2015年5月23日土曜日

wilsonic works 48


5月20日、ココロオークションの初の全国流通盤シングル
「ターニングデイ|プリズム」がリリースされた。
前作『ヘッドフォンミュージック』に続き、
2曲のレコーディングにarmchair directiveとして参加した。

armchair directiveっていうのは、地方在住のアーティストと、
主にメールで詞、曲、アレンジのやりとりをし、曲を
完成させるためのアドヴァイザリーをする、という作業を指す造語。
実際のレコーディングには立ち会わない。

どんな感じで今回のレコーディングに携わったのか、
に関しても言及されているココロオークションのインタヴューがこちら

そのインタヴューにも触れられているように、今回僕は
彼らの歌詞に関してはほとんど意見していない。
譜割りのこととか少し指摘した程度。
もちろん、基本ヴォーカル粟子くんの書く歌詞が
よく出来ているから、なんですけど。

僕みたいなノンミュージシャン系プロデューサーは、
結構歌詞のブラッシュアップに特化している人が多いんだけど、
僕はそういうタイプではない。

歌詞にももちろん目を向ける。
でもそれよりも「メロディと歌詞の関係」のほうが
重要だと思っているし、それ以前にメロディが良くなければ
どんな言葉を持ってきても個人的には面白くない。

過去に歌詞を共作したこともある。
そのときもストーリーやリリカルな表現は共作者にまかせ、
僕はメロディに馴染みのいい言葉を選んだり、
音階と仲の良いイントネーションを探したり、
というような感じだった。

あ。
これを読んでいるミュージシャン、シンガー・ソングライターの方へ。

よく、歌詞をギリギリまで決められず、歌入れ当日まで格闘する
人がいるけど、これは本当に止めたほうがいい。
最近は曲先が主流を占めているのでこういうことに
なりがちなのだが、良いことはひとつもない。

アレンジの前に歌詞があれば、勇壮な歌詞ををさらにドラマチックに
聴かせることが出来る。
事前に無いと、最終的にハッピーな曲なのに悲しげなアレンジに
してしまう可能性だって、無いとは云えない。
バンドのメンバーはその歌詞を知り、何かしら思いを演奏に反映させるだろう。
歌う人は、事前に歌詞を把握し、歌い回しなど、
練ってからレコーディングに臨めることになる。
歌詞は早めにあるに越したことはない。

ちなみに、先のインタヴューで、今回元々「プリズム」を
シングル曲として作っていたが、後から録った「ターニングデイ」
の出来が良いので両A面シングルとなった、という経緯が
話されているが、こういうことって実はよくある。
いろんな理由で。

スピッツでは「青い車 / 猫になりたい」がそうだった。

ディレクターの僕は、「猫になりたい」をA面のつもりで
制作していた。なのでジャケットもよくわからない
動物のようなもののオブジェをモチーフにしていた。

しかし、社内で「青い車」を大いに気に入った宣伝マンがいて、
彼が頑張って「青い車」でタイアップを決めてきたのだ。

結果、A面曲は「青い車」となり、このシングルは小ヒット。
シングル・チャート最高位は、その時点でのスピッツにとって
最高の27位を記録し、翌年のブレイクのための布石となった。

このとき、もし僕の目論見通り「猫になりたい」がA面に
なっていたら、その後のスピッツはどうなっていたのだろう?

そして、今回2曲を両A面としたココロオークションの今後は???

少なくとも、2曲それぞれが違うFMのパワープレイに
選ばれるなど、両曲共に評価されているのは狙い通り?

そして、当初2000枚限定を予定していたこのシングル、
予約が殺到して、このままでは店頭にほとんど商品が
並ばなくなる可能性が出てきたため、急遽枚数を限定3000枚に追加。
これもすごいお話。
期待値、どんだけなの。

毎回良い曲を丁寧に作って、誠意を持ってライヴを行い、
応援、協力してくれる人たちには感謝を忘れない彼ら、
そしてスタッフの頑張りが、この状況を呼んでいるのだと思う。

引き続き、armchair directiveとして関わり続けたいと思うし、
ゆくゆくは一緒にスタジオに入ってがっぷりやりたいとも願っている。

というわけで、ココロオークションの限定シングル
「ターニングデイ|プリズム」、店頭から消える前に
ぜひとも入手のほどを!

