音楽が繋がって行くきっかけって、どこに転がっているかわからない。

あ、実はタワーレコード新宿店ってすごいんですよ。
4月20日のスカート『CALL』発売時の展開で、「スピッツファンにおすすめ!」
的なバイヤーによる手書きコメントがあったの。
Mステ出演の22日より前で、スピッツとスカートを結びつける情報は
流れてなかったにも拘らず。

そして、本日アップされたナタリーの澤部くんインタヴュー
インタヴュー時はMステ情報は出せないので、一切スピッツのことは
口に出していないのに、インタヴュアーからスピッツに関する質問が
出てくるというミラクル。

なんなんでしょうね、こういう偶然なのか必然なのかわからん連関。
きっと、誰かが仕組んだり仕掛けたりしたことじゃないからだと思う。

澤部くんは、今回の一連の流れを書いたこの日記で、
レコーディング参加オファーの際、「みなと」のラフミックス音源を
聴いたことを「ご褒美」と云ってくれている。
自分が大好きなものに正直に生きて、ショートカットとか楽することを選ばず、
ひとつひとつ丁寧に対処していくことは大切だなーと、改めて思う。
そういうの、必ず報われるから。
それが、ご褒美。


本日アップされた「みなと」のMVフルはこちら
ここ数年、スピッツの映像周り全般を手がけている北山大介監督、
今回も実に独創的でいて、曲に寄り添ったムーヴィーに仕上げてくれました。

ちなみに、今までに無いインパクトの今回のジャケット
アート・ディレクションはいつものCENTRAL67木村豊。
写真素材は『音楽喜劇 ほろよひ人生』という、1933年(昭和8年)の
日本のミュージカル映画のスティル。
マサムネが戦前の日本映画のスティルをいろいろ探してきて、
中でもいちばん使いたい写真がこれだった。
ちょっと見ただけでは時代も国籍も判然としない、趣深い写真だ。

僕はこの映画のことを全く知らなかったのだが、
この写真をジャケットに使用することが決定してすぐに、
読んでいる本の中にこの映画に関する記述を見つけ、その偶然に驚いた。
その本は、『大瀧詠一 Writing & Talking』という、
大瀧詠一さんが生前に残した文章や会話などが網羅されている一冊。
昨年春に出版されたこの分厚い本を僕は、読み終えたくないから
毎日少しづつ少しづつ、チビチビと読んでいる。
そんなスピードで読んでいて、たまたま今回のタイミングで
『ほろよひ人生』を共通項としてスピッツと大瀧さんが僕の中で繋がる。

すごくビックリして、その次にとても嬉しかった。
“自分勝手な偶然” に喜びを見出す。

これもまたご褒美、だったのかもしれない。

2016年4月24日日曜日

wilsonic works 61


モノブライト、2年半振りのオリジナル・アルバム、『Bright Ground Music』
4月20日に発売された。昨年ドラマーが抜け、3人体制となってから初めてのアルバム。
僕は共同プロデューサー、ディレクターとしてアルバム全体に関わった。

2007年のメジャー・デビュー以来、エンターテイナー精神溢れる
ステージング、独自の言語感覚を駆使する歌詞、変幻自在なメロディで
確固たるポジションを築き、熱狂的なファンを獲得してきた彼ら。
今回僕が参加するにあたり、これまで培ってきた彼らのやり方を尊重し、
その上で新しいことが出来たら、と思って進めてきた。

まず何よりも今までと違うのは、ドラマーがいない、ということだ。
ドラマー、誰がいいだろう?
モノブライトのデモテープを聴きながらあーだこーだと考えていると、
彼らの曲、跳ねないスクエアなエイトビートが多いことに気づく。
そこでひらめいた僕は、あるとき頭に浮かんだドラマーの名前をメンバーに告げると、

「え、藤井寿光さんって、元ANATAKIKOUのですか?」

と、旧知の仲であり、しかもメンバーが大好きなドラマーだということが判明。

「藤井さんに叩いてもらえたら最高です」

とのことで、その場で藤井くんに電話して、ドラムの依頼をして快諾を得た。

この経緯だけで今回のレコーディング・プロジェクトは良いものになる、
という予感ひしひし。

ま、考えてみればANATAKIKOUもモノブライトもXTC大好きバンド、
交流があって当然なのだった。

その次に、アレンジャー。
大半の曲はメンバーでプリプロしてアレンジがほぼ固まっていたが、
数曲は白紙状態。
ここ数作はメンバーのセルフ・プロデュースで進めてきたので、
アレンジャーと作業することがなかったモノブライトに、
これらの曲で新鮮なアイディアをもらうのもありなんじゃないか、
ということで推薦したのが、
SSWでもあるマルチ・ミュージシャン、橋口靖正

彼には3曲でメンバーと共同アレンジ、管と弦のアレンジを1曲ずつ、
鍵盤やタンバリンなど、やれることはなんでもやってもらった。
モノブライトの音楽の引き出しを増やしてもらうことが出来たけど、
彼が現場に来ると笑いがいつもの3倍くらいになるのがいいね。

実は、橋口くんとは数年前から知り合いではあったし、ライヴを
拝見したりはしていたが、レコーディングでご一緒するのは今回が初。
藤井寿光とは、ドラムテックとして仕事したことはあるが、
ドラマーとしては今回が初。
モノブライトのおかげで、機会があったら一緒にやりたい人たちと仕事が出来て、
俺得な現場でもあったわけ。

エンジニアは、僕もモノブライトも共通して信頼している三上義英さん。
彼が最終的にミックスしてくれる、という安心感が、レコーディングに
おいてリラックスできる材料になっていたことは確か。

結果、これまでのモノブライト成分は確実に残しつつ、
今まであまりクローズアップされていなかった側面が垣間みられる
アルバムになったのではないだろうか。

とかちょっと当たり障りない物言いっぽいけど、
僕、このアルバム大好きなんですよ。
自分が関わっていながら(いや、いるからこそ)、すげー好き。
モノブライトというキャリアがあるバンドの、30代バンドマンの、
パーソナルな魅力が迸っていると思う。
それは歌詞やヴォーカルだけではなく、ベースやギターの演奏にも。
あなただけにしか鳴らせない音が鳴っているよ。
あとね、ヴォーカルの質感が各曲それぞれで本当にいいよ。ほんとだよ。

そして曲順。
普段は曲順番長で、いろいろ注文をつける竹内だけど、
今回はオレ以上の集中力で曲順を考えてきた桃野くんの提案を100%採用している。
何の文句も無い。
素晴らしい曲順だと思う。
ぜひ、1曲目から通して聴いてほしい。

このアルバムのためのミーティングを始めて間もなくに持った、
このレコーディングがとても良いものになるという予感が、
一回も消えることなく段々と確信に変わっていった。
充実した日々だったなー。
マスタリング、終わりたくなかったもんなー。

って思うくらいに良いアルバムです。
これまでモノブライトを好きだった人も、知らなかったっていう人も、
ぜひぜひチェックのほどを。

ミュージック・ヴィデオも充実。
まるで音のダイヤモンドダストやぁ、というくらいキラキラの「冬、今日、タワー」
ひたすら歌の説得力に感服する「ビューティフルモーニング (Wake Up!)」、
恐いくらいに言葉が刺さってくる「こころ」
モノブライト、カタカナ表記になってから、ちとヤバいっす。