2012年4月26日木曜日

wilsonic works 20


昨日4月25日は、タニザワトモフミの3rdアルバム『何重人格』の発売日。
僕は今回このアルバムのトータルのプロデューサーとして参加した。

トータルの、という言葉を使うのは、各曲にサウンド・プロデューサー、
アレンジャーが存在するから。
『何重人格』は4つのレコーディング・セッションで作られた
12曲が収録されている。

バンド、ソロ・アーティストを問わず、このような作りのアルバムは
最近はあまり多くないのではないか?
大体は一つのトーンでまとめていることが多い。
あとは、シングル曲だけ有名プロデューサー使って、
他はセルフとか、新進のアレンジャーを使う、というパターン。

なぜなら、複数のサウンド・プロダクションでやると、

1. 全体をまとめること、統一感を出すことが難しい。
2. スケジュールの管理が大変。
3. 合理的ではないので予算がかさみがち。

そしてなにより、

4. とにかく面倒くさい。

というような理由から、アルバム全体をひとつの
サウンド・プロダクションで貫き通すことが多いのだろう。

僕がこの世でいちばん嫌いな言葉は、「面倒くさい」。
冗談以外ではこの言葉をなるべく使わないようにしている。

だって、面倒くさいことをなんとか工夫して努力して
乗り越えてこそ、楽しいゴールが待っているんじゃないの?
面倒くさいことを回避して楽ちんに物事を進めても、
最大でも想像通りの結果しか得られない。
そんなのつまんないじゃないか。

というわけで、思いついちゃったらどんなに大変だろうが
理想に向かって走り始める僕でして、昨年8月に立ち上がった
このアルバムの構想、いつしか曲ごとに違う主人公がいて、
それに応じた歌詞を作り、ってことはアレンジも変えて、
なんならサウンド・プロデューサーも複数ピックアップしよう、
というようなことを考えてしまった。
タニザワくんとのディスカッションの末にそうなったので、
僕だけの責任ではないと思うが、タニザワくんを
非常に面倒くさい作業に付き合わせてしまったことは確か。
多分彼の労力、負担はこれまでのどの作品よりも
多かったと思われる。
ごめんね。

でもね、その甲斐はあったと思いますよ僕は。
前作『日本に落ちてきた男』が大傑作であるのは
もう日本ポップス界の常識ですが、その後に
出す "待望のニュー・アルバム" という期待に
きっちり応えられるものが出来たんではないか?
と自負しております。


では今回関わってくれた4つのサウンド・プロダクション
の説明をば。

まずは『日本に落ちてきた男』をを全編サウンド・プロデュース
した驚異のポップ・マエストロ、石崎光(cafelon)。
アルバム・リード曲である「四季娘」を始めとして、
4曲を担当。ビートルズを始祖とするグレート・ブリテン・マナー
満載のアレンジでタニザワくんの曲を引きたてています。
エンジニアは柏井日向。このチーム、信頼度抜群!

そしてタニザワくんとはインディーズ・デビュー当時からの
盟友である、sugarbeans。シンガー・ソングライターであり、
ドラマーでありキーボーディストであり、もちろんアレンジャー、
プロデューサーである彼は、変幻自在のアレンジで
タニザワくんを料理。アルバムのオープニングを飾る
「世界一周ノスゝメ」含む3曲で腕を振るってくれた。
彼が関わるとなんか無国籍な?異国情緒が醸し出される
のが不思議。

前作『日本に~』のアートワークやMVを手掛けた
SLEEPERS FILMのメンバーであり、バンドgolfのメンバー
であり、タニザワトモフミのライヴ・バンドのギタリスト
でもある関根卓史が2曲で参加。
基本彼とタニザワくんとだけで構築するデスクトップ・ミュージック。
すっとぼけて坦々と進む「ラブラブ♡MP3」と、
爆裂する料理ソング「炒飯奉行」、全く性格の違う2曲に
仕上げてくれた。

そして残る3曲がグレンスミス
昨年リリースされた『ROMAN ALBUM』は僕の2011年
邦楽アルバム・チャートBEST3に入るくらいの衝撃だった。
それをタニザワくんに聴いてもらったところ、彼もえらく
気に入ってくれて。一緒に曲作りたいよねーということで
ダメモトでオファーしたところ、快諾いただいた。
グレンスミスにとっても初めての他流試合、そして
クノシンジがグレンスミスに参加してから初めての
セッションだったこともあり、最初は手探り状態から
スタート。しかし、セッションを重ねるごとに呼吸が合ってきて、
最終的には素晴らしい3曲が出来上がった。

以上4種類のセッション。
それぞれに試行錯誤や紆余曲折は当然あったけど、
結果的には絶妙なバランスでアルバムの中で
それぞれが光を放っているのではないか、と。
オフィシャル・サイトで全曲試聴出来ますので是非。
そしてこのある意味バラバラな音たちを、見事に
1枚のアルバムとしてまとめ上げてくれた
マスタリング・エンジニアは日本が誇る世界の小鐡こと、
JVCマスタリング・センターの小鐡徹
今までもそうですが、今回さらに小鐡さんの腕に
シビレました。平伏!