2015年5月16日土曜日

wilsonic works 47


5月13日、ウルトラタワーの2枚目のミニアルバム『bluebell』と、
初めてのシングル「希望の唄」が同時リリースされた。
両方とも、前作に引き続きがっつりとプロデュースに関わっている。

『bluebell』にも収録されている「希望の唄」は、
この4月から放送がスタートしたアニメ『食戟のソーマ』のオープニング・テーマ。
昨年11月から曲作りに着手し、年明けの1月いっぱい、
年末年始含めずーっとこのタイアップのことを考えていた。

この作業のすぐ後に、スピッツの「雪風」のレコーディングが
あり、なんかずっとタイアップ物件のことを考える日々だった。

タイアップというものは、音楽を作る側と音楽を使う側、
両方にとってメリットが無ければ成り立たない。
僕のような立場でディレクターやプロデューサーとして
関わっている人間は、両者の意図を理解して、
双方が望むことの最大公約数を見つけ、
いかにスムーズに最高の形に到達させるか、を考える。
それも、仕事のひとつ。

通常、フリーランスの立場で関わっていると、
クライアントとのミーティングにはなかなか立ち会えないのだが、
スピッツや今回のウルトラタワーの場合は、
ありがたいことに最初のミーティングから参加させてもらえた。
クライアントや監督の意図することを直接お伺い出来たので、
理解が深まり、仕事もしやすかった。

アニメ『食戟のソーマ』がスタートして以来、「希望の唄」の
評判は上々のようで、ホッとしている。
これまで、ウルトラタワーのことを知らず、このアニメで初めて
彼らのことを知った人が、「いい曲」と素直に反応してくれる。
タイアップの醍醐味だ。
これをきっかけにYouTubeを検索してくれたり、
CDを聴いてくれたり、ライヴに足を運んでもらえたりすると、さらに嬉しい。

ということで「希望の唄」のMVはこちら
監督は、スピッツ「スパイダー」やセロファンのMVでも
お世話になった、井上強さん。
とても久しぶりだったけど、相変わらずのスタイリッシュな
作風にシビれました。

そしてミニアルバム『bluebell』。
前作『太陽と月の塔』の完成度を軽く凌駕したんじゃないかな、と。
「希望の唄」以外の曲の充実度、半端ないっす。
デビュー以降いろいろと体験したことが、
曲の深度に反映されている。
特に「春に残る雪」というバラードは、歌詞も曲も、その両方の
マッチングも、アレンジも歌唱も相当すごいんじゃないか、と思う。
ちなみに弦アレンジは前作に続いて棚谷祐一さん。

あまりに良い曲なので、この曲もMV作っちゃいましょうよ、
なんて冗談半分に云い続けていたら、
本当に作れてしまったのでびっくり。
強い音楽は人も予算も動かす、ってことですね。

というわけで、映画『FORMA』で世界に名を馳せた
坂本あゆみ監督による「春に残る雪」のMVはこちら
曲の上に、撮影現場で録音した自然音などを被せた、
フィールド・レコーディング的手法を取り入れた、
日本ではあまり類を見ない意欲作。
ヴォーカル大濱の役者デビュー作でもあるので、
是非ともチェックのほどを。

あと、今回のアート・ディレクションとデザインは、
TLGFの河原光さん。
なんと、多分18年振りくらいにお仕事させてもらった。

数年前に河原さんがCENTRAL67の木村さんらと
三人展をやったときにお会いして、お久しぶりですーなんて
挨拶して以来、またいつか機会があればご一緒したいと思っていたのだった。
カメラは中野敬久さん。
彼ともお仕事は数年振り。
この二人のいろんなアイディアで、撮影は非常に楽しく、
マニアックなものになった。
ジャケットには、河原さんとメンバーとで考えた、
いろんな仕掛けがあるので、隅々まで目を凝らしてほしい。

というわけで、今回のウルトラタワー、音源のみならず、
ジャケットやMVなどのヴィジュアル周りも含めて、
全て竹内がトータル・プロデュースというものになっている。
こういう関わり方、元々メーカーでディレクターをやっていた
人間にとっては、とても嬉しいものなのです。

リリースを受け、続々とライヴも決まっている。
お近くでライヴがある際は、是非とも足をお運びください。
詳しいスケジュールは彼らのオフィシャルで。