これで、9月から3ヶ月連続で、自分がプロデュースに関わった
シングルがリリースされたことになる。
そして今月のAJISAI。
3ヶ月連続、
異なるアーティスト、
しかもシングル。
実は、それぞれ僕のプロデュースのスタンスも違う。
ということなので、今回はwilsonic竹内のプロデュースの際の
さまざまなヴァリエイションに関して書こうかな、と。
①HOW MERRY MARRYの場合
彼らは今年メジャー・デビューしたんだけど、実は2009年から
マネージメント・サイドの要請で育成をお手伝いしていた。
曲の作り方のセオリーやテクニックをレクチャーしたり、
吸収しておくべき音楽や映画、書籍などについて話したり・・・。
逆に彼らから僕の知らない世代の文化を教わったり。
日々そんなことをしながら曲作りを進めて行き、実際の
レコーディングでは基本的にはアレンジャー(サウンド・プロデューサー)
に入ってもらって、曲を作り上げる、という流れ。
その際、曲に応じてのアレンジャーやエンジニアの
人選が僕の重要な仕事のひとつだ。
中長期的スタンスで関わることにより、アーティストの志向とスキルと
可能性を吟味できるし、それと世の中のトレンドなどを重ね合わせながら
制作に当たれるのがありがたい。
基本同じで、いわば竹内の王道的関わり方がこれ。
フリーランスでこういう関係性を築くのは結構難しいんだけど。
元々メーカー・ディレクターだったから、
2年なら2年の契約期間内にどんな流れで何をするか、
という考え方が身体に沁みついているのかもしれない。
②東京カランコロンの場合
これは今回シングルにすべき曲が既にあり、彼らにとって初のシングル
なので、僕に何かアドヴァイスを、ということでお声がかかった。
従って、曲に関しては一切手を加えていないし、アレンジも
メンバーが考えていたものを少しだけいじっただけ。
ヴォーカル・ディレクションはじっくりと時間をかけてやったけど。
僕がこれまで関わったアーティストでは、グルーヴァーズや
LOST IN TIMEのスタンスにやや近い、かな?
確かな演奏力と曲作りの骨格がしっかりしているバンドとの
典型的な関わり方。
なんで、カランコロンとは是非ともフル・アルバムを一緒に
作りたいなあ、と勝手に思っている。
③AJISAIの場合
カランコロンとは以前からライヴを通じて面識があったが、
AJISAIとはこのレコーディングの話があって、初対面。
もうすぐ結成10年を迎えるキャリアあるバンドなので名前は当然
知っていたし、彼らの結構初期のCDを購入していたこともあり、
ぜひとも喜んで、ということでスタートした。
それまでにメンバーの作った何十曲ものデモと、そこからさらに作る
新曲群を徹底的に聴きこんでチョイス~ブラッシュアップ。
曲を絞り込んで一緒にスタジオに入って入念なリハーサル。
アレンジを固めると同時に詞も詰めて行く。
初めての顔合わせなので、アーティストとの距離、間合いを
測りつつ作業を進めることになる。
ライヴでのパフォーマンスを確認したり、メンバー個々の
キャラクターや考え方を把握したり・・・。
なので、いつもより時間はかかる。
しかし、ここで時間をかけておかないと、
実際のレコーディングに入ってから躓いてしまったり、
出来あがった後に不満が残ったりする場合があるから
慎重に進める必要がある。
ということで準備に2ヶ月。
でも、じっくりと準備したおかげでレコーディングはサクサク
進んだし、結果にメンバーもレーベル・サイドも満足して
くれているのではないか?と思っている。
有馬くんが膨大な数の曲を短い時間でどんどん作る中、
それを取捨選択しては一緒にリハスタに入ってアレンジを
考えて行く、という流れ。
そして最初おとぎ話のメンバーはレーベルのスタッフから
勧められた僕という存在を、全く信頼も期待もしていなかった(笑)。
いや、AJISAIがそうだったということではなくて、初対面という
ニュートラルな状態からのスタート、という意味で同じだった、と。
以上、3アーティストとの関わり方の違い、でした。
僕はミュージシャンじゃないし、自分で曲を作るわけでもない。
ただ、アーティストが作りつつある音を聴いて、その曲の持ち味を
さらに引き出し、伝えたいことがより伝わりやすいようにするための
お手伝い、アドヴァイスをする。
僕のプロデュース・ワークのキャッチ・コピーは、
"Enhance Your Music" 。
あなたの音楽を向上させます、って感じ。
偉そうに。
でもね。
インディー、メジャー問わず、折角作る音楽じゃないですか。
伝わらないより少しでも多くの人に伝わった方がいいでしょ?
宣伝や営業ではなく、音楽そのものがもっと「伝わる」ものに
なるための制作ノウハウを、20年以上かけて培ってきたつもり。
伝えたい、と思っている人たちに、それが少しでも役立つなら
嬉しいことだなあ、と。
大きなお世話で、単なる勘違い野郎なのかもしれませんが。
今どき、音楽を生業にしようなんて酔狂なことを考えるやつは、
このくらいおこがましくなきゃやってらんないよね、ということで。
うまくまとまらないな。
AJISAIの「EXIT」は、最近のプロデュース・ワークの中では
久々にソリッドなギター・ロックで、自分でも新鮮だったなー。
カップリングはAJISAIの持つ抒情的な面が良く出た
ミディアム・ナンバー。ライヴ音源も入ってお得なんで、
チェックしてみてください。
さて、今年はあと1アイテムのリリースを残すのみ!