今回、ヴィジュアル周りに関しては僕は関与してませんが、
ジャケットのADはファンタジスタ歌麿呂さん、
「四季娘」MVの監督は山崎連基さん。
お二人ともタニザワくんの音楽に共鳴してくれて、
素晴らしい作品に仕上げてくれています。

しかし『何重人格』っていうタイトル、しみじみいいなー。
リリースになった今、改めて思う。


p.s.
僕とタニザワくんとのこれまでに関しては、こちらのエントリ
をお読みいただくと、なんとなくおわかりいただけるか、と。
あと、『日本に落ちてきた男』はアルバムの内容は
もちろんのこと、ライナーノーツも読み応えありますんで、
まだお持ちでない方は是非ともご購入のほどを。
買わないと読めません(笑)。


2012年4月18日水曜日

wilsonic works 19


今日4月18日は東京カランコロンのニュー・シングル、
「×ゲーム」の発売日。
昨年の「少女ジャンプ」同様、プロデューサーとして関わった。

「少女ジャンプ」のメイン・ヴォーカルはせんせいだったけど、
今回のメインはいちろー。
彼の伸びやかなハイ・トーンが活きるメロディックな楽曲。
なんか、曲ももちろんだけど、詞の評判も良いみたい。

これまでの東京カランコロンは、すべての作詞作曲編曲を
バンド内で賄ってきたけど、今回の表題曲「×ゲーム」には、
共同アレンジでcafelonの石崎光くんが参加しており、
カランコロンのサウンドに華を加えてくれている。

光くんは多分このブログでいちばん頻繁に名前が出てくる
ミュージシャン & プロデューサーなのではないかな?
来週も彼の名前登場の予定w
つまり、僕がここ数年、最も信頼しているアレンジャー、
サウンド・プロデューサーの一人である、と。
ホント、いつも期待以上の貢献をしてくれて、
毎回多くの刺激を与えてくれる。

カップリングの「true! true! true!」はライヴでの超人気曲
の待望の音源化。こちらもメインはいちろーで、ファルセットを
駆使した80‘s的ダンサブルなアッパー・チューン。

音源としては以上の2曲だけど、CD-EXTRAで4曲の
ライヴ映像が収録されているのがまたお得。
ライヴに定評のある彼らの、今年1月に開催された、
"ワンマ ソフェス2012"での映像をお楽しみあれ。

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そんなニュー・シングルの発売日だった本日。
僕は都内某スタジオでレコーディングをしていたのだが、
殊の外作業がスムーズに進み、19時にはお役御免となった。
おかげで行けないと思っていた東京カランコロンの
新宿LOFTでのライヴに駆けつけることが出来た。

曲が出来た頃、アレンジがなかなか固まらないままに
試行錯誤でライヴ演奏されていた「×ゲーム」が、
今日はすっかりと彼らの代表曲のように響いていた。

カランコロン自身のバンドとしてのスキルアップもあるし、
バンドと石崎光くんとでいろんなアレンジのアイディアを
出し合って出来上がった、という経緯の結果でもある。


ひとつの曲が、デモや弾き語りの状態から完成品に
出来上がるまでの経緯を見守ったり監督したりするのが
僕のメインの仕事。
そこにルーティンはない。毎回新しいことが起きる。
だからこの仕事はいつも新鮮で飽きることがない。

その積み重ねで、今日みたいにバンドや曲が着々と
"成長"していく経過を一緒に体験、もしくは目撃出来る。
これこそこの仕事の醍醐味だよなあ、と改めて。

ロフトに行けてよかったなー。
レコーディングをサクサク進めてくれた某アーティスト
にも感謝だなー。
っていうか、こういう流れって偶然やラッキーじゃなくて、
絶対そのライヴは観ることになってるんだよ、とか。
まあいいか、そんな話は。

そんなわけで急成長中の東京カランコロンの
ニュー・シングル、「×ゲーム」をよろしくです。
毎回素晴らしいアートワークは古賀鈴鳴さん。
今回はカランコロン史上最もヴィヴィッドな色遣いですね。

そして、メンバーの役者魂炸裂?のMVも必見ですよ。